深蒸し茶

2011年5月 茶況_No.268

平成23年5月31日

茶園では施肥など、二番茶に向けた茶園管理を進めています。各茶農協では一番茶の反省会を開き、改善点を協議しながら、二番茶生産に向けての摘採計画を話し合っています。一番茶摘採後、43日前後が二番茶摘採の目安になりますので、例年より一週間程度遅れて6/15頃からのスタートを予定しています。このところの雨と気温の上昇で摘採が若干早まりつつあります。ニ茶の芽伸びの時期から病害虫が増えてくる可能性がありますので、関係機関は茶園のまめな巡回と早急な対策を指導しています。

産地問屋は仕入した一番茶の仕上・発送作業と整理・保管作業を進め、二番茶に向けた情報収集と仕入計画・販売計画を立てています。5/29の日曜日は、身体と気持ちの整理をする久し振りの休日となり良い保養ができました。

今年は過去に経験のない福島原発の放射能問題に振り回された年でした。静岡県は国の要請を受けて県内を東・中・西に区切り18地区で「生葉」と「飲用茶」について放射能調査を実施しました。全てで規制値を下回り、川勝県知事は静岡のお茶は安全と「安全宣言」をすぐに出しました。問い合わせが相次いでいただけに、安全宣言を受けて通常の販売に戻りましたが、厚労省が「荒茶」も検査するよう14都県へ通知し、放射性セシウム500ベクレル/kを超えたら流通禁止の指示が出されましたので業界は大騒ぎとなりました。生葉で100ベクレル/k以上の数値が出ている産地は仕入しても売れなくなる可能性があるからです。また県内で1ヵ所でも規制値以上が出て報道発表されますと風評被害により「静岡茶」の販売に大きな影響が出ると予想されたからです。通知後は真意が確認できるまで1~2日摘採や仕入を見合わせる工場も出たほどです。現在は収穫した直後の生の葉に対する検査を徹底することで消費者の安全は十分確保できると判断し、「荒茶」を対象外として「生茶葉」に一本化して検査を絞る方向で調整に入っています。神奈川・茨城・千葉・栃木・福島で採取した生茶葉から暫定規制値を超える放射性セシウムを検出したことから、国は今年産の出荷自粛を5県に要請しましたが、栃木・福島については自家消費のため市場には流通していません。一般には流通していないお茶まで検査対象として公表するのも、お役人は何を考えているのか、迷惑な話です。

消費地では「新茶商戦」も終わり「中元商戦」の準備を進めています。今年は新茶の出回りが例年より一週間遅れたために、八十八夜新茶の手当てに苦労し、荷物の発送に追われました。苦労しましたが、新茶の出来が良くて、予約していただいたお客さまにはたいへん好評で安堵しました。放射能に関する風評から予約新茶のキャンセルや昨年産のお茶の注文が舞い込んだりで、その対応に追われたのも今年に限った特異な事柄でした。現在、静岡県産のお茶は18地区で放射能調査を実施して、全て規制値を大幅に下回っていることを店頭で説明し、安全性のPRを重視した販売活動に力を入れています。

東日本大震災後は自粛ムードと買い控えから来客数の減少が続いています。特に外食産業は震災で帰宅難民を経験したことから人々は家路に急ぐようになりましたので、売上高は前年比で20~30%減と店舗維持の限界まで来ています。震災・原発の影響は幅広い業種に及んでおり、回復の足取りは重く、先行不透明感が色濃く残っています。業態を問わない共通の悩みが、しばらく続きそうです。

 

価格帯

 

新茶初取引を昨年と同日の4/25に開催し、やはり昨年と同じ5/27掛川市の北へ約30kmの山間地に位置する春野町の有機茶の入荷をもって本年の一番茶の仕入をすべて終了しました。今年の一番茶は短期集中型になると予想されましたが、朝晩の低温と雨不足により芽伸びが思ったほど進まず、5月11日~12日の雨による中断も入って約1ヶ月の長丁場の茶期となりました。雨前は減産予想でしたが、雨後はコワ葉化して数量も増えましたが価格も下落しました。生産量は前年並からやや増収と思われますが、平年作からは10%前後の減産と予想されます。当社の一番茶の仕入価格帯は下記のとおりです。

 

<価格帯>    前年対比  仕入K数 111%  仕入金額 101%

仕入比率 前年対比(平成22年を100とした場合)
2000円売以上 1.5% 96  %
1500円売 3.5% 66  %
1200円売 6  % 127  %
1000円売 11  % 74  %
800円売 25  % 91  %
600円売 17  % 89  %
500円売 26  % 166  %
400円売 7  % 587  %
300円売 3  % 459  %
100  %  

(参考)    平成21年対比 仕入k数 70% 仕入金額 78%

 

掛川茶市場は取扱数量前年比103%、取扱金額96%の取り扱いとなっています。静岡市にあります静岡茶市場は県内産荒茶の10%強を取り扱いますが取扱数量は大霜害のあった前年より6%減、平成21年比ですと15%減と伸び悩みは顕著です。担当者からは「震災・原発の影響はあるとしても、減産なのに買い気が弱過ぎる」とため息がもれます。例年の取引ピークは  5/5前後ですが、今年は10日頃と一週間近く遅れました。当初は芽数が少なく収量減が心配されましたがピークに入った11・12日が雨となり、その後収量が膨らみましたので昨年比増、平年比減と予想されます。早生物に若干寒さの影響を受けたものも見られましたが、品質は上出来の年ではないでしょうか。価格帯も一部の価格に片寄らないバランスのよい価格帯におさまりました。二番茶は6/15頃より始まりますが、大手がどのように動くかで展開が大きく変わりますので相場は読みにくいのですが、在庫が少ないので一定量は確保したいとの声も聞かれます。

 

<生産者のみなさまへ>

二番茶の仕入れは6/14(火)AM5:00より当社拝見場にて行います。良質の物に限って仕入れします。①色沢のよいもの ②水色のよいもの ③夏茶臭・コワ葉臭の少ないものを仕入基準とします。