深蒸し茶

2017年12月 茶況_No.335

平成29年12月1日

茶園では冷え込みが強まる冬期に向けて敷草などの越冬に向けた準備を進めています。茶園周辺の里山で刈り取った山草を茶園に投入する「茶草場農法」は国連食糧農業機関(FAO)より「世界農業遺産」に認定されています。茶農家の方は秋冬番茶の収穫が終わる10月中旬から年末にかけてススキやササなどの刈った山草を束にして15日間ほど乾かした後、長さ10㎝ほどに裁断して茶の木の間に敷きます。一反(300坪)当たり700k位を投入しますので重労働です。茶園に敷かれた山草が、雑草が伸びるのを抑え、土の乾燥や凍結を防ぎ、有機肥料に役立ちます。

 

第53回静岡茶品評会 入札結果

部  門 出品点数 落 札 率 落札単価
鶴印 4,000円 86(78)点 64(60)% 4,621円(4582円)
亀印 2,000円 51(56)点 67(66)% 2,401円(2,392円)

( )内は昨年の数字です

静岡茶入札販売会の参加商社は、昨年より15社少ない70社でしたが、落札率、落札単価ともに昨年を上回りました。総落札金額は昨年比6%増の2087万円という結果でした。良い品質の仕上茶がお値打ちで落札できるということもありますが、売れない売れないと言われている中で、売れている元気のいい問屋もあるということです。10月中旬に終了した秋冬番茶の相場も前年より15~20%ほど高く推移しました。しっかりした相場が続き、これまで秋冬番茶を製造しなかった工場も生産を行い、減産予想から増産に転じたようです。秋冬番茶も大手飲料メーカーからの注文を受けている、元気の良い問屋は10t単位で膨大な数量を買い付けています。しかし、大多数の問屋は、売上減に直面し原材料高、運賃・諸経費などの高騰がある中、値上ができなくて経営はますます厳しくなっているといった声も多く聞かれます。

消費地では、お歳暮商戦の本番を迎えています。市場が縮小する中で地元に愛されるお店を目指します。挨拶を欠かさず店内や商品をきれいにするといった、当たり前のことを当たり前にする努力を続けます。高級感を大切にしながらも、敷居を高くしない細やかな配慮は欠かせません。お客様が、お店に入りにくさを感じないように「いらっしゃいませ」ではなく「こんにちは」で来店客を迎えているお店もあります。米国では毎年11月の第4木曜日の感謝祭の翌日の金曜日のことを「ブラックフライデー」と呼びます。クリスマス商戦の初日に当たり、大規模な安売りが実施されますので、買い物客による混雑、お店の黒字を連想させることからブラックの名が付きました。店舗で買った人は30%、ネットで買った人は33%、店舗とネットの両方で勝った人が37%という結果が出ています。今年から「ブラックフライデー」で買えなかった人をピックアップするネット通販のセール「サイバーマンデー」が本格化しました。アマゾンなどネット通販は、小売店にとってますますの脅威となっています。日用品での節約志向が続くことから厳しい年末になりそうです。

<12月における運送状況のお知らせ>

12月に入ると荷物の増加と人手不足により翌日配達の対応が難しいとの通知が運送会社よりありました。恐縮ではございますが、余裕を持ったご発注をお願いいたします。

 

 

資本主義システムの代替え案

 いまでは、低成長経済は先進国の共通のテーマになっています。ただ、対応をめぐっての意見は真っ二つに割れます。何が何でも成長率を高める手段を打つべきか。それとも低成長社会を受け入れるのか。最近は「長期停滞論」を理解して低成長やむなしの意見に耳を傾ける人が少なくありません。

19世紀カール・マルクスは資本主義を分析して、その崩壊を予言しました。このマルクス理論を土台に社会主義国家が建設され、一時代は世界を二分しました。しかし、20世紀末には社会主義体制が勢力を大きく衰えさせたのに対し、資本主義が勢いを増しました。しかし、発展した資本主義諸国では経済成長率が低下し、負債が増大するとともに貧富の格差が拡大して資本主義の危機を先送りしていると主張する政治学者もいます。

日本は、池田政権の「所得倍増計画」、田中政権の「日本列島改造論」や安倍政権の「アベノミクス」によって大変豊かな国になりました。しかし、いま一度個人に目を向けてみるとどうでしょうか。サラリーマンの平均年収は400万円で20年前と比べて1割強減っています。就業人口の4割が非正規雇用で、その平均年収は170万円です。よく消費者が財布の紐を緩めないと言われますが、これは正確ではありません。この表現では、消費者が貯蓄にお金を振り向けているので消費が落ち込んでいるように聞こえるからです。現実に起きていることは、財布の中に贅沢できるような余分なお金は入っていないということが現実なのです。賃金の上昇スピードは遅く、可処分所得が伸びていない中で、消費を増やそうと言っても無理な話です。日本の企業には、内部留保が蓄積され貯蓄資金がたまり続けています。その企業貯蓄を投資などの形に回さなければ内需が振るわないのは当然なのかもしれません。この30年、国民一人当たりのGDP(国内総生産)は横ばいですが生活満足度は右肩下がりの傾向が続いています。みんなが幸福になれる時代は、とっくに終わり過去のものとなって貧富の格差は、ますます拡大しているのです。

日本政府は、これまでの常識を破って超金融緩和のエンジンをふかし続けて市場に大量のお金をばらまいています。その結果、雇用・株価・企業業績などでは大きな成果が出ていますが、デフレ脱却を目標として揚げてきた肝心の物価はなかなか上昇していきません。安倍政権に近い経済ブレーンの黒田日銀総裁への評価は二つに分かれます。「黒田総裁はよくやっている」と「人心一新させた方がいい」との意見です。雇用や株価の指標は堅調だが物価上昇率2%は達成できていない。次の5年間で政府と日銀は何をやるのか、誰がふさわしいのかを明確にする必要があるとの厳しい意見も聞こえてきます。景気が回復基調で企業業績や雇用が改善しても、賃金や物価の上昇のスピードが鈍いというのは日本だけの現象ではありません。欧米も同じで、資本主義国家が直面している共通の構造的な問題が背景にあるという厳しい見方もあります。物販の世界では価格競争が激化しユニクロ・イオン・無印良品などの店は価格引き下げをしています。インターネットの普及などで市場の価格調整が早くなっている面もあります。人手不足で人件費が上がっているのに、あえて価格を下げて競争に負けまいとしているのです。資本主義の後には、どんな社会が到来するのでしょうか。早晩、今の資本主義システムの代替案を出さなければ行き詰ってしまう時を迎えています。それが悲劇のストーリーの幕開けでなければいいのですが、GOOD LUCK(幸運を祈る)としか言いようはありません。