深蒸し茶

2008年8月 茶況_No.242

平成20年8月12日

猛暑が続き、指導機関は暑さ対策と病害虫の適期防除の徹底を呼びかけています。夏に伸びる三番茶の葉層が来年の一番茶の母枝となるために、この時期の茶園管理には特に気を遣います。日中は強い日差しで作業中に体力を消耗しますので、日中は甲子園の高校野球や北京オリンピックの中継をテレビで観戦しながら、朝夕の比較的涼しい時間帯に茶園管理をこなしています。灌水の必要な茶園も、日中に散水しますと水がお湯になって茶の木や葉を傷めますので、夕方から夜の涼しい時間にかけて散水しているようです。

産地問屋は厳しい暑さの中、仕上・発送作業を進め、秋口から需要増を期待して準備しています。厳しい暑さで水出し煎茶と仏事関連の売れ行きは順調ですが、家庭用茶の動きはいまひとつハッキリしません。終了した県内産二番茶の生産量は6/20~6/23の連続4日間続いた雨前に終了した茶工場は減産、雨後まで生産した茶工場は増産となり、全体では10%前後の減産と発表されました。

消費地では連日の猛暑の中、冷茶のPRに懸命です。店頭で冷茶をサービスしながら、水出し煎茶の販売に力を入れたり、リーフ茶を冷やして飲む方法やペットボトルに代わるマイボトルの良さを説明したりして販促に努めています。生活様式の変化や核家族化などを背景に、急須でお茶を淹れて味わう家庭が減っていますが、目を引くPOPの作成や淹れ方の説明、試供品等の販促の甲斐あって、売り上げが好調な店もあります。

ガソリン高に食料品高と相次ぐ物価の高騰はさまざまな方面に変化をもたらしています。そして、値上げが相次ぎ、家計を圧迫しています。ロードサイドのファミリーレストランは軒並み客数が減少し、デニーズは140店舗の閉鎖を決めました。消費者が少しでも節約しようと外食を減らし、弁当や自宅での食事を増やしていることも原因のようです。小麦価格の高騰でパンやめん類、パスタ類が大幅に値上がりしたこともあって、お米の販売額は20%程度増えているようです。お米を食べれば当然日本茶に回帰しますので大歓迎すべき現象ですが、消費者心理がかなり冷え込んでいますので手放しで喜べないのが現実です。賃金が増えないので家計への負担が重くなった結果、消費行動に変化が現われているからです。値上げ以降、消費者が低価格帯の商品を選ぶようになったり、近回りの商店を利用する回数が増えたり、車を使う場合は一度行けば多数の店を回って買い物ができる大型商業施設を利用したりと、生活防衛を強く意識しています。個人消費は強い逆風にさらされ、国内市場のパイが広がらない中での「体力勝負の消耗戦」の様相を呈してきました。人口減少と高齢化、環境問題を背景に、次の一手を打つ必要性に迫られています。そのために顧客の満足をどうつくり出すのか、「商品力」「価格力」「接客力」「宣伝力」のすべてを投入してがんばっているお店もあります。

 

専門店としての個性を磨く

 

経済産業省が発表した最新の商業統計によりますと、過去最高の店舗数減少と伝統的な業種店の衰退が改めて浮き彫りとなりました。2007年商業統計によりますと、商店数の減少が続き、小売業の商店数は3年前の8.2%減で10万店強が減った計算です。中心市街地の空洞化などを背景に閉店する商店が増えていることが大きな要因となっています。個人・法人の別でみると、特に個人商店の衰退が鮮明となっています。一方で、百貨店・総合スーパーといったこれまで日本商業を代表してきた業態も不振の淵に落ち込んでいます。企業規模や店舗数は意味を持たないのです。まさに時代は、今までの業種と業態に代わる新たな価値創造期の真っ只中にあることがわかります。市場や社会の変化、お客の変化に対応できなくなったものが自滅していくのであって、大だから、小だからという規模の問題ではないようです。流通業界で進む急激な構造変化が改めて浮き彫りになった形です。

茶類小売業と卸売業も同時に発表されましたが、茶類小売業は5年前と比較して店舗数が17%減、年間販売金額24%減と5年間で大幅に落ち込んでいますが、20年前と比較しますと年間販売金額27%減と健闘しています。一方、茶類卸売業は5年前と比較して事業所がやはり17%減ですが、年間販売金額は4%減です。しかし、20年前と比較しますと、年間販売金額は半減し、小売業をはるかに上回る卸売業の落ち込みが目立ちます。

専門店の危機が叫ばれてからずいぶん歳月がたちました。あのころ言われた専門店というのは、商店街を構成する業種別小売店のことでした。商店街の主力だった生鮮食品や呉服・洋品・靴・雑貨などはほとんど姿を消してしまいました。一部がロードサイド大型店としてチェーン化したり、ショッピングセンター内に移転したりしています。各地の商店街のシャッター通り化は日々の買い物がそこで揃わなくなったことが原因ですが、品揃えとともに価格、店舗の広さ、駐車場問題、生活価値観の変化などが挙げられています。今日、ショッピングセンターに出店したり、郊外のロードサイドで営業している大型店は、家電、ドラッグ、衣料、眼鏡、スポーツ用品などの専門店チェーンで多様な業態があり、商品に一定の分野規定を持っている専門店です。

大型チェーンの専門店でアルバイト店員、接客に慣れない店員の行き届かない接客に気分を悪くした経験は誰にもあると思いますが、品質や価格はもちろん大切ですが、接客の気持よさが顧客獲得の重要なツールになっています。空気を読む接客が店の人気を左右する時代になりつつあるのです。他の店と類似・同質を避けて独自の価値をもって、いかに差別化がはかれるか、言葉を変えれば「あの店に行けばこんな満足やお値打ちや心地よさが・・・」を明確に打ち出し、「なぜかこの店で買ってしまう」と思わせる魅力的な店づくりが今求められています。