深蒸し茶

2012年11月 茶況_No.283

平成24年11月22日

本格的な冷え込みが到来して、茶園では敷草や防風垣などの防寒対策を進めています。伝統の「茶草場農法」を継承している掛川の東山地区では、茶園に敷くためのススキやササなどの敷き草を刈る作業をしています。草刈り場は傾斜地が多いため危険が伴いますし、非常に過酷な作業となります。刈り取られた山草は一度枯らしてから後、肥料の施肥効率を上げるため、土壌に混ざりやすくするために専用のカッターで細かく切断します。12月に入ると茶園の中へ、手作業で敷き詰めていきます。この作業をすることにより、有機物が多く含まれた元気な土壌が育ちます。また、地温の維持や土を乾燥から守る役目も果たします。

この「茶草場農法」が生物の保全に大きく貢献しているということから注目が集まり、FAOの「世界農業遺産」に登録しようという協議会が設立されました。昔から行われている伝統農法の山草刈りにより、日光が差し込み、生物の生命が守られていることが認められたからです。秋の七草がすべてそろう場所は稀ですが、東山地区では全ての七草が見つかる豊かな自然環境が整備されています。

農水省がまとめた今年の茶栽培面は以下のとおりです。全国45,900haの内、静岡県18,500ha(40%)、鹿児島県8,680ha(19%)、三重県3,170ha(7%)、京都・福岡・熊本県1,580ha(各3.5%)。茶価低迷や高齢化に伴う耕作放棄などの要因により全国で300haが減少しました。

産地問屋は歳末商戦に向けて、仕上げ・発送作業を忙しく進めています。同時にギフト需要の営業を強化しています。各地区で開催された品評会出品茶の入札会は、どこも盛況のうちに終了しました。上級茶の在庫が手薄なこと、冬のギフト需要の盛り上がりに期待してのことのようですが、景気の減速傾向で需要が頭打ちの中、各産地問屋は独自性で消費を喚起しようと懸命です。

12/4(火)の公示を控え、町中は選挙モードに入って来ました。ニュースも選挙関連一色です。今回は野田首相による突然の解散表明だけに、当社も「当煎茶」の対応に追われています。すでに日本経済新聞とあさひテレビの取材を受けました。缶飲料の「当煎茶」は11/末製造の目途が立ちましたので、12/4(火)の出陣式には何とか間に合いそうです。

消費地では歳暮商戦が本格化してきています。消費者の節約傾向が強まり、各お店はオリジナル商品や新企画商品を拡充して臨みます。消費者は価格にとても敏感になっていますので、上質な商品と細やかな接客が重要です。競合他社と差別化を図り、前年売り上げの確保が各お店の当面の目標です。そのためには、消費者が今何を感じ、何を求めているのかという、深い深い洞察力が求められています。

今年も数々の賞を受賞しました。

 第42 回 東京都優良茶品評会  優秀賞 一等三席

 第48 回 静岡茶品評会     静岡県知事賞 一等三席

 第35 回 掛川茶品評会     掛川市長賞 一等一席

 世界緑茶コンテスト2012    金賞

 

売りにすべきは「品質」や「こだわり」

 

ほんものの力を強化するためのキーワード「絞る」のは次の3つだ。

①商品を絞る。シンボル(核)となる商品やサービスの形成、シンボルに磨きをかけること、何を売って何を売らないかの明確な線引きが欠かせない。シンボル商品を形成したら、その商品の利用シーンや生活シーンに合わせて品揃えを充実させていくのである。商品間に調和があり、品揃え全体にハーモニーがあることがキーポイントになる。②想定ターゲットを絞る。全方位型の販売においては大型店が圧倒的に有利である。小売店には「この顧客だけは、絶対に満足させることができる」といった想定ターゲットの絞り込みが必要だ。具体的な顧客の顔を思い浮かべ、想像力を駆使して何をすべきかを考えるのである。③知恵を絞る。21世紀のマーケティング戦略は「知恵」と「創意工夫」の勝負である。「規模と資金」が力の時代はすでに終焉した。「知恵と創意工夫」の勝負は小売店にとっても十分勝算がある。大型店は「絞る」ことは難しい。「絞る」を武器にできるのは小売店なのである。長崎を代表する観光名所のひとつ「眼鏡橋」の周りには、いつもたくさんの観光客がいる。全体が6㎞に満たない中島川には実は20もの橋が架かっている。眼鏡橋と同じく、どれも由緒ある橋である。だが、眼鏡橋以外の19の橋には、ほとんど人が集まっていない。観光客を集めているのは唯一、眼鏡橋だけである。 なぜだろう? 答えは単純だ。19の橋はすべて「一連のアーチ」だが、眼鏡橋だけが「二連のアーチ」。つまり橋の真ん中に柱がある。この柱の有無が、観光客を集めるか否かのポイントになっているのである。真ん中の柱の面積は全体の2割位だろう。しかし、この「2割の違いが大きな個性」になる。たとえば「高級スーパー」と言われるスーパーマーケットをみても、取扱商品の8割は普通のスーパーと変わらない。しかしながら、ワイン・チーズ・調味料の品揃えなど、明らかに2割ほどが普通のスーパーとは異なっているのである。「個性化」とは「特殊化」ではない。10割違う必要はない。2割の個性化であれば十分可能である。ポイントは2割の違いが眼鏡橋の真ん中の柱のように「顧客の目に明確に見えている」ことである。顧客に認識されない個性は個性ではない。伝わらない個性は「ひとりよがり」だ。消費者に個性的であると認識されている中小小売店ほど顧客満足度が高い。さて、あなたの店の個性は、顧客の目にしっかりと見えているだろうか。

