深蒸し茶

2018年12月 茶況_No.344

平成30年12月1日

茶園では本格的な冷え込みが始まる厳冬期に向けて敷草などの越冬に向けた防寒対策などの管理作業を進めています。10月下旬まで製造が続いた秋冬番茶は飲料メーカーの原料確保の動きから終始強気配でした。各地区で講習会や生産者と茶商の意見交換会も開催されていますが、煎茶から抹茶への転換方法や、一番茶から秋冬番茶まですべてドリンク原料製造でも経営が成り立つ仕組みなどが講習会の内容になっています。またお茶と他の農産物との併作も紹介します。山芋・キャベツ・ブロッコリー・ネギ・パセリ・栗など、お茶時期と重ならない農産物の紹介です。後継者がいる農家は転作も視野に入れて他の農産物を模索します。後継者がいない農家は耕作放棄となりますが茶園をそのまま放棄しますとイノシシの住み家になったり、茶の木が伸び過ぎて管理が出来なくなりますので茶の木を抜いて焼却処分している茶園も見受けられるようになりました。静岡県茶農家数は平成12年24,100戸、平成27年10,500戸、10年後の(平成)37年は6,100戸になると予測されています。また、静岡県の生産量は平成17年44,100t、平成27年31,300t、10年後の(平成) 37年は28,200tと予測されます。一番茶を主力としている山間地の生産者は確実に減少傾向になります。そして、平地で大規模面積を会社組織で経営する茶農家の割合が増えていくと予測されています。

産地問屋は年末商戦の出荷に忙しく対応しています、と言いたいのですが、歳暮商品となる1500円売・2000円売の荷動きは以前に比べて極端に少なくなりました。今は1000円売以下に集約された形です。産地間の荷動きも低価格の荒茶と出物類に限っては動きがありますが、一番茶の荷動きはほとんどありません。お陰様で10月と11月の出荷は前年を確保できました。家計調査による9月の緑茶消費量は前年同月比14.5%減の47g、支出金額は18.6%減の205円と2ヵ月連続で下回りました。一方、緑茶ドリンクの購入額は10.7%増の648円と9月としては過去最高の購入額になりました。一世帯1ヶ月のリーフ茶購入額205円、緑茶ドリンク購入額648円の厳しい結果です。リーフ茶205円の部分を県内9割の業者が競争して、緑茶ドリンク648円の部分を県内1割の業者で取り扱っていますので、リーフ茶だけを取り扱っている業者は存続が危ぶまれるわけです。

消費地ではお歳暮商戦がピークを迎えています。お客様の品物を選ぶ目は非常に厳しく儀礼的なギフトが縮小する中「あのお店のあの商品」といった訴求力がないと売れません。地元に必要とされ愛されるお店を目指しますが、諸経費を減らせない中、売上減に直面して経営は厳しさを増しています。人に見せたくなるような写真映えする商品を充実させたりして各店があの手この手で平成最後の商戦に挑んでいます。取引先の聡明な社長さんが厳しい時代の心得を教えてくれました。「1、オンリーワン商品 2、今までよりもっと働く 3、じっと我慢する」ここにしかないオンリーワン商品を持つこと、売上減に直面して他のことについ手を出したくなるが、設備など多大な投資をして失敗すれば致命傷になるのでアンテナは高く上げても行動は慎重にじっと我慢する。先が見えて確証が得られるまでの辛抱。心得をうかがって私も今までよりもっと働く気が出ました。

年末年始 配送のお知らせ

最終便 12月26日(水) ~ 初荷便 1月7日(月)

*年末になると荷物の増加で翌日配送への対応が難しくなります。余裕を持ったご注文を。

 

 

まずは生き残ることが先決

 年末に机の整理をしていましたら1990年に出された「茶の流通構造の変化を探る」と題した28年前の資料が出てきました。その資料によりますと「静岡県は全国荒茶生産量の約50%を産し、県外からの流入分を加えた問屋の扱い量は全国の60~70%を占めている。販売力を背景に圧倒的な大集散地としての地位を担っており、お茶と言えば静岡の評価が定着している」と冒頭に静岡の優位性が記されています。そして「茶は長期にわたり需要低迷が続いている中で経営環境も大きく変わりつつあり、再生問屋は次第に厳しい局面を迎えることも懸念される」と現状と変わらない厳しい局面にあったこと、そして先行きに不安を抱えた様子がうかがえます。1990年に消費低迷の要因に挙げられたのは、食事・住居の洋風化、核家族化、そして他飲料(コーヒー・紅茶・清涼飲料)等との競争激化と機能面をセールスポイントとした様々なドリンク群が市場にあふれ緑茶の競争環境は相当厳しいものになっていると指摘していますが、ペットボトル茶のことは、この頃はまだ心配していませんでした。その後、緑茶飲料が普及して緑茶消費量は、ますます厳しい時代を迎えます。資料では28年後に来るべき業界を予想して、ほぼ予想通りの結果になっていますが、唯一違っているのはペットボトル茶がここまで普及するとは思っていなかったことでしょうか。30年前には静岡県茶商の組合員数は約550社ありましたが現在は364社(34%減)、東京都茶商の組合員数は約500社でしたが現在は242社(52%減)と半数になっています。もちろん組合は退会しても営業を継続しているお店もあります。

変わったのは茶業界だけではありません。飛ぶ鳥を落とす勢いだった総合スーパーと百貨店はアマゾンやZOZOなどのネット通販に市場を奪われて売上減に歯止めをかけられないでいます。ダイエーはイオンに西友はウォルマートにユニーはドン・キホーテの傘下に入りました。時代とともに求められているものが変わっているのに昔のままで何も変わろうとしなかった結果です。そして厳しい競争に負けたことが原因です。物がない時代は物を豊富に並べて価格を他より安くすれば売れました。ダイエーの「安売り哲学」に象徴されるように飛ぶ鳥を落とす勢いで業績を伸ばし、小売業として初めて売上1兆円を突破しました。その後、生活は豊かになりどこの家庭にも必要なものは揃い、平均的な何処にでもあるものは敬遠されて自分の気に入ったものしか買わなくなりました。その後、台頭してきたユニクロやニトリなどの大型専門店は、常にその時代の消費者が求めている品質やデザインや価格を探求して形にした企業たちです。

人口が減り、消費が停滞して既存事業の収益力低下に悩む中小企業が行き場が分からなくなって迷っています。しかし、衰退している市場と成長している市場は必ずあります。もし自分がいる市場が縮小しているのなら成長している市場に移らなくてはいけません。どんな会社にも強みはあります。その強みを生かせる市場に移ればいいのですが、誰もが注目する分野、あるいは儲かりそうな市場に乗り換えようとしますから競争に負けて失敗する例は数多くあります。見栄えや効率よりも創業時の気持ちで一生懸命に取り組む姿勢を忘れない事、そして一気に山頂に登ろうとしないで一歩づつ確実に前へ進むこと。失敗したら負け組ではすみません、その時は死に組になるのですから。

変化していく世の中に合わせて業態も取扱商品もサービスも変えていかなければいけません。自社の立ち位置をよく理解して、その中で「次の一手」を考えることができるかどうかに将来がかかっています。しかし重要なのは「まずは生き残ることが先決」です。