深蒸し茶

2015年10月 茶況_No.314

平成27年10月9日

茶園では秋冬番茶の摘採がピークを過ぎて終盤に入りました。秋祭りが始まる今週末までで、ほとんどの地域が終了する見通しです。秋冬番茶は主にドリンク飲料の原料になりますが、下物の玄米茶やほうじ茶の原料としての需要もあります。今年の夏は早くから涼しくなったために緑茶飲料の売れ足が悪かったこと、秋冬番茶の昨年の繰越し在庫があることからドリンク関連業者の積極的な買いは見られませんでした。よって昨年より若干の弱相場で終始しました。生産量は例年より若干の減産予想です。秋冬番茶の摘採が終了した茶園では、本整枝の作業が始まりました。TPP交渉で日本を含む参加12ヵ国が「茶」の関税撤廃で合意しました。お米や酪農、牛肉・豚肉の畜産農家にとっては大きな影響が出そうですが、お茶については不透明としながらも、それほど影響が出るとは考えにくいというのが大方の見方です。逆に関税がゼロになれば価格競争が上がり、茶業界にとっては輸出拡大の追い風となりそうだとの声も聞かれます。政府は50億円だった輸出額を2020年までに150億円にする目標を掲げています。

産地問屋は秋冬番茶の仕入を終了する問屋が増え、斡旋業者も販売先に苦慮しているようです。ここ数日で秋らしい天候になり、出荷作業が徐々に上向いてきました。これからも各地区組合で品評会と入札会が開催されます。入札会では手持ち在庫が少なければ積極的に入札しますし、手持ちの在庫が多ければ入札を控えます。ですから入札結果によって現在の状況が把握できます。凶と出るか吉と出るか入札結果に注目しています。先日、静岡茶市場で開催された69回全国茶品評会の入札結果は落札単価が前年より若干高くなっています。外国人による爆買いと富裕層に向けた商品構成により高級茶が売れているお店があるということです。茶業振興議員連盟は茶の需要拡大や長引く価格低迷に苦しむ農家支援を柱とする決議をまとめました。需要と供給のバランスが崩れていることが価格低迷の主因とみて、産地ごとに流通状況、価格動向の把握に努めます。また、茶は国民的飲料との位置付けから軽減税率の適用を求めます。

消費地では「秋の売出し」の準備と「歳暮商戦」の企画を進めています。商品構成もサービスも地域の人に安心して使ってもらえるように地域密着の姿勢を徹底します。先日発表された全国百貨店売上高は訪日外国人による爆買いにより6ヵ月連続で前年を上回りました。全国スーパーと主要コンビニも6ヵ月連続で前年実績を上回りました。ただ天候不順による野菜の高騰や円安による輸入品の価格高騰が売上を押し上げた面があり、消費が回復しているとは思えないとの見方もあります。取引先のある社長さんが「地元目線の運営で顧客の安心感を得る経営を続け、信頼してもらえれば勝ち残れる」との言葉が印象的でした。

 

 

 

総合スーパー 大閉店時代

 国内に約1850ある総合スーパー(GMS)に大量閉店の波が押し寄せています。西友は3月以降、全店舗の1割に当たる27店を閉店しました。イトーヨーカ堂は2020年までに2割に当たる40店舗を閉める方針です。ユニーも3~5年間に2割に当たる最大50店を閉鎖する方向で検討に入りました。流通大手が相次ぎ不採算店の閉鎖を検討していることを公表したことにより、業態そのものが曲がり角にあることを如実に示しました。食料品から衣料・雑貨・家具まで、すべての商品を取り揃えて流通をリードしてきた総合スーパーが「大閉店時代」に突入するのです。総合スーパーを取り巻く外部環境は、この10年間で大きく様変わりしました。「ユニクロ」や「ニトリ」や「ヤマダ電機」などの大型専門店に客を奪われ、食品でもコンビニやドラッグストアと競争するようになったからです。インターネットの普及により「アマゾン」や「楽天」などのネット専門業者が数多く台頭してきたことも、大きな時代の変化です。かっては、一つの店舗ですべてそろう品揃えにより顧客を囲い込んできました。しかし、本部が一括で商品開発して全国の店に供給する仕組みは画一的な売り場となり、それぞれの分野に強みを持つ大型専門店への顧客の流出に歯止めがかからなくなったのです。多様化する消費者のニーズに応えきれなくなり。客離れの悪循環が続いたということです。これからも大型専門店やコンビニやネット販売の勢力は増すばかりで、総合スーパーが消費の舞台から姿を消すのは避けられない見通しです。消費者から「売り場に魅力がない。衣料品を買おうと思ったらユニクロに行く。食料品は家の近くの食品スーパーの方が充実している」や「ここが閉店しても、他にお店はたくさんあるので困らない」といった声も聞かれますので、旧来の画一的なイメージからの転換を急ぎます。

同じように米国では「大型ショッピングモール」が苦戦しています。消費大国アメリカを象徴するショッピングモール(複合商業施設)が登場したのは1960年代でした。休日に家族そろって車で出かけ、モール内で終日を過ごすスタイルが浸透しました。中核店舗として「JCペニー」や「メーシーズ」等の大手百貨店が入り、モール内には人気専門店が軒を連ねて大賑いでした。あれから55年たち時代は大きく変わりました。買い物をネットで済ませる消費者が急増し、実店舗へ行く回数が減ったために、ショッピングモールから中核店舗となる大手百貨店が撤退するようになりました。客が減ったモールから人気専門店も撤退に追い込まれ、さらなる痛手となりました。不振モールが多い中、富裕層向けのモールは堅調です。背景には日本も米国も中間層の疲弊があります。株を多く持っ富裕層は株高の恩恵を受けて購買力が高まっていますが、給与が上がらない中間層はディスカウント店や100円ショップを利用してショッピングモール離れは、ますます加速しています。

地域特性に合致した品揃えや、地域の実情に応じた店づくりを進めないと、この先、各地に大きな「空き館」だけを残すことになりそうです。買い手の立場での新たな成長モデルを見つけることができるか、日本でも米国でも「総合スーパー」も「ショッピングモール」も正念場を迎えています。