小さな企業が売りにすべきは「品質」や「こだわり」である。しかし、それらは消費者の目には見えにくい。「最高の品質」「最高の美味しさ」といっても、消費者にとっては不確実なのである。消費者は、目に見えないものに対しては不安を感じる。では、その不安を解消してもらうには、どうすればよいのだろうか。それは、品質の「手がかり」を消費者に提供することである。人は目に見えるものを通じて、目に見えない「品質」や「こだわり」を推測する。消費者は品質を「見たい」のである。見た目が良ければ品質も良いと判断されやすい。逆に、見た目に魅力がないと品質も魅力がないと判断されてしまう。地元の商店街の店を利用していない理由を1000人の消費者に聞いたところ、圧倒的に多い回答が「外から見た雰囲気」が約半分にのぼります。第2位の「利用してみたが、気に入らなかった」の2倍以上である。

消費者は、利用してから企業の品質を判断するのではなく、利用する前に「見た目の印象」で利用するか否かを決めてしまうということだ。では、消費者は何を「手がかり」にするのか。目に入るものすべてが「品質」の手がかりになりうるといっても過言ではない。

商品に関しては「パッケージ」「デザイン」「商品名」「しおり」「ポスター」「POP(販促広告)」などをあげることができるだろう。お店全体でみると「店舗の外観」「店名・看板」「店舗内装」「カタログ」などがある。非常に重要性を増しているのが「ウェブサイト」である。トップページのイメージや写真が品質を判断する大切な「手がかり」になる。検索してみても、ウェブサイトがみ見つからなかったり、住所と電話番号が載ったページしか出てこなければ、イメージダウンにつながってしまう。さらには従業員も品質の重要な手がりとなる。たとえば「販売員の制服」「販売員の振る舞い」などである。「顧客」さえも重要な手がかりだ。店内に顧客がたくさんいれば、それがプラスの手がかりになる。顧客の行列ができていれば、人気のバロメーターになり、顧客が顧客を呼ぶメカニズムが期待できる。手がかりに関して、ひとつ大切なポイントを付け加えよう。それは、「統一感」「ハーモニー」の重要性である。たとえば「現代的なイメージ」の店舗外観であれば、看板も、ポスターも、パッケージも、ホームページも「現代的なイメージ」で統一すべきである。現代的なポスターにひかれて、ホームページを見てみたら伝統的で古風なイメージだったら消費者はとまどってしまうだろう。

「3本の柱」の2つめの柱は「きずな力」である。前にも述べたとおり「中小規模店にひかれる人々」はお店とのきずなや、地域とのきずなを重視する消費者層である。数の追及では、規模の大きな企業が圧倒的に優位であるから、顧客との「きずなの強さ」の追及においては、逆に規模の小ささが強みにもなり得る。顧客との関係を深化させ、顧客一人ひとりとの「きずな」を強化していくことである。顧客に「また来たい」「また買いたい」と言ってもらえるお店になることだ。

