深蒸し茶

2015年11月 茶況_No.315

平成27年11月25日

茶草場農法を実践している生産者は、刈り取った山草の乾燥作業を進め、細く切断してから茶園の畝間に敷いています。乾燥・切断した草を茶園に敷くことにより雑草が生えず、保湿・保温と有機質肥料にも役立ちますので、美味しいお茶づくりには欠かせない作業です。農林水産省が分析したTPPによる影響は、TPP参加国からの輸入量は国内生産量の0.7%とごくわずかの状況から、特段の影響は見込みがたいが、さらなる競争力の強化が必要と報告されました。

産地問屋は歳暮商戦に向け、仕上・出荷作業を進めていますが、目立った荷動きには至っていません。各地区で品評会と入札販売会が開催されていますが、どこの入札会場も昨年より活気があり、昨年を上回る成績です。とくに上級茶の人気が高いようです。努力して上級茶を販売している数社の茶商が元気よく買います。数十社が並通に買い、数百社は、元気が出ない状況です。問屋間の格差もかなり広がっているように感じられました。

第51回静岡茶品評会 入札結果

部 門 出 品 点 数 落 札 率 落 札 価 格
鶴印 4000円 81(89)点 56%(30%) 4503円(4542円)
亀印 2000円 59(65)点 56%(35%) 2323円(2480円)

( )内は昨年の数字です。

静岡茶入札販売会は85社(80社)が参加し落札率は56%と前年の32%を大幅に上回りました。落札総額も前年比13%の1780万円という結果でした。

 

消費地では「お歳暮商戦」が始まっています。親しい相手にこだわりのギフトを贈る習慣が定着していますので、各店ともに自信の企画商品を店頭に揃え、お客様をお迎えします。流通の花形だった総合スーパーが業績不振の長期化で、大規模な閉鎖に踏み切る方針を表明しています。唯一、閉鎖しないで再生にこだわるイオンは「食の強化」と「衣料の絞り込み」に特化して再生を計ります。そして現場に権限を移し、全ての店をピカピカにする売り場の改造に取り組んでいます。「買いやすくなり、来るのが楽しみになった」と評判は上々で、改装以降は前年水準を大きく上回る見込みです。

ある取引先の社長さんが「これから本格化する年末年始の商戦を堅調な業績を維持できるかは、既存店の活性化と同時に地域で支持されるブランド力をいかに維持していくのか。そのためにも売り手よし、買い手よし、世間よしの三方よしを終わりなく磨いていく」とおっしゃいました。

秋田市の肥料メーカー「太平物産」が製造し、JA全農が販売していた成分偽装の肥料が東日本11県に供給されていましたが、弊社で取引のある有機荒茶生産農家2工場については「太平物産」の肥料は使用していないことを確認いたしましたのでご報告いたします。

 

 

 

企業の社会的責任(CSR )

企業の不正行為が、多数発生したことによりCSRやコンプライアンス(法令遵守)、企業倫理が社会から強く求められています。コーポレートガバナンス(企業統治)など、企業が組織をまとめて統治する体制や方法までもが問われるようになりました。

独自動車大手フォルクスワーゲン(VW)の排ガス規制逃れ問題は自動車業界における史上最大級のスキャンダルに発展したために販売台数が急激し、顧客や販売店をつなぎ止めようと大幅な値引きに踏み切りました。値引きを続ければ経営体力は奪われます。失われたブランドの信用を取り戻すのは容易ではありません。自動車部品大手タカタのエアバッグ欠陥問題は、アメリカにおいて240億円の制裁金を課せられました。これを受けてホンダ・トヨタ・富士重工・マツダ各社がタカタ製エアバッグの使用停止を表明しました。タカタは主力取引先のほとんどを失うことになり、立ち直りは難しい状況です。横浜市のマンション傾斜問題では販売元の三井不動産、施工主の三井住友建設、くい打ち工事を請け負った旭化成建材のブランドイメージが大きく揺らぎ経営に悪影響が出ています。これからの誠意ある対応により信頼回復に努めますが、旭化成建材の杭工事のデータ偽装が発覚して、今まで築いた信用は一気に急落しました。国土交通省の調査により、宅建業法・建設業法に違反が指摘されますと営業停止等の処分が下されます。不安は全国へ拡大し、問題のあったマンションや物件についての補償や建て替えの費用が膨らむと会社存続そのものが危ぶまれます。

東芝の不正会計問題では虚偽記載の疑いで課徴金を科せられる見通しとなり、経営陣を相手取り、損害賠償を求める訴訟問題に発展しました。9月の中間決算は900億円の赤字と発表され株価は急落しました。これから2300人のリストラと配置転換を実施して経営の立て直しと再出発を図りますが、失った信頼を取り戻す道は険しいままです。金融庁は東芝の会計監査を担当し、不正の見抜けなかった監査法人に対しても業務改善命令などの行政処分を行います。秋田市の肥料メーカー「太平物産」が製造し、JA全農が販売した肥料の有機原料配合割合などの表示が偽装されていた問題で「全農マーク」を信頼して使っていた農家から、全農はどう責任を取るのか問い詰められています。JA全農青森は「誠心誠意、今回の問題に対応していく」と生産者と消費者に陳謝しましたが、損害については価格差を補填する方向で協議しています。偽装した太平物産の存続はまず無理でしょう。

今回の度重なる企業の不正行為の発生によりCSRが強く意識されるようになりました。利害関係者に対して誠心誠意、説明責任を果たし、会社の透明性を高め、適切な企業統治と法令遵守を徹底しなければ未来への存続はありえません。過去、不誠実な対応から不信感と信頼度の低下を招き、分譲マンションのヒューザー、船場吉兆、雪印食品・・・など消えていった企業は数多くあります。消えないまでも社会的責任を果たしていないと判断されれば売上や株価は極端に下落します。企業は利益を追求するだけでなく、法律の遵守、環境への配慮、社会貢献などが求められ、企業の社会的責任(CSR)が問われるようになりました。江戸時代の思想家、石田梅岩の「実の商人は先も立つ、我も立つことを思うなり」や近江商人の家訓「売り手よし、買い手よし、世間よし」の三方よしの精神を学び直す必要がありそうです。