深蒸し茶

2017年2月 茶況_No.328

平成29年2月10日

茶農家は寒肥や防除など冬の管理作業を進めています。茶草場農法を実践する生産者は草を刈り取って乾燥させ、小さく切断してから茶園に敷く作業を行っています。厳寒が戻り、寒い日、乾燥した日が続きますので敷草は茶園の保温・保湿に大きな効果を上げています。JA静岡経済連は静岡県内2016年生産量と価格を発表しました。生産量は30,644トン(3.6%減)、平均価格は1123円(2.9%高)と減産、単価高の結果です。減産は2年連続、平均価格は8年振りに上昇しました。茶期別生産量はニ茶7,526トン(8.4%減)、三茶951トン(6.1%増)、秋冬番茶10,067トン(0.1%増)です。平均価格は一茶2113円(1.8%高)、二茶716円(14.2%高)、秋冬番茶329円(13.1%高)と全茶期で2015年を上回りました。茶農家も機械化と規模拡大が進み機械や施設投資にかかわる減価償却が大きな負担になっています。規模を拡大して機会がバリバリ働く農家では、機械との共同作業で生み出された収益の多くが減価償却として機械に食われ、実質の手取りは少なくなっているのが現実です。新たな投資は控え、規模は小さくても低コストで茶農家経営が続けられる方向に舵を切り出した生産者もあります。

産地問屋は仕上と出荷作業をこなしながら新商品の企画や新規顧客への営業、新分野への開拓などを熱心に続けます。新規顧客の開拓がないと既存ベースでは廃業や閉店する取引先もありますので、売上は減り続ける厳しい状況が続きます。国内消費が伸び悩んでいるなか海外輸出は伸びています。2016年の緑茶輸出量は4,108トンとほぼ横ばいでしたが、輸出金額は14%増の116億円となりました。金額が伸びたのは抹茶など単価の高い商品の販売が好調なためです。国別では米国1419トン(16%減)、49億円(10%増)、ドイツ305トン(5%増)13億円(0.5%減)、シンガポール341トン(22%増)11億円(20%増)

台湾792トン(8%増)8.3億円(0.7%増)となっています。

産地の端境期は原料の過不足の調整のために例年は問屋間取引が活発になるのですが、今年はドリンク原料になる二茶下物と秋冬番茶以外は取引と荷動きはほとんど見られません。リーフの中、上級茶の消費が鈍いだけに一番茶の在庫荷もたれ感があります。

消費地では新茶袋やチラシなど新茶販売の準備を進めながら予約新茶の販売計画を練っています。取り巻く経営環境は不透明で厳しい状況が続きますが、自店の強みを生かして顧客の期待を超えるサービス提供を常に考えます。内閣府が発表した1月の景気ウォッチー調査によりますと景気の現状を示す指数は前年より1.6ポイント低い49.8ポイントで、悪化は7か月ぶりです。内閣府は基調判断を下方修正し「持ち直しが続いているものの一服感がみられる」と発表しました。一服感とは内閣府らしい表現ですが現状は非常に厳しい状況です。非正規雇用が4割を超え、短期契約のため、契約をいつ打ち切られるか、常に不安を抱えています。所得格差が広がり一服感では済まない人達が多数いるのが現状です。

これから八十八夜新茶の予約が始まりますが、前年並み確保が当面の目標です。お茶は単なる飲み物ではなく、日本が世界に誇る文化として「茶文化」を発信して来ましたが、簡便性や健康志向などのニーズに即し、テレビやネットでそのことを訴求してきたペットボトル茶が主流になりつつあります。茶業者は「理想論」と「現実論」の狭間で揺れます。

 

 

 

2017年 時 流

 本格的な不安時代に入り、経営者も従業員も将来に大きな不安を感じています。時流とはその時代時代の物の考え方や傾向、流れのことを言います。大きく変化する世界の流れ、世間の流れ、社会の流れ、消費者の心理、その時々の時代感覚など、川の流れと同じで時代の流れには逆らえないものがあります。こんな時こそ、経営者の哲学、企業理念、創業の思いを再確認して足元を固める必要があります。そして駄目と判断した時、内部に混乱が起きた時には、すみやかに計画を変える柔軟性が求められます。

従来の延長線上にはない新たな事業領域に果敢に挑戦し、時代の変化を成長の原動力に変えて全社員が力を出し切って「やりきる」という意識が大切です。2016年の全国百貨店売上高は前年比2.9%減の5兆9780億円となり、36年ぶりに6兆円を下回りました。1991年の9兆7130億円をピークに減少傾向が続いています。個人消費の低迷に加えて訪日観光客による「爆買い」も一服し、郊外の大型ショッピングセンターやインターネット通販に客を奪われる厳しい状況が続いているからです。そごう柏店、西武旭川店は昨年閉店、今年は西武八尾店と筑波店を閉店します。三越伊勢丹は千葉店と多摩センター店を3月に閉め、松戸店・府中店・広島店・松山店の4店では縮小やテナント貸しなども検討しています。高島屋は新宿店や横浜港南台店に大型家具専門チェーン「ニトリ」を誘致して集客に懸命です。伸び悩む個人消費に対応するため、流通各社は秋冬にイベントを乱発しているために、今年は需要先食いの反動も懸念されています。高画質の4Kテレビは価格が下がり消費者の関心も高いのですが、ネットショッピングの価安セールなどで業界は消耗戦の様相です。各業者は11月下旬に米国の慣習にならって「ブラック・フライデー」と呼ぶ激安セールを仕掛けるなど、値引き合戦が続きます。関係者からは「例年、秋から冬にかけては無理に値引きしなくても売れる時期だったのに」との恨み節も聞かれます。

米国の小売業界も先行きへの不安を暮らせています。ネット通販の成長で実店舗の地位が急速に低下し、販売手法や雇用形態など直面する様々な課題から、新たな1年への期待よりも、不安感が強く感じられるからです。流通セミナーでも、いかに顧客を呼び戻すかという店舗のあり方そのものを自問自答する雰囲気が濃厚でした。今の時代を表す一言は「秩序崩壊」だと言います。これまでにない混乱に直面している現状を語気を強めて指摘する経営トップもいます。そして10年以内に米国労働者の47%の仕事はAI(人工知能)に取って代わられると断言、第4次産業革命の時代に入ったと指摘します。

消費者は値ごろ感があり、宅配という利便性があるネット通販へシフトしている傾向があります。実店舗を主力とした小売業にとって「新たな事業モデル」や「未来型店舗」を早急に構築しないと模索の時間が長引けば長引くほど既存事業の傷口は深くなると言えそうです。米国・英国の国民投票をみても、とにかく流れを変えたいと思う人が増えています。今やっていることが、時間がたつと時代と合わなくなるということを常に考え、命取りにならないかどうかを絶えず自問自答する必要があります。そして、いろいろなことがあっても、焦らず動じないでいること「不動心」が大切です。2017年は、変化した産業構造や社会構造にどう合わせられるかが大きな課題となっていますが、経営環境は不透明で厳しい状況が続きます。消費構造の変化をチャンスと捉え、ゼロからスタートする気持ちで行動することにより、現在やっていることの見直しや、新分野の開拓など変化に柔軟に対応できる組織づくりが大切ではないでしょうか。