深蒸し茶

2020年1月 茶況_No.355

令和2年1月11日

世界経済の減速感が強まる中で迎えた2020年。個人消費の伸び悩みや先行きの不透明感から、事業を取り巻く環境が大きく変わり警戒感が高まっています。

企業アンケート調査でも今年は試練の年、いばらの道が待っているとの認識をもっている経営者は多いようです。難問をどう乗り越えるのか、その手腕を問われる年になりそうです。

茶農家の方は茶園の巡回を怠りなく努め防寒・暴風対策等茶園をチェックしています。昨年末は雨の日が多く、今年に入ってからは暖かい日が続きますので茶園は良好な状態を保っています。放棄されて管理されていない伸び放題の茶園を、あちこちで見受けられるようになりましたので、荒れた茶園の整地や抜根などを一反当たり4万円~6万円で受けおう業者も出て来ました。後継者のいない茶農家や廃業を決断した農家では整地・抜根作業を依頼する人もあります。昨年は減産にもかかわらず荒茶相場が低迷して生産者には悲観的見方が広がっています。

産地問屋は仕上げと発送作業を進めながら販売計画と在庫の調査を進めています。消費者のライフスタイルの変化とともに緑茶需要の落ち込みが深刻化して明るい話はまったく聞かれなくなりました。昨年の暮れには工場を閉めた生産者の方が挨拶に見えて長年の労をねぎらいましたが、今年は長年取引をいただいた得意先からの年賀状に「長い間お世話になりました」との文面を見て愕然といたしました。生産者も消費地小売店も産地問屋も減少していく過渡期を迎え業界を取り巻く環境は激変しています。

県内企業トップの年頭所感には急速な時代の変化に即応し、成長戦略を一段と加速させる声も多く聞かれました。「新たな変化にもスピード感を持って対応し、さらに発展する土台をしっかりと築いていく」スズキ社長 「これまでにない新しい価値観を提案していく」ヤマハ社長 「成長戦略や基盤強化を優先順位をつけて進める」ヤマハ自社長 「お客さま満足・従業員満足・地域社会への貢献を飛躍的に高める一年としたい」イオン東海社長 「人工構造の変化・IT化が生みだす消費者ニーズの変化で事業環境は激変している。最適の発想で取り組み地域に必要とされるグループを目指す」静岡鉄道社長 厳しい環境の中、ニーズに合った製品開発など成長・飛躍へのチャンスをうかがいながら、自社の強みを再検証しつつ成長軌道を描けるように努めている様子が感じ取れます。

消費地では歳末商戦・正月商戦も終わり一服状態です。年末も昔のように暮らしい動きが感じられず厳しい一年だったとの声も多く聞かれます。一番上級茶の取り扱いは消費地小売店さんが大半を取扱っています。消費地小売店さんが頑張ってくれないと一番茶が売れなくなるとの生産者の心配する声をよく耳にします。量販店とペットボトルの原料が売れても、一番茶が売れなければ農家経営は成り立ちません。全茶連の成岡理事長は「ニーズに合った茶を生産現場で作ってもらい茶商が新たな価値を付加して消費者へのアピールに力を入れたい」と新年の抱負を語っていましたが、三者が一致団結して需要を創出していく大事な年になりそうです。小売業は変化対応業だという言葉がありますが、私達業界がどのように変化すれば生き残れるのか、その道筋はまったく見えていません。

 

今日はまだ創業初日

 2019年のラグビーワールドカップでは日本中が大きな感動に沸きました。2020年に開催される東京オリンピックでは一定の経済効果は見込まれていますが、五輪後の景気の冷え込みを懸念する声も多く聞かれます。そこで、時代の変化を的確に認識して自社の立ち位置を的確に見極めることが非常に重要になってきます。中でも、デジタル革新への対応は生き残るための必須条件と言えます。今、押し寄せているデジタル革新のうねりは産業構造や社会構造まで変えてしまうほどの力があり、加速度的に変化する時代の中、会社の将来を左右する大きな転換期にあります。そして多様化するリスクへの対応は大きな課題となっています。

デジタル革新の代表格が巨大IT企業のGAFA(グーグル・アップル・フェイスブック・アマゾン)です。その一画を占めるアマゾンはネット通販の最大手です。売上高26兆円、純利益1兆円以上、従業員数65万人の巨大企業です。その社長ジェフ・べゾス氏が書く「投資家への手紙」を世界の経営者が毎年注目しています。そして、その手紙の最後は毎年「今日はまだ創業初日」という同じ言葉で締めくくられています。アマゾンが上場された1997年の「投資家への手紙」も毎年添付されていますが、そこには「今日がインターネットの、そして我々アマゾンドットコムの創業初日です」とべゾス氏が創業初日に持っていた信念を常に持ち続けるという強い意志が書かれています。信念として強調されているのは「顧客中心主義・発明主義・長期的展望」を掲げて事業を推進すること、その姿勢は今もまったく変わっていません。

2016年の「投資家への手紙」には次のように記されています。「創業初日であり、続けるためには忍耐強く実験を行わないといけないし、失敗も受け入れないといけない。事業の種まきも行い、苗木を守らないといけない。顧客の喜んでいる姿を目にすれば喜びは倍増する」でした。

1997年のアマゾン上場時の株価は18ドルでした。2019年の株価は1839ドルと上場時の100倍でした。時価総額も105兆円の大企業です。だからこそべゾス氏は創業初日の気持ちを持ち続けることが大切だと考えているのです。さもなければスピードの遅い保守的な会社になってしまうため、アマゾンの社員が「今日はまだ創業初日」という言葉で一体となって新しいことに挑戦し続けているのです。「今日が創業初日」と社員全員が思うことで、顧客中心主義を社員全員が一丸となって行うようになり、原点の再認識をするというメッセージが込められているのです。

外部環境の変化に対応するため、また競争に勝ち続けていくために、変えるべきものは勇気を持って変えていく。その際、決して忘れてならないことが創業の理念です。アマゾンの設立趣意書には「地球上で最もお客様を大切にする企業」と記されています。

経営者自身が決断し、新時代に向けたビジョンをつくり出さないといけない新しい時代の幕開けです。市場の変化に伴って変われない企業は衰退し、変われる企業は生き残るという新しい時代に対して「今日はまだ創業初日」という気持ちと、「地球上で最もお客様を大切にする企業」という理念は、大変大きな意味を持っています。

大阪の「高島屋別館」が滞在型ホテルに転身します。ソニーは電気自動車へ参入します。トヨタは裾野市に次世代都市「スマートシティー」を建設すると発表しました。電動化や自動運転や人工知能(AI)といった先端技術を試せる実験場を実際の街としてオープンすることで、生活を便利にするスマートシティーの具体化を加速させる考えです。100年に一度の大変革の時代の幕は切って落とされました。

 

 

 

<新商品発売のお知らせ>

ドリップフィルター「茶楽らく」

「淹れる手間よりも捨てる手間」とよく言われますが、お茶を淹れるのは面倒だとは思わないが、使用した後の茶殻の処理を面倒だと思っている消費者の方は意外と多いものです。

そこで今回、使い捨て型の急須・カップ用のティーフィルターを開発いたしました。

このドリップフィルター「茶楽らく」を使用することによって、捨てる手間と洗う手間が簡単になり、手軽にリーフ茶を楽しむことができます。リーフ茶の消費低迷により、茶業界は大変苦戦を強いられておりますが、本製品を使用することにより、リーフ茶復活につながればと思い、本商品を開発いたしました。ロッドや価格等、お気軽にお問合せください。

Mail:nakane@kakegawa-cha.co.jp

TEL:0537-23-3252