深蒸し茶

2019年12月 茶況_No.354

令和元年12月2日

急に冷え込みが強くなった茶園では敷き草などの越冬に向けた防寒・防風対策に取り組んでいます。冬の間に専用の茶草場でススキやササなどの山草を刈り取ってから乾燥させ機械で5㎝程度に切断した茶草を茶畑の畝間に敷いていきます。茶草を敷くことで保温・保湿と肥料になりますので茶草敷きは冬場の欠かせない作業となります。今年は1・2番茶、秋冬番茶の取引は減産・単価安となりました。減産にもかかわらず単価安になることは今まででは考えられないことです。ドリンク原料が主流の取引になったということでしょうか。生産者には先行きの不安が高まっています。「今年のような相場が続けば別の農産物に転換するしかない」といった声も聞かれます。愛知県で開催された「全国お茶まつり」会場で若手茶農家が日本茶業中央会の川上陽子会長に「力を貸してほしい」と訴え生産現場への支援を要望しました。川上会長は「苦境を乗り越えるには若手の力が重要。現場の声を出してほしい」と呼びかけました。

産地問屋は歳末商戦に向けた仕上・発送作業を進めています。消費地への出荷は昨年並、産地問屋間の取引はドリンク原料用の出物類のみの動きです。各地区で開催された品評会の出品茶入札会が各地区でありました。

 

第55回静岡茶品評会入札結果

部   門 出品点数 落 札 率 落札単価
鶴 印4,000円 79(82) 65(43)% 4564円(4476円)
亀 印 2,000円 50(53) 66(53)% 2265円(2336円)

( )内は昨年の数字です

 

入札参加商社数は昨年より5社多い86社、売上額は512万円多い2064万円と茶商の積極さが目立つ結果でした。

消費地では令和最初のお歳暮商戦が本格化してきました。「お薦め品コーナー」設置してお客様との会話やサポートに力が入ります。残念なお知らせも目にします。「残念ながら店を閉じます。30年以上地域の一員だったことは誇りです。ご支援ありがとうございました」そんな張り紙を見て店内の空っぽの陳列棚を見ますと言葉にならない寂しさを感じます。

地方の百貨店が相次いで閉店しています。百貨店の存在意義がなくなってしまったからです。高価格で中高年向けの百貨店の品揃えは時代とともに指示されなくなってしまいました。郊外の大型店やネット通販との競争、人口減による経済の低迷が拍車を掛け残れるのは大都市の店だけになりそうです。各都道府県に百貨店が一つあった時代は終わろうとしています。西武所沢店のようにビッグカメラ・ノジマやユニクロなどのテナントを入れて複合型のショッピングセンターやショッピングモールに生まれ変わって生き残りを図るところもあります。百貨店4社の中間決算が発表されましたが2社が営業減益、1社が赤字でした。将来にわたって営業黒字が見込めない店は次々と閉店していく厳しい時代をむかえました。

 

 

 

4回目の転換点

  日本の小売業は大きな転換点にあります。そして大きな曲り角を迎えています。今回の転換点の主役は21世紀になって急速に広がったネット通販です。アマゾンや楽天などのネット通販の陰で百貨店や小売業などが次々と廃業や経営破綻に追い込まれています。2000年前後に生まれた世代はスマートフォンを通じて開店時間も閉店時間もないサイバー空間の店とつながっていて買い物をします。スマホの過去の購買履歴からあなただけへのお薦め商品やお買い得情報が次々とアップされます。

日本の小売業には過去3回の大きな転換点がありました。最初は三越の前身、越後屋が17世紀に初めた「現金掛値無し」販売です。掛売りが当たり前の時代に店頭で現金販売、掛け値なしで安く売る当時としては画期的な商いでした。2回目が、中内氏がダイエーを設立して高度成長期の大量消費時代を支えたスーパー全盛時代です。3回目は24時間営業を定着させ、社会インフラにもなったコンビニの台頭です。今回の変化は、それに次ぐ4回目の転換点といえます。既存の小売業はアマゾンなどのプラットフォーマーという異次元の世界から来た相手と戦わなければならないのです。

人手不足を背景に24時間営業のコンビニがきしみ始めています。本部が強い力を持ち、全国一律の運営をする従来のコンビニ像は見直しを迫られ営業時間の短縮を本部と協議したうえで認めるようになりました。コンビニ最大手のセブンイレブンは不採算店約1千店の閉鎖もしくは移転などを柱とする構造改革を発表しました。金太郎アメのような全国一律の運営をする時代の終焉です。

業績好調のネット通販も構造改革を進めています。国内のIT業界ではトップクラスの「ヤフー」と「LINE」が経営統合を決めました。検索やメッセージアプリ、ネット通販で国内最大手の巨大IT企業となります。ヤフーの「Pay Pay」、LINEの「LINE Pay」のスマホ決済は合わせると1億人規模となりスマホ決済を独占する形です。国内では完全に一強となりますので、今後の楽天の対抗策が注目されています。ヤフーとLINEの統合は1億人の利用者を有し国内では断トツのトップとなりますが、米国の巨大IT、GAFA(グーグル・アップル・フェイスブック・アマゾン)にはとてもかないません。フェイスブックの利用者は24億人、アマゾンの売上高は25兆円と桁違いの規模です。GAFAだけでなく中国の巨大IT、BAT(バイドゥ・アリババ・テンセント)は10億人の利用者を持ちスマホを起点に虎視耽耽と日本市場を狙っています。動きが激しいIT業界でヤフーとLINEは経営統合して海外の巨大ITに立ち向います。しかし、キャッシュレス決済は代金の約3~5%の手数料を決済業者に支払わなければいけません。せっかく削った人件費も新たな負担で相殺されてしまうといった声も聞かれます。日本のキャッシュレス化は世界と比べると遅れています。韓国96%・イギリス68%・中国66%・オーストラリア58%・米国46%・インド35%・日本20%・ドイツ16%です。日本は2025年までに40%を目指します。

トヨタもスマートフォン決済アプリ「トヨタウオレット」の無料提供を始めました。アプリを通して顧客データを集めカーシェアリングやレンタカーなど次世代の移動サービス事業展開の基礎構築につなげるのがねらいです。スマホ用決済アプリは乱立して利用者の獲得競争を繰り広げていますが、トヨタはこうした競争からは一線を画すサービス内容で利用者の獲得を図ります。現金掛値無し、スーパーマーケット、コンビニと時代とともに変化してきましたが、今回の第4の転換点はどのような変化をもたらすのでしょうか。

スマートフォンによる情報社会、脱プラスチック社会、地球温暖化対策、地球環境保護、世界中に広がる貧富による格差社会、アメリカ・中国・ロシアの覇権争いなど予継を許さない状況が続き、第4の転換点の辿り着く場所は、いったいどんな場所なのでしょうか。

 

 

 

<新商品発売のお知らせ>

ドリップフィルター「茶楽らく」

「淹れる手間よりも捨てる手間」とよく言われますが、お茶を淹れるのは面倒だとは思わないが、使用した後の茶殻の処理を面倒だと思っている消費者の方は意外と多いものです。

そこで今回、使い捨て型の急須・カップ用のティーフィルターを開発いたしました。

このドリップフィルター「茶楽らく」を使用することによって、捨てる手間と洗う手間が簡単になり、手軽にリーフ茶を楽しむことができます。リーフ茶の消費低迷により、茶業界は大変苦戦を強いられておりますが、本製品を使用することにより、リーフ茶復活につながればと思い、本商品を開発いたしました。ロッドや価格等、お気軽にお問合せください。

Mail:nakane@kakegawa-cha.co.jp

TEL:0537-23-3252