深蒸し茶

2008年9月 茶況_No.243

平成20年9月12日

茶園では秋肥の投入や秋冬番茶摘採の準備などの茶園管理に入りました。来年一番茶の幼芽形成に大切な秋肥料は9月中に2回行ないます。また指導機関では、秋冬番茶を摘採する茶農家に農薬使用基準の厳守を呼びかけています。暑さが厳しくて朝夕の涼しい時間帯にこなしていた作業も、これからは日中に移っていきます。大きな病害虫の発生もなく、適度な雨もあって園相は良好です。全体的に秋冬番茶は在庫薄で問屋からの生産要請と引き合いは多いのですが、原油高などによる製造コストが上昇していることから、取引価格によっては生産を見合わせる工場も出てきそうです。また地域でまとまって生葉を集荷して一つの工場での製造を考えるなど、少しでもコストを下げるように努めています。これから問屋が希望する数量と生産家が希望する価格の調整に入りますが、お互いが納得のいく十分な協議が必要です。全国茶生産団体連合会は総会で「日本のお茶を守ろう、全国10万生産農家の叫び」を緊急アピールしました。その中で、消費拡大に向け「来客の接待には必ずお茶を出す」、「食堂ではお茶をください」や「急須で淹れるお茶はおいしいよ」といった口コミなどの運動をスタートさせることを確認しました。

産地問屋は、秋の需要期に向け消費地情報の収集に努めながら販売計画を練っています。8月は10%程度の売上減でしたが、9月に入って朝夕と涼しくなり秋需要に期待していますが、今のところまだ荷動きは鈍いようです。内閣府が発表した8月の景気ウォッチャー調査によりますと、街角の景気実感を3ヶ月前と比較した現状判断指数は前月より1ポイント下がり、5ヶ月連続で悪化しています。売上減と回収減、金融機関の貸し渋りもあって、経営状況は急速に悪化し倒産も相次いでいます。今年の一番茶の荒茶生産量が発表されましたが、静岡県は17,100トンで前年より2%減少し、平成に入って最低数量です。栽培農家の高齢化などにより摘採面積が2%減少したのが要因のようですが、消費の減少もあるのか茶葉の不足感は感じられません。今後各地で入札会が開催されますが、その結果と今後の展開が注目されます。

消費地では秋の需要期に向けて「秋の売り出し」「蔵出しセール」の準備を進めています。暮らしに欠かせない食料品などの価格が高止まりしていることや、天候不順の影響で8月は来店客数が減少して売上減になっています。景気の厳しさを訴える声はあちらこちらで聞かれます。総務省は「個人企業経済調査」の結果を発表しました。一店あたりの年間売上高は平均で2,137万円、事業主の年齢は60歳以上が71%、後継者がいるお店は24%と高齢化の進展に伴い事業継続がむずかしくなっている実態が浮き彫りになりました。今後は「休業したい」21%、「廃業したい」11%と合計が初めて3割を超え、経営環境の悪化で休廃業を検討する個人商店が着実に増えている実態が明らかになりました。これから秋の気配とともにお店も秋シーズンに衣替えして、店頭で接茶しながら急須で飲むお茶のよさをアピールしていきます。

  • 9月下旬から秋冬番茶の生産が始まりますが、価格は420円~450円位が予想されます。受注生産とする工場が多いようですので、必要量は早めにご連絡ください。
  • 衆議院選挙の投票日が11月9日になりそうです。「当煎茶」を近くの選挙事務所等へ是非おすすめください。詳細は当社営業部までお問い合わせください。

 

クレドカード

 

一度お店に来店していただいたお客様に再度来店してもらうためには、品質や価格はもちろん大切ですが、接客の心地よさも重要な要素になっています。最近、デパートやスーパー等いろいろなお店で「ありがとうございました」と言って両手を前で組んでお辞儀をする姿が急速に増えています。とても丁寧な感じを与えることから、利用者からは上品な印象を受けると概ね好評なようですが、客層あるいは場所によっては丁寧な言葉遣いがよそよそしく感じられたり、男性がつかうと違和感があるとの声もあります。接客によって店の好感度を上げることもあれば、逆に大きく下げる危険性も含まれているようです。

顧客が商品やサービスを通して得る価値を高める方法には二通りあります。「得した感」を上げることと「損した感」を下げる二通りです。商品やサービスの価値を高めようとする際、「得した感」をいかに上げるかというところに目が行きがちですが、「損した感」をいかに下げるかということも非常に重要な要素です。「得した感」を上げ「損した感」を下げることによってさらに「満足感」が高まるからです。満足感が高まることによって再来店の動機が生まれます。

「リッツ・カールトンの神話」という言葉を聞かれたことがあるでしょうか。「顧客満足」の優良事例としてザ・リッツ・カールトンホテルの事例が注目されています。接客で定評のあるリッツ・カールトンホテルは約半分の顧客がリピーターであり、クチコミ客が大半を占めています。「一人一人のお客様に満足を超えた体験・感動を提供する」を集客の決め手ととらえ、もう一度訪れていただけるような接客を常に心がけています。そのためにスタッフは企業理念や行動指針が記された「クレドカード」を常に携帯しています。「クレド」とはラテン語で「信条」という意味です。リッツ・カールトンの全従業員はパートであろうとアルバイトであろうとクレドカードを必ず携帯して勤務しています。四つ折の小さなクレドカードには「モットー」「従業員への約束」「クレド」「サービスの3ステップ」そして裏面には「ザ・リッツ・カールトン・ベーシック」という行動指針が示されています。この5つの内容を総称して「ゴールデン・スタンダード」と呼び、毎日実施されるミーティングで全従業員から交代で自分の経験や考えを発表して理念の徹底をはかります。

「モットー」には“紳士淑女にお仕えする私たちもまた紳士淑女です”とホテルの姿勢

を表わしています。「従業員への約束」にはサービスのサイクルは従業員の満足から始まると考えていることを明確にして、満足度の高い従業員がサービスして初めてお客様も満足が得られるという考え方を伝えています。お客様にとって宿泊するホテルの一番の印象は、建物の豪華さやサービスの内容よりも接客するスタッフ一人一人のもてなす姿勢が大切だと考えているからです。「クレド」ではリッツ・カールトンの信条を明確にし、お客様の願望やニーズにお応えするように努めることを伝えています。そして、その姿勢がお客様にも自然と伝わります。

同ホテルは宿泊客の約半分が2回目以上のリピーター客。「もう一つのわが家」を目指すスタッフのもてなしの心が、一度泊まったことのある宿泊客を引き付けて離さないようです。ホテルの接客がすぐ自分のお店の接客にはつながりませんが、大変参考になる事例です。