深蒸し茶

2018年11月 茶況_No.343

平成30年11月13日

生産者は茶園の畝間に敷くススキやササなどの山草を刈っています。場所は山の急斜面が多く、滑って谷へ転落しないように細心の注意をします。刈り取った山草は乾燥してから細かく切断して茶園の畝間に敷いていきます。茶園に敷くことにより雑草が生えず、保湿・保温と有機肥料になり美味しいお茶づくりには欠かせない作業となります。台風21号・24号による塩害で、一部茶園に赤焼廃が散見されますので来春の新茶生産に向けての対応を指導機関では呼びかけています。

県茶業研究センターは110周年を迎えました。センターの前身は明治41年に全国に先駆けて発足した「静岡県立試験場茶業部」です。清水港から輸出が始まった2年後で収量と品質の確保が必須要件だったからです。発足後、手摘みから手バサミへ、手揉みから機械揉みへ、二人用摘採機から乗用型摘採機へ、茶工場の自動化など、その時々の技術革新とともに歩んで来ました。近年は農業ロボットや情報通信技術と融合させる「スマート茶業」の実現に向けて情報発信を続けています。

産地問屋は仕上・発送作業など秋需に向けた対応に追われていますが、出荷は前年割の状況が続きます。各地で開催された品評会の入札販売会も落札率は低く売上金額も低調で終了しました。静岡銀行の景況リポートによりますと、ドリンク向けは堅調な需要が見込めるが家庭需要や歳暮など贈答需要は低迷が続きそうと予測しています。7~10月期の現況は夏の猛暑の影響で製茶問屋の売上高は前年を下回ったと報告しています。静岡茶市場では在庫調整を目的に毎月入札販売会が開かれていますが今月は7日に同市場で開かれました。荒茶・棒茶・粉茶など160点が出品され県内問屋33社が入札に参加しました。結果、一番茶の入札は少なく、棒茶・粉茶と1000円以下の荒茶、特にドリンク関連の引き合いが強く600万円の売上でした。

消費地では「秋の蔵出しセール」などを実施して歳暮商戦の準備を進めています。朝夕が涼しくなり秋需消費に期待していますが、期待通りの結果はなかなか得られません。出店先のオーナーが変わったり、商店街の閉店や入れ替えで状況は著しく変化しています。 2019年10月の消費増税に合わせ政府はキャッシュレス決済を推進します。キャッシュレス決済比率は韓国96%、中国60%、米国46%に対して日本は20%とかなり出遅れています。オリンピックを控え訪日外国人が増えることと、国内の消費喚起を目的に政府はキャッシュレスの普及を推進します。消費者は現金支払いですと節約を意識しますが、キャッシュレス(カード・電子マネー)ですとお金を使う傾向にあるという結果が出ています。しかし、中小店舗のキャッシュレス化は手数料の負担が重く問題にもなっています。

 

急須で入れる茶の消費不振と一番茶安・担い手不足(生産者・小売店)から茶業界の先細り感は否めません。急須で入れる茶の消費が年々減少し、一番茶の必要性が年々薄れています。廃業を選択することは簡単ですが、2年後~5年後を見据えた次の一手を、もう一度、生産農家・産地問屋・消費地小売店と一緒になって考え、改善策を実施していく必要が強く求められています。

 

 

 

プラットフォーマー

 プラットフォーマーとはスマートフォンの検索やインターネット通販、無料通話アプリLINEやフェイスブックなどのSNSにより利用者にさまざまなサービスの基盤(プラットフォーム)を提供している巨大IT企業の事です。代表格は「GAFA(ガーファ)」とくくられる米国の4社です。検索のグーグル(G)、アイフォンのアップル(A)、交流サイトのフェイスブック(F)、インターネット通販のアマゾン(A)の頭文字を取ってGAFAと呼ばれています。GAFAの交流サイトを使って人々が交流できたり、中小企業がネット販売を経由して商品を販売する基盤を提供したりと利便性が非常に高いために利用者が多く、その利用者の膨大な顧客情報を収集して急成長を続け、巨額な利益を上げています。売上が30兆円の世界のトヨタの利益は2.4兆円ですが、iphoneやマックブックを販売しているアップルの利益はトヨタの2.8倍6.7兆円です。GAFA4社で時価総額340兆円のITの巨大企業です。中国でもIT企業のバイドゥ・アリババ・テンセントの頭文字を取ってBATと呼ばれるプラットフォーマーがありますが、人口13億人の巨大市場で巨額の収益を挙げています。検索サービスやネット通販が普及するにつれ、個人の検索履歴や買物履歴などのデータがプラットフォーマーに集中したために市場の寡占化も進みました。世界中で消費者と接点を持ち、消費者の関心事項や購買行動といった個人情報を収集、分析して各種サービスを提供し、膨大なデータを握ることで企業がプラットフォーマーを介さずには事業展開ができないほど圧倒的な存在となっています。衣料品などは店舗で商品を見て確認して、買うのはネット通販という人もいます。店舗はショールームとして見る場所になりつつありますが、店舗で購入しても現金を使わないキャッシュレス決済が進みますと入店データや購入データなどの個人情報がプラットフォーマーに集まり、影響力はますます拡大していきます。こうした米国や中国のプラットフォーマーたちは新しい市場経済を生み出し、時代に先行して世界を動かしています。インターネット時代が作り出した時代の寵児とも言えます。

欧州連合EUでは巨大化するGAFAに「デジタル税」を検討中です。EU加盟国内での売上高に一律3%を課税するというものです。日本では経済産業省がプラットフォーマーの取引先企業から聞き取り調査を実施して取引の実態解明を急ぐとともに課徴金制度の導入を議論し始めました。調査では9割の企業が問題点として「個別交渉が困難」を挙げ「一方的に利用料を値上げされる」「手数料の負担が重く利益がほとんど出ない」との回答が8割ありました。プラットフォーマーと取引する利点としては8割が「新規顧客の開拓機会の獲得」と答えています。経済省はプラットフォーマーの下請けの立場を強要されないよう巨大IT企業への規制強化の検討を始めました。検索やネット通販といったさまざまなサービスで圧倒的なシェアを握り、強い立場を背景に取引業者に不当な取引を強要する恐れがあるからです。

企業を次々と買収して巨大化するIT企業プラットフォーマー。消費者の個人情報を収集、分析して各種のサービスを提供し膨大なデータを握ることでプラットフォーマーを介さずには事業展開できないほど圧倒的な存在となっています。顧客の私生活や消費者の願望のさらに奥深くを探り、主導権を握った企業の優位性が加速するネット経済の特性から独占や寡占化が進みやすく、その影響が大きくなりすぎていると指摘されています。そして、便利で革新的なサービスを提供する一方で、各国から個人情報の流出や悪用も問題視され警戒され始めています。