深蒸し茶

2017年3月 茶況_No.329

平成29年3月1日

茶園では新茶に向けた茶園管理を進めています。枝葉を整える化粧ナラシや春肥の投入も始まっています。これから新芽の生育状況を見ながら芽出し肥料を施すなど、新茶摘採に向けた茶園管理を進めていきます。全国の茶の生産、消費の動向が大きく変化しています。消費にあった生産をするために、市場が求める商品を供給するために茶農家がグループで耕作放棄茶園を借り受けて有機栽培のてん茶生産園として規模拡大をしているところもあります。農地利用最適化のモデル事例として補助金の対象にもなりました。また、お互いの茶園を視察したり、効果的な肥料の投入事例や良質茶製造方法などの研修会を開いて勉強する地区や工場もあります。

産地問屋は在庫の調整をしながら新茶の仕入れ計画を練っています。500円売・600円売の原料に該当する荒茶2000円代に荷もたれ感がありますが、それ以外は適正在庫と思われます。一茶の下物と二茶・秋冬番茶には引き合いがあります。総務省の家計調査によりますと2016年のリーフ茶の支出金額4168円(2%増)、茶飲料の支出金額6632円(8%増)と発表され、リーフ茶よりも飲料茶の方に多く支出されていることがクローズアップされました。県内で飲料原料を扱う問屋は全体の1割位でしょうか。ですから1割の問屋は元気がよく9割の問屋は元気がありません。売上減や後継者難から新茶期を前に廃業するところもあります。県内では17社が廃業のため組合を退会しますが、3年以内には相当数の組合員が廃業する可能性がありますので組合自体も存続をかけて組織変革を迫られています。

消費地では新茶資材や新茶チラシの準備も済んでDM発送の準備をしています。「八十八夜予約新茶」は予約限定ということもあり毎年好評です。また高級茶を扱う数少ない絶好の機会でもあります。店頭販売においては、消費の節約志向が、じわりと響いているのを感じます。先日の講演会で㈱吉村の社長さんのお話しによりますと、急須を持っている家庭は5軒中1軒で8割が急須を持っていない家庭のようです。各お店は急須が無くても本物のお茶が飲める工夫が大切です。業種により人手不足は深刻です。運送業・飲食業・介護施設・コンビニなど深夜や休日出勤のある業種は人手不足による倒産も目立ちます。コンビニのローソンでは60才以上のアルバイト店員を増やしています。勤勉なシニア世代は店舗運営に欠かせない存在です。スマホによる情報システムが高度化し「クラウドソーシング」なるウェブサービスが注目されています。仕事を依頼したい企業と仕事を受けたい個人をオンライン上でマッチングするサービスです。企業は自前の労働者を大量に抱え込む必要がないし、働く人も好きな時間に高収入を確保することが可能になりますので、これからは人材派遣会社等の中抜きが起きる可能性もあります。ネット販売が急拡大し、百貨店がこんなに衰退することは誰も想定外でした。「カメラのキタムラ」は129店を閉鎖し事業改革を断行します。スマホによる撮影で写真プリントをしない人が増えたために業績が悪化しました。東芝は原子力発電事業の失敗と経営判断の誤りから、会社を切り売りして解体の危機に直面しています。さすが名門ですので金融機関の支援を受けて難局を乗り切る方向で調整しています。この二例は、先を読む判断を間違えて動けば奈落の底に落ちますよという警告です。

 

 

 

お客様は神様です

 「お客様は神様です」という言葉をつくったのは、昭和を代表する歌手の三波春夫です。しかし、言葉が独り歩きして間違った使われ方になってしまいました。三波春夫が伝えたかったことは、舞台に立つときは、雑念を払ってお客様を神様とみて、祈るように心をまっさらにしなければ完璧な芸をお見せすることができない、との信念から発した言葉だったようです。しかし、いつのまにか勝手に解釈され買う側のお客様は絶対正しい神様になってしまいました。そして、売る側のお店は、お客様を喜ばせるということが絶対条件になりました。

最近、日本の過剰サービスが問題になっています。商品を出口まで一緒に持って行って、最後にお見送りしてくれるというサービス。留守の時は何度でも再配達してくれる、指定すれば夜間でも配達してくれるサービス。24時間営業しているコンビニ、ファミリーレストラン、ATM など、日本のサービスレベルが他の国と比べて突出していることに気が付き「日本は過剰サービスでは」と疑問に思う人が増えました。今までお店は、競争に勝って生き残るために顧客満足度№1を目指して、どんな要望にもお応えしたいと頑張ってきました。しかし、本一冊、化粧品一個を玄関口まで届け、再配達するサービスが必要なのでしょうかと疑問を持つようになりました。ヤマト運輸の夜間の配送センターや夜間のファミリーレストランは外国人留学生の労働力で支えられています。佐川がアマゾンとの取引を撤退し、ヤマト運輸がアマゾンとの取引を見直す検討に入りました。通販業者は物流を確保する難しさがアキレスケンとも言われています。アマゾンは佐川、ヤマトで配送を断られれば、一般車の配送サービス「ウーバー」のように、一般のドライバーに配達を依頼しようと考えます。ただし日本の場合はタクシーも運送業も認可が必要ですのでハードルは高いのですが、自動車一台あれば個人でも物流ビジネスに参入できるチャンスでもあり、スマホなどを利用したマッチング機能によって最終ユーザーと個人業者が直接つながることが可能になる大きなビジネスチャンスになると注目されています。ファミリーレストランは24時間営業の見直しに入りました。「すかいらーく」「ガスト」「ロイヤルホスト」「日本マクドナルド」「吉野家」は営業時間を短縮する方向で順次実施しています。場所によって深夜の客数は減り続け、従業員の働き方や健康を考慮して、今回の対応となりました。

消費者は値ごろ感があり、宅配という利便性があるネット通販へシフトしていますが、配達業者は人手不足で荷受量を抑制する方向へ動いています。実店舗はネット通販の成長で苦戦し、いかに顧客を呼び戻すかという店舗のあり方そのものを自問自答しています。クックパッドが始めた「トクバイ」は店舗商品のリアルタイムの2万6千店の価格や品ぞろえの情報が掲載され600万人が利用しています。「規模ではアマゾンに負けるが、店舗周辺の住民ニーズをつかめば生き残れる」との考えです。

今までの日本の産業の特徴は大企業依存でしたが、最終ユーザーとのマッチングがスマホなどの情報システムによって高度化すれば大企業を介さなくてもビジネスを展開することが可能となります。米国の「ウーバー」はタクシーに代わる一般車の配車サービスで利用され、中国の「モバイク」は自転車のシェアリング(共有)サービスをスマホでできるようにして成功しました。ネット販売は家電や本を単品買いする第一世代からスマホを眺めながら日用品を買ったりマッチングやシェアリングを利用する第二世代に入ります。そして、社会システムは人手不足や過剰サービス、深夜営業、過重労働が見直されつつあります。この変化は中小企業や個人にとっては大きなビジネスチャンスとなります。