深蒸し茶

2015年7月 茶況_No.312

平成27年7月29日

茶園では日中の暑さを避けて朝夕の時間帯に茶園の管理を進めています。クワシロカイガラムシやチャトゲコナジラミなどの防除適期になっていますので、熱中症に注意しながら気温の低い時間帯に防除などの管理を進めています。生産の終了した二番茶は更新面積が多かったこととミル芽摘採と芽伸びの悪さが重なり、生産量は20%前後の減産になったとみられます。大幅減産が確実視された終盤は飲料関連業者が買い支える格好で相場は強み含みに変わり、最終盤の単価は前年より高値で幕引きとなりました。減産と相場低迷に高齢化が重なり、肥料を減らしたり、管理が手薄になったりと荒茶生産量が大きく減少する業界の予想が現実味を増してきました。相場低迷の最大の原因は需要と供給のバランスが崩れていることにあり、需要喚起が欠かせない案件です。静岡県も掛川市も消費を増やす政策を最優先する姿勢を打ち出していますが、心配なのは、30代・40代の子供がいる若者の離農です。お年寄りは生活費を最少にして、年金を補充すれば生活を維持できますが、小学生~高校生の子供さんを持つ若い生産者は将来設計を描くことができない現状です。他業界では人手不足もあって転職する若手農業者もあります。そして、新たな担い手として農業生産法人に注目が集まっています。

産地問屋は「水出し煎茶」などの夏場需要の販売促進に力を入れています。地元で開催される納涼祭やお開帳などの各種イベントで「ロックティー」を150円~200円で販売して冷茶のPRに努めています。ペットボトルよりおいしいと好評のようです。問屋間の産地間取引は棒茶・粉茶・秋冬番茶などのドリンク関連だけに限り動いています。産地問屋は秋口からの動きに期待して企画を練り、販促を進めます。

消費地では店頭で冷茶を接茶しながらハリオの「フィルターインボトル」やガラス急須「茶々丸」などの冷茶にむいた茶器のPRに努めています。特に「フィルターインボトル」は手軽に冷茶が作れることから若い主婦層に好評で、夏場対策の要にもなっています。先日の「ためしてガッテン」もすぐに販売増につながる効果はありませんでしたが、緑茶が見直される良いきっかけにはなりましたので、その効果も徐々にではありますが感じます。とにかく消費者目線を忘れないで、信頼されれば勝ち残れると頑張っているお店もあります。急須に変わる茶器の提案や「お店をきれいにする」をスローガンに掃除を徹底してより清潔にして好成績を上げているお店もあります。

緑茶に関する意識調査によりますと、急須で淹れた緑茶を好む割合は90%に達している一方、急須を持たない若い世代が増えている結果も浮き彫りになりました。「ほぼ毎日飲む」と回答した割合は50%を占めていますが、20代では20%とペットボトルやティーバッグなどで飲む傾向が強くなっています。若者も緑茶をファンは他の世代と同様にいますので若者の急須離れはあっても、お茶離れではないと論じる人もいます。

 

 

他山の石以て玉を攻むべし

 他人の誤った言行も、自分の修養の助けとなり、行いの参考となる。電気業界巨頭の東芝とシャープが経営の屋台骨を揺るがす課題に直面しています。両社とも日本の経済成長とともに巨大化し、超一流企業としても揺るぎない地位を築きました。白黒テレビ・洗濯機・冷蔵庫の「三種の神器」が各家庭にそろい始めたころは「光る光る東芝。回る回る東芝」のコマーシャルソングが毎日テレビで流されていました。東芝の不適切会計問題は、短期的な利益を追い求めるあまりに負の連鎖が断ち切れなかったことが要因のようです。株主が企業に求めるものは大きく変わり、目先の株価上昇や配当を重視する姿勢が強まりました。四半期決算が義務付けられ、経営者にとっては四半期ごとに利益を上げ続けることが至上命令となりました。こうした「当期利益至上主義」を背景に、歴代社長が陣頭指揮して決算書を取り繕っていた今回の事件は、日本を代表する大企業による組織的な利益水増し事件として社会に大きな衝撃を与えました。

「目の付けどころがシャープでしょ」はシャープのスローガンであり、時代に促した目付の鋭さは誰もが認めていました。しかし、シャープは主力事業である液晶部門からの転換の遅れや、長期にわたる経営悪化への判断ミスが重なり、経営危機に陥っています。経営危機に陥った最大の原因は市場変化に追随できない経営体質にあります。電気メーカーにとっては製品や技術が、最終的には成長を下支えするからです。シャープが再生できるかは、目の付けどころがシャープな製品を作り続けることができるかどうかの踏ん張りにかかっています。

家電量販最大手のヤマダ電気が地方や郊外を中心に37店を閉店します。かっては郊外に競うように大型店を出店してきた家電量販業界は曲り角にきました。ヤマダ電気の社長は、少子高齢化・ネット社会という変化に合わせてビジネスモデルを変えていかないと生き残れないと語っています。一方ネット通販市場の成長は続き、消費全体に占める割合も高まっています。ネット経由で購入する消費者は、10年前の3倍と増え続けています。

これらの例から見えるものは何でしょうか。「強い者、賢い者が生き残るのではない。唯一生き残るのは変化と環境に適応できる者である」は有名なダーウィンの進化論ですが、企業を取り巻く環境は大きく変わっており、そうした変化に対応できた企業は大きな業績の伸びを実現していますが、対応できない企業は、市場からの退出を迫られることになります。欲しい物の変化、買う場所の変化、健康志向、低価格志向、人口減など企業を取り巻く環境は変わり、競争が激しくなっています。他社との違いを打ち出せなければ果てしない同質競争に陥り、東芝・シャープ・ヤマダ電気等の轍を踏むことになります。私たちにとって今回の問題は、人事ではない気がします。いつ自分の身に起こるかもしれません。今回の事例を「他仙の石」として自戒を含めた迅速な対応が不可欠です。あとは経営者の流れを読む目とやる気次第です。