深蒸し茶

2015年8月 茶況_No.313

平成27年8月28日

生産農家は炎天下を避けて朝夕の比較的涼しい時間帯に防除や除草など夏期の管理作業を進めています。8月の前半は雨がなくて乾燥しきった茶園も8/17の雨が恵みの雨となり茶園は潤い活気を取り戻しました。しかし、それ以降台風の影響による雨が多過ぎるくらいで、8月は天候に振り回された月でした。茶園を巡回して先日の台風15号の影響や病害虫の発生を確認していますが、目立った被害はありません。9月下旬から始まる秋冬番茶に備えて情報交換を進め、準備をします。農水省が発表した2015年一番茶荒茶生産量は静岡48%、鹿児島28%、三重12%、京都6%、奈良4%、埼玉2%の順になっています。鹿児島10%減、奈良7%減など、ここ数年の平均に比べ15%程度少なく、10年前に比べますと30%減となっています。摘採時期の天候の影響もありますが、農家の高齢化と茶価低迷による離農で茶園面積が減っていることも影響しています。

産地問屋は仕上と発送作業を進めながら、秋口からの茶の需要増に期待しています。夏は工場内温度が40度超になることもありますので温度・湿度が高い日は仕上作業を中止して仕上数量を調整します。先日、インドの大農園経営者の方と、別の日に南アフリカ大使館の方が当社の工場見学にみえました。両国とも暑い国ですが工場内に入ると暑い暑いとおっしゃっていました・・・・。両国では緑茶製造を視野にいれているようです。世界的には日本食ブームにつれた緑茶ブームで将来は明るいようです。一番の魅力は紅茶よりも緑茶の方が高値が期待できるからのようです。日本では急須離れによるリーフ茶低迷が続き経営環境は年々厳しくなっています。明るいニュースとしては、冷茶の消費が定着しつつあり需要を下支えするようになってきたことです。

消費地では秋口からの販売計画を立てています。店頭での接茶も冷茶から温かいお茶に切り替わりました。お店に足を運んでもらうように「ピカピカ活動」を実践しているお店があります。店や売り場をピカピカにする。ピカピカの商品を並べる。そしてサービスもピカピカにする。「暑いのにようこそお越しくださいました」「○○さんお気をつけて」と顔見知りのお客さんを増やして名前で呼びます。そして、地域の人に安心して使ってもらえるように継続することを大切にしています。

世界同時株安のきっかけとなった上海株の急落は、世界経済は米中経済が軸になって動いていることを世界に知らしめました。中国経済は設備過剰問題に苦しんでいます。大型プロジェクトに着工したが、成果が出ないうちに財政危機に追い込まれています。日本の危機は何より消費の低迷です。生活必需品の値上(円安による原材料費の上昇が原因)が先行して、賃金の上昇が追いつかないために消費が減るのは当然です。加えてアベノミクスの限界を思わせる今回の株価の乱高下。消費を回復させるには雇用や所得環境を改善して安定した中間層を復活させることが責務です。消費が伸びないかぎり経済の好循環は生まれません。

 

 

 

ミ レ ニ ア ル ズ

 米国ではミレニアルズと呼ばれる若い世代の消費スタイルが小売りやサービス業に変革を迫っています。1980年~2000年代初めに生まれた世代を指しますが、中核は20代です。呼び名はミレニアム(千年紀・1000年単位の時代区分)に由来しているそうです。

10代からスマホを持ち、インターネットに慣れ親しんだ最初の世代でもあります。世代の特徴は「買物はネット」「健康志向」「保有より共有」といった行動規範があります。今までの世代とは消費行動が違うことから、対応できずに苦戦する企業も出始めています。幼少からネットやソーシャルディアに親しみ、ヘルシーな食事や旅行にはお金を使うけど、家や車を持つことには関心がない。米国で最初に打撃を受けたのはファーストフード業界でした。健康に良くないハンバーガーは食べない、炭酸飲料を飲まない。結果、米マクドナルドと米コカコーラは、売上が2年続けてのマイナスとなりました。家電量販店2位の「ラジオジャック」が経営破綻しましたが、家電のネット購入が広がり、若者が店に来なくなったことが原因です。車は買うより共有・レンタルで十分と考える20代も増えています。ですからミレニアルズのクルマ離れは自動車メーカーに共通する悩みです。今までは車の力強い走りを強調しましたが、若い世代には逆効果です。今は、おしゃれ感や燃費性能のよさを前面に訴えます。日本でもトヨタとパーク24が組んでカーシェアの実験を始めました。レンタカーと似ていますが、スマホで予約可能で15分単位の料金など、より短距離での利用が想定されています。借りた所と違う場所に返却できることも便利です。5人乗りの車を持っていても、実際の利用は1~2人がほとんどですし、運転範囲も6割が10k以内です。短い距離の需要が多い日本では最適のシステムとして、自動車各社も小型電気自動車(EV)でカーシェア・レンタルの可能性を探ります。10年後はミレニアルズが米国の消費の主役となるために、この世代をどう取り込むかは小売業やサービス業界の大きな課題です。ミレニアルズへの浸透度を企業業績予測のものさしにするケースも出てきました。米国ホテル業界はスマートフォンが鍵になり簡単にチェックインができる次世代型のサービスを打ち出しています。日本ではオリンピックを控えて全国の空家・空部屋を登録して貸し出す新サービスが動きだしています。炭酸飲料離れで苦しむコカコーラは、特別な缶飲料を新発売して若者に商品を手に取ってもらうようにしました。そしてイメージチェンジを訴えます。対照的にスポーツ用品のナイキは「健康的でおしゃれ」という戦略が成功して業績好調が続きます。レストランはチェーン店より、工場の素材を使ったヘルシーな地元の店を利用します。買物は「環境に配慮しているか」を一つの基準にしています。時代とともに世の中は常に変化しています。対応できなければ退場を迫られます。消費の新潮流「ミレニアルズ」は、5年後・10年後の消費の主流になる可能性がありますので、「ミレニアルズ」に対応できる戦略、そして「次の一手」を考えておく必要がありそうです。