深蒸し茶

2012年4月 茶況_No.276

平成24年4月17日

茶園では一番茶前の大事な時期を迎え、芽伸びを確認しながら茶園管理に努めています。また茶工場では工場内の清掃や機械の整備を続けています。ここ数回の適度な降雨と好天に恵まれて茶園は一気に色づき始めました。3月の気温と地温が低温で推移したことから新芽の生育は平年よりはやや遅れ気味ですが、昨年並みの4/28頃からの出回りになりそうです。生育が遅れている分、新芽が霜害を受けにくく冬眠も長かったので「おいしい新茶」が期待されます。

静岡茶市場(静岡市)の初取引は23日(月)・掛川茶市場(掛川市)の初取引は27日(金)に決まりました。県内外の消費者に静岡茶・掛川茶の安心安全をPRする機会とするためにも上場される新茶はすべて放射性物質検査を実施します。4/28からが本格的な仕入になりますが、最盛期は連休後半の5月5日~7日頃になりそうです。現在出回り始めている鹿児島県のお茶は前年比15~20%高で取引されているようです。茶の主産地16府県の2011年産の荒茶生産量は82,100トン。静岡県産40%、鹿児島県29%、三重県9%、他22%の順でした。

産地問屋は茶園を見て回り、茶工場と品質や数量などの打ち合わせをしています。特に今年は5月1日が「八十八夜」になりますので、摘採が少し遅れますと数量の確保がかなり厳しくなるのではと懸念します。各問屋は変化対応力が基本、市場の変化を早く的確に見通す先見性と変化する市場に対応する柔軟性を身につけて会社一丸で変化に対応しなければと危機感に満ちています。そのためにも農商工連携による加工商品開発の可能性を探っています。先日、当社へ中国の国営テレビが撮影取材に来ました。中国では農家で製造した荒茶がそのまま市場に出回る場合が多く、日本の再生加工・火入工程はめずらしいらしくて熱心に取材を行っていきました。番組をきっかけに中国でも健康ブームと「深蒸し掛川茶」を飲むきっかけになってくれればと期待します。

消費地では予約新茶の販促や新茶セールの準備を進めながら仕入計画・販売計画を練っています。消費者は品質と価格を吟味して「お値打ち感」を求める傾向が強まっていますので、品質の追及と同時に自店の強みを発揮できるような対応を考えています。新茶が遅れている分、養分を蓄えておいしい新茶が出来ますので薦める言葉にも力が入ります。

4月14日に新東名の御殿場から三ケ日間が開通しました。新東名開通で交通アクセスが良くなる地域では観光客誘致の動きが活発化しています。観光客を呼び込む最大のチャンスと沿線の人達は期待を寄せています。

 

生産者の皆さまへ

  1. 掛川茶市場の初取引 4月27日(金)に決定しました。
    当社仕入は4月28日(土) 朝5時より当社拝見場にて行います。
  2. 機械整備時の油臭・異臭、工場清掃時の異物混入には細心の注意をお願いします。

 

放射性物質の新基準値について

 

食品に含まれる放射性セシウムを規制する新基準値が大幅に厳格化され、4月1日から新基準値の適用がスタートしました。静岡県内の業者は安全安心を主眼に新茶のチェックを徹底していきます。行政も検査体制をさらに拡充して、きめ細かく対応するように打ち合わせを重ねて、不備のないよう慎重に対応します。

新基準値は魚や肉、野菜など「一般食品」は100ベクレル/㎏、「乳児用食品」と「牛乳」は50ベクレル/㎏、「飲用水」は10ベクレル/㎏、お茶は茶葉から抽出した液体で飲用水と同じ10ベクレル/㎏を適用します。なお、お茶をそのまま食べる場合は「一般食品」の100ベクレル/㎏が適用されます。

試験方法は茶葉10gを300㏄、90℃のお湯に60秒間浸出してから、40メッシュ相当のふるいでろ過した後に浸出液を測定する方法です。

茶の場合、放射性セシウムは土壌ではなく、古葉に付着したものが葉の表面から吸収されて新芽に移動すると考えられています。静岡県では今後、県内19産地で一番茶・二番茶・秋冬番茶を季節ごとに新基準に基づき検査を実施しますが、検査品目は昨年より47増やして162検査品目を計画しています。静岡茶に対する不安を払拭し「静岡茶ブランド」の信頼回復を目指して安全安心対策を徹底するためです。

4月12日にJA静岡では市内5ヶ所の茶園で新芽を検査しましたが、すべて飲用茶で1ベクレル/㎏未満の検出限界未満が公表されました。新茶取引前の早い段階で安全性を確認するためにハウス栽培を行っており、今後は路地栽培を含めて順次検査を進めていきます。

掛川では新茶が始まる前に各地区の生葉であらかじめ検査を実施し、新茶が始まりましたら工場単位で一番茶の最初に製造された荒茶から抽出した飲用液で検査を実施します。

大手量販店の中には独自基準を設けているところもありますが、かえって風評被害を招きかねないと懐疑的な見方をしていますし、混乱を招くのではとの声も聞かれます。

今回の決定内容の周知を徹底して、業界一丸で「静岡ブランド」の信頼回復と消費回復に取り組み静岡のお茶はすべて安心と言い切れる状態で初取引を迎えたいと願っています。