深蒸し茶

2012年12月 茶況_No.284

平成24年12月17日

冷え込みが厳しくなった茶園では、茶園を巡回して、敷き草や防風垣などの防寒対策などの冬の管理作業を進めている生産農家の姿が見られます。掛川市の山間地域で主に栽培している茶農家は、冬の間に専用の茶草場でススキやササなどの山草を刈り取って乾燥させ、機械で5㎝程度に切断した「茶草」を茶畑の畝間に敷いています。その掛川の山間地独特の茶草場農法は「世界農業遺産」登録を目指しています。茶草を敷くことで保温、保湿ができて肥料の定着度もよくなりますので、元気な樹勢の茶の木が育ちます。「畑はうそをつかない。手を抜くとそのツケは必ずくる。」とこまめに畑に入り、日々の土づくりに汗を流します。巡回の終わった夜間には、組合の集会場で今季の反省会を開き、来季の生産計画や見通しを立てますが、廃業する農家や今季で閉鎖する茶工場もあったりして、明るい話題は聞かれません。

産地問屋は年末商戦のヤマ場を迎え、仕上げと発送作業の追い込みに入りました。今冬はカゼや肺炎やノロウイルスなどが流行したために予防のためと思われる緑茶の家庭内自家消費の動きが感じられます。緑茶は歴史的にも薬として使われていた経緯もありますので、業界でもっともっとアピールする必要があります。活発な問屋間の荷動きはありませんが、荒茶3,000円以上と1,000円代の一番茶に若干の荷動きが見られます。

今回の総選挙では自民党が294議席と予想どおりの大勝という結果でした。自民党の公約は「日本経済を取り戻す。」と3%以上の経済成長を重点政策に盛り込んでいます。国民が一番期待することは「景気と雇用の回復」ですが、公約どおりに進むのか、期待外れに終わるのか、これからが注目されます。新政権が中国の新指導部と協調して、日中関係を和らげ、経済活動が正常化すれば名目3%以上の経済成長は可能でしょうが、尖閣諸島の問題が再燃しますと景況感も大幅に悪化する可能性があります。新年こそは経済状況の回復を最重要課題にして、現実を直視した問題解決が望まれます。政権が変わり、明るく明日を語れる日は来るのでしょうか。

消費地で歳暮商戦が一段落して、帰省土産と年賀用の販売に努めています。「選挙期間中は、ギフト商品などの動きが鈍くなる。」流通業界には、こんなジンクスがあります。ただでさえ個人消費が失速気味なのに、今年の年末はより厳しい消費展開となったようです。食品専門のスーパーやインターネット通販が台頭する中、いかにして自分の店に足を運んでもらえるのか。取引先のあるお店は「『来てよかった』と思ってもらえるような接客がまだまだできていない。」と反省しきりでした。商品知識に裏打ちされた信頼感を築くために、焦らず根気よく接客を続けていきますとのことでした。お店の近所でも、お店は知っているが行ったことがない人が6割以上にのぼるそうで、来店のきっかけをつかもうと一軒一軒の訪問を実施しているお店もあります。

ある社長は「選ばれる理由を打ち出さなければ、淘汰の道を歩まざるを得ない」との厳しいお言葉でした。

 

年末年始配送のお知らせ

最終便 12月28日(金)~ 初荷便 1月5日(土)

 

ルー

 

大型店を商品のショールームのように利用して、実際買うのは値段の安いネット通販を利用する現象を「ショールーミング」と言います。ショールーミング派は「商品価格」と「時間節約」重視ですので、価格にも時間にも「損したくない」姿勢が顕著です。ショールーミング行動をとる人の比率が高いのは家電・IT製品で24%、ファッションが11%と続きます。米国では家電量販店や書店大手チェーン店が軒並み経営不振に陥りました。店頭での品定めだけして、ネットで安く買う動きが広がっているためです。ある幹部は「我々の店舗がショールーム化している事実に気付くのが遅すぎた」と反省していますが、すでに手遅れの感もあります。

最も大きい変化はモバイルの台頭です。消費者はスマートフォン(高機能携帯電話)を情報収集やショッピングなどの総合的なツールとして活用しています。お店では商品を手に取り、質感やサイズや価格をチェックして、欲しい商品を検討するだけ。買うのは価格の安いネット通販で、という消費者が急増しているのです。店舗で商品のバーコードを読み取るだけで、その場で簡単に価格の比較もできますので、一番安いところから購入します。ヤマダ電器など大型家電量販店は対抗策として、店舗販売とネット販売を併用しています。また、最近発売された「アマゾン・キンドル」を店舗で売らないことを、大手家電量販店数社で協議して、決めました。キンドル普及を後押しすることは、アマゾン通販サイトなどへの顧客流出につながると判断したからです。

テレビ通販やカタログ通販で知られる「日本直販」が民事再生法の適用を申請しました。ここ数年、ネット通販の拡大による業界の競争激化で売り上げが減少し、消費者のニーズの変化に対応できなかったことが大きな原因です。通販もテレビ通販・カタログ通販からネット通販へ、時代は大きく変化しました。昔は街の商店街、食料品店などで生活必需品のすべてを揃えました。車社会に入り、顧客は郊外の大型スーパーに流れました。その後、特定の商品の品揃えと低価格で圧倒的な規模をもつカテゴリーキラーと呼ばれる大型専門店が台頭してきました。消費者の行動範囲が広がる中で、多くの客を集め、大型スーパーの顧客を奪っていきます。大型専門店の武器は他の業態が追従できないほどの品揃えと低価格です。しかし、どんな大型店であっても、ネット通販が提供する規模の品数と価格には対抗できません。バーチャルな店舗という武器を生かして、実物写真を掲載することにより、どんな大型店舗に収めることのできる品数よりも多く、より低価格に表示することが可能だからです。究極のカテゴリーキラーともいえます。カテゴリーキラーの武器が店舗の大型化であったがゆえに、それ以上に大型の店舗を展開できるネット通販は脅威になります。しかし、実店舗で買い物をすれば、その場で持って帰ることができる、あるいは、その日に自宅で受け取ることができるという強みがありました。そこで、ネット通販も矢継ぎ早に新しい対策を打ち出しました。アスクルは社名どおり「明日来る」ことで急成長しましたが、米アマゾンは「当日お急ぎ便」なるサービスで「今日来る」と他社を寄せ付けない競争力を発揮しているのです。大型スーパーから大型専門店へ、そしてネット通販へと時代は大きく変化しています。変化に対応できないお店は市場から退場を迫られる厳しい時代の到来ですが、地球環境を声高に叫ぶ時代に、化粧品1個を配達する矛盾を感じるのは私だけでしょうか。