深蒸し茶

2015年12月 茶況_No.316

平成27年12月23日

茶園では防寒対策を急ぐ生産者の姿が見られます。茶草場農法の実践農家は刈り取った茶草を茶の木の畝間に敷く作業を進めています。茶草確保のために山の急斜面で山草刈りの作業は重労働ですが、良質茶生産のためには欠かせない作業です。各地区で茶園共進会の審査が行われていますが、茶草を畝間に敷いて保温・保湿・防寒・肥料にしている茶園は今年も上位に入賞しています。茶園共進会は栽培管理の方法や土壌・茶樹の元気度を総合評価するわけですが、土づくり中心の茶園管理の苦労が報われる瞬間でもあります。

農林水産省が発表した農業の就業人口は5年前の前回調査に比べて20%減の209万人となり過去最低を更新しました。平均年齢は66歳ですが65歳以上が占める割合は63%と農業の担い手の減少と高齢化が一層深刻になっています。耕作放棄地は富山県の面積に匹敵する規模まで拡大しました。茶園も例外でなく耕作放棄地が増えています。国はお茶の価格低迷の主因とされる供給過多の状態を解消し、価格の下落を食い止めるために、茶を他の作物に転換した農家に補助金を出す新たな支援策をスタートさせました。

産地問屋は年末商戦の仕上発送作業を忙しく進めていますが、問屋間の荷動きはほとんど見られません。現在の在庫は過不足なく適正ということでしょうか。先日12/1(火)にフジテレビ系列で掛川市がガンによる死亡率が全国で一番低い街として紹介されました。「深蒸し掛川茶」には抗酸化作用のあるエピガロカテキンが多く含まれているのでガン予防に効果が期待できるとの内容でした。その反応は大きく量販店では「掛川茶」の売り切れが続出したとの話も聞かれました。お茶は軽減税率の対象となりました。8%が維持されますが、資材等を仕入する時、また販売した時は10%が適用されますので事務処理が大変煩雑になります。そのためシステムの変更が必要となり設備負担が重くのしかかります。わざわざ複雑な税務体制にする必要があるのか、経済界からは戸惑いの声も聞かれます。通産省に猛反発した本多宗一郎、国土交通省と戦ったヤマト運輸の小倉昌男。彼らのような気骨ある経済人は、今やいません。

消費地では歳暮商戦が一段落して「お年賀」と「帰省土産」に切り換えて販売促進を進めています。そのために顧客を引き付け、満足していただくために売り場の刷新に努めています。お客様に信頼してもらえなければ勝ち残れないと、古くなった売り場改革もできる範囲内で進めているお店もあります。8%と10%の商品が混在しますので、値札表示やレジなどその対応に苦慮します。一番恐れることは今まで以上に消費者のマインドが落ちることです。果たして来秋を同じように迎えられるのか、心配の種は尽きません。

 

年末年始発送のお知らせ

最終便 12月29日(火) ~ 初荷便 1月5日(火)

年末は荷物が多く翌日配達不可の場合もあります。12月28日(月)迄が安心です。

 

 

 

 2015年の世相を表す漢字一文字は「安」です。安保関連法成立や世界で頻発するテロや難民問題が人々を不安にさせたこと、マンションの杭工事偽装やタカタのエアーバッグ問題などで社会が安全安心を求めたこと、そして何と言っても安倍総理の「安」に集約されるのではないでしょうか。アベノミクスによってようやく出口が見えたように思えた日本経済ですが、先行きが不透明になってきました、いち早く「危機」から脱したアメリカはゼロ金利解除に踏み切りましたがこの時期の解除が正解なのかどうか不安視されています。最も影響を受ける国はブラジル・インドネシア・中国などの新興国です。10年前はBRICsに代表されるブラジル・ロシア・インド・中国が主役でした。新興国の成長に非常に期待が持てたからです。困ったことに現在は、そのBRICsが世界経済を牽引する力ではなく、世界経済のリスク要因となっていることです。米国では景気回復が続き、世界経済の牽引車となることが期待されていますが、BRICsが演じた役割を今回は米国が演じてくれるのでしょうか。アメリカに比べて日本の経済は弱く出口が見えない状態です。実体経済を良くするしかありませんが、構造改革、規制緩和が進んでいるようには見えません。巨額の財政赤字に加え、家庭や社会の崩壊、労働人口の減少など、日本国家のメルトダウンが始まっているのでは、とさえ感じます。安倍首相は「継続は力なり」とアベノミクスを続けるつもりですが、物価も成長率も目標値からどんどん遠ざかり長期衰退が止まらなくなるのではと国民に不安は広がります。アベノミクスは壁に突き当たり息切れしているとみる人もいます。アベノミクスによって企業収益は増えましたが、実質賃金が上がっていないために個人消費は低滞したままです。回復が鈍い理由は、1、労働者の約40%が非正規雇用 2、賃金が十分に伸びていない 3、円安に伴う食料品などの値上り 4、海外経済の影響による景況感の停滞、があげられます。将来への不安が解消されなければ少し位給料が上がっても消費には回らないということでしょう。パートやアルバイトなどの非正規労働者の賃金は急速に上昇していますが、これは大きな人件費負担増となり、それに対応するためには労働の生産性を相当に上げていかなければいけません。それに対応できない企業は退出を迫られることになります。そのために企業収益が増えても内部留保に重点を置くという流れです。賃金上昇が今後の日本経済の鍵を握っていますが、企業経営を揺さぶることにもなっています。安倍首相は緊急対策で最低賃金引き上げによる消費喚起を図りたいのですが、賃金の上昇によって雇えなくなる企業も出て失業を生むのではとの指摘もあります。地域に産業と雇用を作り出す政策を急がなければいけません。そのためには将来を見据えた付加価値の創造と新しい産業の創出が大きな課題です。

トヨタは米国のシリコンバレーに人工知能分野の新会社を設立すると発表しました。

投資額は1200億円です。自動運転車をはじめ、自動車以外の乗り物や人工知能ロボットの研究開発に当たるそうです。トヨタが米国のシリコンバレーで自動車以外の人工知能分野に進出するのですから、愛知県経済の将来を大きく左右する危機でもあります。新たな一歩のために何をするのか、すればいいのか、長期ビジョンを実現する力が必要です。今年の一文字「安」が来年は「暗」に変わらないように願うばかりです。