深蒸し茶

2010年7月 茶況_No.260

平成22年7月10日

二番茶摘採を終了した茶園では、天候を見極めながら整枝や病害虫防除などの管理作業が順調に進められています。静岡茶市場の県内産二番茶の取扱数量が過去11年間で最低となりました。3月末の凍霜害の影響と二番茶を生産しない農家が増えているのが要因とみられています。茶工場は販売価格から製茶に必要な経費を差し引いて生葉を持ち込む組合員に生葉代金を支払いますが、単価安になれば暑い最中に重労働しても手取りは少なくなりますので、作業が大変な急傾斜の茶園では生産を取りやめる農家が増えています。そのため指導機関は付加価値の高い芽重型茶園への転換を推進しています。一芽、一芽が大きくて重くなるように育てる栽培方法で、おいしいお茶づくりの原点です。1年目は二番茶を摘み取らずに秋まで葉を伸ばします。光合成が活発になり、根もよく張り、葉に養分を蓄えて健康な茶樹になります。2年目は一番茶を摘んだ後、枝や幹を刈り落とす更新をして太い枝が揃う頑強な茶樹に変身させます。3年目は通常通り一番茶と二番茶を摘み取ります。「お茶に力がある」と買い手の評価も高く、他産地との差別化にもなっているようです。

産地問屋は仕入した二番茶の整理と仕上・出荷作業を進めています。飲料関連業者以外は大きな荷動きもなく、6月は大幅な売上減となり弱気配が続きます。弱気は茶業関連だけでなく、静岡県内は自動車関係の工場が多く、国のエコカー補助金制度の終了を控え、10月以降の市場の急激な冷え込みや、円高を懸念する声が目立っています。先行きに対する見方が弱いため、設備投資や雇用の回復が遅れ、自律回復の道はいっそう厳しさを増しています。加えて、欧州の金融不安をきっかけに先行きの不透明感がますます強くなっていますので個人消費がしっかりと伸びていくのは期待薄との報告が多く聞かれます。

消費地では中元商戦も一段落して、帰省土産・秋の売り出しの準備に入りました。不景気と雨と暑さの関係から日中の商店街の人通りも心なし少なく感じられます。夜はワールドカップを家で観戦する人が多く、サッカー不景気という言葉がささやかれるほど繁華街に人が出ていません。消費増税の話題、政局のねじれ不安定から、期待された子ども手当ても消費から貯蓄に回するケースが高いようです。そして中小企業や個人事業者の間には先行き対する不安が広がっています。税率だけが独り歩きする中、景気を良くする方が先、支出を考え直す方が優先、複雑な制度は勘弁してほしいなどの切実な声が上がっています。

さまざまな価値観が受け入れられ、社会の多様化が進むにつれ、世の中をひとくくりに把握することが難しくなっています。環境がめまぐるしく変化する今日、現実の生活に合致した商品やコミュニケーション戦略こそが消費者のニーズ。時代の移り変わりに左右されない、根源的な部分に訴えることを大切にして、丁寧な仕事を心掛け、力いっぱい努力しているお店もあります。

 

価格帯

 

6月10日から始まった二番茶は、7月6日に春野町の有機茶の入荷をもって今年の二番茶仕入を終了しました。凍霜害を受けて一番茶の生産が遅れたことにより二番茶も前年より10日ほど遅れて、約1ヵ月に及ぶ長丁場の茶期となりました。遅れたことにより、今年の場合は全茶期が梅雨時期と重なりました。雨により生産の中断を余儀なくされ、摘み遅れによるコワ葉化されたものも数多く散見されました。特に真夏日のような高温の日が2度入った後はお茶も軽くなり、品質低下は顕著です。長期化した取引を振り返り、市場関係者からは「凍霜害の影響が大きい。来年の一茶に向けて樹勢回復を優先させるべき」との声も聞かれました。二番茶の芽伸びが悪く、梅雨期と重なって製造を中止する工場もあり、生産量は前年の20~25%減になりそうです。当社の仕入価格帯は下記のとおりです。

 

《二番茶仕入 価 格 帯 》 前年対比 仕入k数56%、仕入金額57%

仕 入 比 率 前年対比(平成21年を100とした場合)
300円売以上  16% 68%
250円売    13% 75%
200円売    40% 56%
150円売    27% 45%
〃   以下    4% 47%
      100%

 

 

以前は会社納品用の需要があり、二番茶を相当量仕入しましたが、この頃は各会社に自動給茶機や飲料自動販売機が普及して、また女性にお茶を淹れてもらう習慣もなくなりリーフ茶の会社需要はほとんどなくなりなりました。当社でも二番茶需要は年々減り続け、今年は数量で前年の56%という結果です。当初、買い手の関心はミル葉良品に集まり、上物は比較的堅調に推移すると見られていましたが、高温の日が入った後は品質低下もみられ、総じて買い気は弱く、腰の入った仕入をする業者は見られませんでした。販売担当者は「積極的に指値をする買い手はほとんどない」と困惑気味でした。後半、荒茶価格が700円以下になってからはドリンク関連業者が買い支える展開が続き、二番茶原料を大量に確保する飲料関連業者だけが目立つ展開です。二番茶需要もドリンク関連、大手量販店、業務用に限られてきました。

県内一、二番茶はいずれも2ケタ台の減産が確定的で、一番茶は凍霜害、二番茶は雨と暑さという異常気象に見舞われ厳しいシーズンとなりましたが、今年のお茶の生産はほぼ終了しました。新茶商戦、販売方法、生産管理など、重大な問題が一気に表面化したのも事実です。茶どころ静岡の存立に危機感を抱く関係者は多く、し烈な産地間競争を勝ち抜いていくためにも「静岡茶」のブランド力再構築が急務となっています。