深蒸し茶

2019年2月 茶況_No.345

令和元年2月4日

経済の減速や人手不足など、さまざまな課題を抱えて迎えた平成最後の2019年。経済界のトップからは厳しい年頭所感が聞かれました。「なくてはならない会社になる」「市場の変化に対応し続ける組織でありたい」「ニーズに対応した製品を素早く提案できる組織づくり」「意識や行動が変わることで会社が変わる」などが激しく変化する時代に向けてスキルを持つ人材の育成や新たな価値の創造を掲げています。

朝の茶園は薄らと霜が降りて白く輝き、このところの厳しい寒さに耐えている様子がうかがえます。久しぶりの雨で茶園も潤い活気を取り戻しました。生産者は敷草などの防寒・乾燥対策などの管理作業を進めています。「茶草場農法」を実践する茶農家は山の斜面の草を刈り、束ねて、裁断するなどの手間のかかる作業があります。最近はその大変な作業の手助けをする作業応援ボランティアの人達をよく見かけます。皆さん初体験ではありますが、富士山がきれいに見える山の斜面で作業のお手伝いをしています。美味しい空気と心地よい汗と、美味しいお弁当が楽しみです。

JA経済連から2018年の生産状況が発表されました。一番茶の平均単価は前年比16%安の1946円と初めて2000円を割り込みました。二番茶は8%安の757円、秋冬番茶は3%安の348円となり年間平均単価は12%安の1053円と平成の最安値を記録しました。数量は8%の増産でしたが、農家の経営は厳しく高齢化もあって離農する人や放棄茶園がますます増えています。

産地問屋は仕上作業が一段落して出荷作業に忙しく対応しています。ティーバッグ製造や袋詰作業などの人手間のかかる作業が増えていますので人手不足への対応として募集広告や機械設備を同時に進めているところもあります。静岡茶市場で毎月1回開催される入札販売会が先日ありました。急須で飲む上級茶の荷動きはなく、秋冬番茶・粉茶・棒茶など低価格原料がドリンク関連業者によって買い支えられる傾向が続いています。2018年11月の緑茶購入量の家計調査でも一世帯の緑茶支出額はリーフ茶290円に対しドリンク茶飲料は514円の出費と発表されました。時代の流れと言えばそれまでですが、お茶もリーフ茶からドリンク茶飲料が主流になってしまいました。県内業者の10%がドリンク関連業者(家計支出514円の部分)、90%がリーフ茶業者(家計支出290円の部分)と推測されますが、リーフ茶を扱う90%の県内業者の経営はますます厳しくなっています。取引先の閉店などからリーフ茶を扱う業者の売上減少は急加速で進み、今後は廃業を選択する業者が続出しそうな危険な雲行きになっています。

消費地では贈答需要も終わり、家庭需要をいかに喚起するかに懸命に努力しています。店頭でおもてなしの呈茶を進めながら地域密着の、地域に必要とされるお店を目指します。経営の根幹には、これまで以上に「地域のお客様とともに」のゆるぎない姿勢が感じられます。景気の悪化を指摘する声は多く、来客数が落ち込んでいるなどの声も聞かれます。消費動向アンケート調査によりますと、この1年間に「充実させた費目」は「子供の教育費と旅行レジャー費」が上位となり、この1年間の「節約した費目」は「外食費・毎日の食費と衣料品」と回答する主婦が多く、食費を中心に日常生活の身近なところから出費を見直そうとしていることがうかがえます。家計の引き締め傾向は今後も続く見通しです。

 

 

自分ができると思ったことは必ずできるとは限らない。でも、自分ができないと思ってしまったらそれは絶対にできない。

 今年5月に元号が改まり、30年続いた時代に幕が下ります。激動の昭和を受け継いだ平成の時代は、後にどのように総括されるのでしょうか。平成30年を10年単位で捉えますと最初の10年は大規模小売店舗法の規制が緩和され全国に総合スーパーが乱立した10年でした。中盤の10年は崩壊の10年でした。ヤオハン・マイカル・ダイエー・そごう・セゾンと大手小売業が大きな波にのまれ破綻しました。隕石の衝突で恐竜が滅んだのに似ています。そして直近の10年はネットベンチャーが次々に登場し巨大化した10年でした。平成の間にインターネットが普及して個人は場所を問わず結びつきスマートフォン(スマホ)で情報を受信し発信するようになりました。GAFA(ガーファ)とは G(グーグル) A(アップル) F(フェイスブック) A(アマゾン)の頭文字を取った造語ですが、世界中のスマホ利用者が、ほぼ毎日これら四社のサービスを使っています。結果、利用者のデータがGAFAに集中することにより、四社は世界の人達のさまざまなデータを圧倒的に所有するようになっています。世界中がこの四社の植民地になっているといっても過言ではありません。ネットビジネスを提供するためには多大な投資や多額のコストがかかっています。タダでできるわけはありませんが、その対価として利用者は自分の情報を提供することで取引が成立しているわけですので、ビッグデータを持つ者がこれからの新産業、新ビジネスの支配者になることは間違いないでしょう。

GAFA四社に動画配信サービスのNETFLIXを加えた5社の時価総額は東京証券取引所1部・2部全体の時価総額の半分に達する大きさです。GAFAを含む世界の富豪上位26人が所有する資産は約150兆に上り、世界人口の約半数に当たる38億人が持つ資産と同額と言われています。持つ者と持たざる者の格差拡大により世界の人々は怒りや不満を募らせています。その結果、世界各地で貿易摩擦や暴動、紛争や難民問題が勃発しています。世界の人々の情報を一手に握り、国の方向性をも左右する力を持ち始めているトップの富裕層に規制強化の動きが始まりました。その動きは魔女狩りのような雰囲気さえ感じます。

スマートフォンを手にした平成の消費者はスマホでモノを売買するようになり、店では商品を見て体験して購入はネットでという人も増えています。しかし商品数が膨大になり検索に時間が掛かるのと、チェックするのが大変になり「何でもあるが欲しいものがない」といった声も聞かれるようになっています。

変化の厳しい現代における最大のリスクは「時代に取り残されること」と言われます。今起きている様々な変化は時代の要請とも言えます。今日の常識が明日の非常識となる時代に入りました。時代の変わり目の今だからこそ、新たな消費者ニーズ、消費者満足を感じ取って新たな付加価値を生み出し、新たなビジネスモデル構築のチャンスととらえることもできるはずです。平成という時代が終わり、新しい時代の幕が開けます。新たな挑戦の年になることを願っています。

表題の「自分ができると思ったことは必ずできるとは限らない。でも、自分ができないと思ってしまったら、それは絶対にできない」の言葉はイチロー選手がイチロー杯の閉会式で子供たちに送ったエールです。45歳になった現在も厳しいトレーニングを自分に課して選手としてのプレーが、いつでもできるようにたゆまぬ努力を続けています。

経営環境はますます厳しさを増すと思われますが、イチロー選手のこの言葉を念頭にいつでもプレーができるように、新たな挑戦の始まりです。