深蒸し茶

2021年10月 茶況_No.374

令和3年10月28日

今年最後の製造となる秋冬番茶の摘採を終了した茶園では樹勢の回復を確認しながら整枝など来年の一番茶に向けた管理作業が進められています。秋冬番茶はドリンクメーカーと量販店に販売先を持つ産地問屋に買い手が限られるため終盤は買い気が弱まり昨年より若干安い価格で終了しました。二番茶が前年比4~5割高だったことを考えると予想しなかった相場展開でしたが買い手が限られる少ない状況からすると納得との声も聞かれます。これから茶園に敷く草を刈り取る作業に追われます。そして刈り取った草の乾燥・裁断を進めて茶園の畝間に敷いていきます。保湿・保温・肥料の効果があり美味しいお茶づくりには欠かせない作業になります。

産地問屋は秋冬番茶の仕入も終わり秋需に向けた仕上を進めています。例年ですと各地区で品評会と入札販売会が開催されるのですが、コロナ感染防止のために中止する地区が多く、問屋間の荷動きも少ないために活気に欠ける静かな産地の茶況です。商品企画や取扱商品や販売先によって元気のある問屋と元気のない問屋の問屋間格差も広がっているように感じられます。緊急事態宣言とまん延防止措置が解除されて消費意欲が回復することを願うばかりですが、食品価格やガソリンの値上がりが消費者心理を冷やす懸念も強まっています。食品の値上げが相次ぐ一方、大手スーパーでは値下げや価格据え置きなどで消費者の需要をとらえようとする動きが活発です。ユニーは2000品目で値下げキャンペーンを始めました。イオンは3000品目のプライベートブランドについては年内価格凍結を発表しました。スーパーにとって消耗戦に陥る可能性もありますが生き残りを懸けた戦いとなります。生き残りをかけた戦いは金融機関も同様です。低金利の長期化により融資による利ざやを稼ぐ本業の厳しさが増し新たな収益源の確保が課題になっています。静岡銀行は11月に施行される改正銀行法を機に持株会社制へ移行します。グループ経営を強化して地場産品の販路拡大など多様化する地域や取引先のニーズに対応して新たな収益源の開拓が狙いです。柴田頭取は「組織形態を変え地域の成長に貢献する新たな事業領域を拡大する」とその狙いを説明しました。世の中の変化と顧客のニーズを見据えて将来をにらんだ経営体制への移行が急務になっています。そうしないと生き残れないという強い覚悟が感じられます。

消費地では「秋の売り出し」を進めながら「年末商戦」の準備をしています。ギフト商品の選択や販売計画を練りながらきめ細かい対応を検討します。緊急事態宣言が解除されて街の賑わいが戻りつつありますが売上減少により経営の厳しさは変わりません。「品揃え」「味」「接客」「雰囲気」を重視して地元の「なじみの店」になれるように頑張っている地域優良店もあります。

8月中間決算では百貨店3社とも2年連続の営業赤字と発表されました。大手コンビニ4社は全社が増収・増益となり明暗が分かれました。「共働き世帯」「お一人世帯」が最大の消費者となった今、購入商品・購買行動に応じた対応は欠かせません。消費者のニーズにいかに応えることができるかがこれからの勝ち組の条件です。

 

 

上に政策あれば下に対策あり

 新型コロナウイルスの発生によって私たち国と世界は大きな転換を迫られています。現在行われている衆議院選挙選は、これから日本をどうするかを選ぶ選挙「未来選択選挙」ともいえます。コロナ対策はもちろんですが、低成長にあえぐ日本経済をどう立て直すのかが大きな争点となっています。国の経済規模を示すGDPをみると、この30年間で中国37倍、米国3.5倍ドイツも2.3倍になったのに日本は1.5倍に止どまっています。平均賃金もこの30年で米国48%増、英国44%増なのに日本は4.4%増とほぼ横ばいで大きく差がつきました。GDPも賃金も伸び悩みは明らかで低成長から抜け出せていません。2000年には1位だった製造業の生産性も伸び悩み、2018年には世界で16位に後退です。成長戦略の失敗を指摘する声は多く、今後は低成長から抜け出す戦略やコロナ後の新しい社会の改革も求められています。そのために岸田首相は数十兆円規模の経済対策を実施します。そして「新しい日本型資本主義」を主軸に富める者と富まざる者の格差是正を見つめて「成長と分配」の好循環を実現しようとしています。所得を増やし消費マインドを改善して好循環を実施し中間層を厚くすることにより、人生100年時代の不安解消に向けた社会変革に取り組みたいからです。それには中小企業・小売業が厳しい価格競争にさらされ続ける負の連鎖を断つ政策も求められていますが成果の見えない分配よりもまずは確実な成長を優先すべきとの声も出ています。またリスク要因にもなりかねない東京一極集中型を変えてテレワークによる「デジタル田園都市国家構想」も進めています。そのためのデジタル庁が新設され、デジタル社会に必要なITインフラを整え、時代遅れとなった規制や慣行を見直します。「押印慣行」などが根強く残る日本は、諸外国に比べてデジタル対応は遅れました。コロナ禍により、人との接触を極力避けながら動かしていく経済活動はワクチンパスポートやマイナンバーカードなどデジタル社会推進へと大きく舵を切り進み始めました。日本の元気を取り戻すために、いつまでに何をするのか、工程を明確にして政策決定をする実行力を今回の選挙で有権者は望んでいます。国の政策により社会は変化します。社会の変化により経済も変化しますので企業は国策や変化に添った対応をしなければ衰退の一途をたどることになります。

中国では不動産大手の中国恒大集団の資金繰りが悪化して経営難に陥り動揺が広がっています。中国指導部の政策により不動産業者の借入に上限をもうけ規制強化にのり出したのが原因です。大きくなり過ぎた通販大手アリババには罰金と行政処置が下りアリババも静かになりました。「学習塾禁止令」により学習塾の閉鎖が相次ぎ多くの学習塾が倒産しました。中国の政策の主軸は「共同富裕」といって貧富の格差を縮めることです。中国には「上に政策あれば下に対策あり」という言葉が昔から伝えられています。国に政策があれば、国の下にいる国民にはその政策に対応する対策が必要だという意味です。もちろん日本と中国の政治体制は違いますが、どちらも指針となる政策には慎重すぎるくらいの注意が必要です。岸田内閣の政策手腕に期待する声も聞かれますが、元気を取り戻し世界のモデルとなるような日本を築いてもらいたいものです。人口減少・デジタル社会・脱炭素社会・環境問題など人々の行動の変化は激変期を迎えています。私たちは世の中の変化とニーズに常に対峙して日本流に言い直せば「官に政策あれば民に対策あり」と言えるような国の政策に応じた対策を講じる必要が求められています。

 

 

 

<新商品発売のお知らせ>

ドリップフィルター「茶楽らく」

「淹れる手間よりも捨てる手間」とよく言われますが、お茶を淹れるのは面倒だとは思わないが、使用した後の茶殻の処理を面倒だと思っている消費者の方は意外と多いものです。

そこで今回、使い捨て型の急須・カップ用のティーフィルターを開発いたしました。

このドリップフィルター「茶楽らく」を使用することによって、捨てる手間と洗う手間が簡単になり、手軽にリーフ茶を楽しむことができます。リーフ茶の消費低迷により、茶業界は大変苦戦を強いられておりますが、本製品を使用することにより、リーフ茶復活につながればと思い、本商品を開発いたしました。ロッドや価格等、お気軽にお問合せください。

Mail:nakane@kakegawa-cha.co.jp

TEL:0537-23-3252