経済が成熟し、需要が飽和した今日、重視されるのは、顧客一人ひとりとの「関係性の深化」である。関係性(きずな)を重視するマーケティングにおいては「売ってからが始まり」という発想が欠かせない。一度買ってくれた顧客に、将来的にも顧客でい続けてもらうことが重要になってくる。「多くの人に買ってもらう」という発想から「繰り返し買ってもらう」という発想への転換が求められる。とはいえ今日、顧客は放っておけば、どんどん減少してしまう。一度流出した顧客を取り戻すのは至難の業だ。顧客との「きずな」を強化し、顧客の流出率をいかに減少させるのかが、マーケティングのキーポイントになる。リピート比率が高い店ほど、既存顧客との「きずな」を大切にしているお店ほど、業況が良い。 それでは、いかに顧客とのきずなを強化し、顧客維持率を高めていくのか。顧客維持の基本は、今いる顧客の「満足度」を高めることである。満足している顧客ほどリピート意向は高くなっている。逆に不満があれば、利用するお店を変えてしまう。顧客満足度を高めるためには、顧客に満足をもたらす要因を把握することが不可欠である。顧客の満足につながっているのは、商品の品質なのか、価格なのか、サービスなのか、接客なのか、店の雰囲気なのか、それとも他の理由なのかを把握することである。そして、高い影響を与えている項目を重視したマーケティングを行うことによって満足度の向上が期待できる。顧客満足度は定期的に調査をして、常に向上を目指すことが大切だろう。

どんなにすばらしい商品、個性的な商品を有していても、顧客がそれを知らなければ、マーケティングはうまくいかない。積極的に顧客とのコミュニケーションを行い、情報を確実に伝達していくことが欠かせない。次回は「3本の柱」の3つめの柱「コミュニケーション力」について述べる。

「小が大を超えるマーケティングの法則」 岩崎邦彦著 より抜粋

 

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 自らの頭で考え、自らが進化していく

 

小売店の経営者に聞くと、ほとんどの人が自社の商品に「こだわり」をもっている。だが、消費者にそれを確認してみると、お店の「こだわり」が伝わっていないケースがほとんどだ。売り手と買い手の間に情報のギャップが存在するのである。伝わらない「こだわり」は「ひとりよがり」にすぎない。

「マニュアル的で温かさがない」「指導された言葉は発するが、心がこもっていない」これは大型量販店に対する消費者の声だ。セルフサービスを主体とする大型店は、人的コミュニケーションを武器にすることは難しい。大型店に求めているのは「品揃えの量」であったり「価格の安さ」などだ。顧客とのきめこまかい人的コミュニケーションは、元来、小さな企業が得意としていた分野である。小売店は、顧客数の少なさを逆手にとり、それをメリットに変えることができる。顧客に対するきめこまかなアドバイスや一人ひとりの顧客に合わせた提案、専門知識を背景としたコンサルティングセールスなど、プロフェッショナルな人的コミュニケーションが競争優位の源泉となる。調査に寄せられた消費者の声をみてみよう。「無愛想」「私語が多い」「専門知識・商品知識が足りない」売りにすべき人的コミュニケーションが、逆に顧客の不満要因になっている。小売店は「人的コミュニケーション」を改めて見直すとともに、そのチカラを強化していくことが不可欠である。

「定員は客が知らない商品知識を提供しなければなりません。目の前にある商品を薦めるだけの定員は必要ないのです」ピーター・ドラッカーが亡くなる2年前の言葉だ。ドラッカーが残してくれた言葉のとおり、陳列された商品を薦めるだけの定員や、レジを打つだけの定員は求められていない。店員は、取扱商品のことを熟知していなければならないのは当然である。単なる販売員ではなく、顧客に情報提供できる「アドバイザー」の域に至る必要がある。そのためには、不断の情報収集と学び続けることが必要だ。

顧客に語りかけることも大切であるが、顧客の声にも耳を傾けることも重要だ。顧客を話し手にまわらせることによって、顧客の真のニーズを探ることができる。「不満や苦情」は小売店にとってチャンスとなりうる。苦情は成功への「種」が隠されている。決して、その場しのぎの対応をしてはいけない。苦情に耳を傾け、苦情から学習することが必要なのである。そして、顧客満足の向上に役立てていくことが大切なのである。

本書で提案したマーケティングには、大きな「前提」がある。それは経営者の「やる気」の問題である。前向きな「意識」がなければ「マーケティング成果」を得ることはできない。「やる気」をもって、小規模を「チカラ」に変えるマーケティングを実践し、それを継続する。それができれば、時代の追い風を現実の力に変えていくことができるはずだ。環境の変化が激しいこの時代、マーケティングの前提は、現状に満足せずトライアルを積極的に推進していく経営者の「意識」であり、それを源泉とする具体的な「行動」である。もっとも避けるべきは「何もしないこと」である。

おわりに、もうひとつ付け加えておきたいことがある。人は失敗したり、うまくいかないことがあると、それは自分のやり方が悪いのではなく、「景気が悪い」「大型店が悪い」と外的な環境のせいにしがちである。原因が外にあると思った瞬間、内的要因に目が向かなくなる。これは企業経営にとって、とても危険なことである。大切なのは自らの頭で考え、自らが進化していくことである。 がんばれ小売店。               完

「小が大を超えるマーケティングの法則」 岩崎邦彦著 より抜粋

 

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