深蒸し茶

2011年4月 茶況_No.267

平成23年4月11日

東日本大震災により被害を受けられました皆様に、謹んでお見舞い申し上げます。

一日も早い復興を心よりお祈り申し上げます。

 

茶  況

 

茶園では新芽の生育状況を見ながら芽出し肥料を施す作業など、新茶摘採に向けた茶園管理を進める茶農家の姿が見られます。今年は1~3月の低温と小雨、特に夜温が低く推移していますので、桜の開花が遅れたようにお茶の生育も一週間程度遅れています。また、極寒の影響から親葉の色が悪い茶園も若干見受けられます。農林省は昨年の荒茶生産量を8万5千トン(1%減)と発表しました。全国の比率は静岡県が39%、鹿児島県が29%、三重県が8%、他24%となっています。また緑茶飲料(ペットボトル茶)の販売金額は3710億円(3%減)と5年連続で減少しています。紅茶飲料2476億円(16%増)、ウーロン茶飲料1332億円(1%増)となり、緑茶飲料が他の飲料(特に水系)に押されつつあります。

指導機関は遅霜対策を徹底するように注意し、生産者は寒の戻りを警戒しています。そして、新芽の生育状態を見ながら一番茶の摘採計画を立てていきます。「被災者の困難を思えば、不況などとは言っていられない。おいしいお茶造りに励んで心を温めるお茶を被災地に届けるとともに元気を取り戻してもらいたい」と語る生産者の声も聞かれます。重油の確保と価格上昇も心配材料となっています。

産地問屋は補充注文に対応しながら新茶に向けた情報収集に努めています。静岡茶の有力な販路である東北地方からの受注の減少など、心配材料は尽きません。また、夏場の節電対策で生産計画も見直さざるを得ない状況です。静岡県は中部電力の管轄になりますので計画停電の影響はありませんが、こういう状況ですと現在休んでいる浜岡3号機の可動許可が出ませんので夏場の電力供給はかなり逼迫することが予想されます。県内ではイベントの自粛が相次ぎ、首都圏の給油制限の関係もあって旅館・ホテル・宴会場・ゴルフ場でキャンセルが相次ぎ飲食店・観光業者は悲鳴を上げています。

産地問屋は生産者・消費地と情報交換を進めながら仕入計画・販売計画を練っていますが、日本経済が急減速し再び後退へ向かう懸念が強まりつつあることや、震災後に経営破綻に追い込まれる企業が出るなど、不安を抱えてのスタートとなります。

消費地では予約新茶・新茶セールのDM発送や資材の確保など、新茶に向けた準備を進めています。日用品の買いだめ騒ぎの後、節約・自粛ムードが広がりましたが、ここにきて客足が回復しつつあり「日常」を取り戻し始めています。震災発生から約1ヶ月が過ぎ、心理的な落ち着きに加え、普段通りの購売行動が復興に貢献するとの考えも背景にあるようです。ただ、高額の出費を抑える意識は根強く、予約新茶も前年並の数量を確保できるのか未知数の部分も多く感じられます。縮んだ消費意欲の「反発力」に期待するわけですが、お茶の持つ「いやし」や「一息」を求める声も聞かれますので、それに添ったイベントを企画したり、新茶が遅れている分、養分を蓄えておいしい新茶が出来そうですので、自信を持ってお客様に薦めることができると意欲的に取り組んでいるお店もあります。

 

生産者の皆さまへ

 

  • 掛川茶市場の初取引は 4月25日(月) に決定しました。

  当社仕入は4月26日(火)朝5時より当社拝見場にて行います。

  • 機械整備時の油臭、工場清掃時の異物混入には細心の注意をお願いします

 

雨ニモマケズ

 

東日本大震災発生から1ヶ月余が過ぎようとしています。死者・行方不明者は2万7千人以上で、行方不明者の捜索活動は依然難航しています。福島第一原発の評価が最悪の「レベル7」に引き上げられました。大気に出た放射性物質の総量を見積もった結果です。そして、過酷な作業は収束の道筋すら見えないまま続きます。「フクシマ50」海外メディアから称賛された作業員たちは不安と苦悩を背負い危険な作業に従事しています。地震発生時には約800人いた従業員が、危険回避の為に750人が避難し、約50人が現地にとどまり、原子力発電所の被害を食い止めることに全力を尽くしました。「自分たちしかいない」と責任感を持って志願した人、若い作業員の将来を思い、盾になると決意した比較的高齢の人たち。彼らは、放射能汚染を受けるリスクを承知で現場に残り、見えない敵と戦い続けています。彼らの勇気を海外メディアは「フクシマ・ヒフティ」と称賛しました。

岩手で生まれ育った詩人・宮沢賢治の代表作「雨ニモマケズ」が大震災の惨禍に打ちひしがれる人たちへのメッセージとして、国内に、そして海外に広がっています。

 

雨ニモマケズ 風ニモマケズ 雪ニモ夏ノ暑サニモマケヌ 丈夫ナカラダヲモチ

欲ハナク 決シテイカラズ イツモシヅカニワラッテヰル

・・・  中略 ・・・

南ニ死ニサウナ人アレバ 行ッテコハガラナクテモイヽトイヒ

北ニケンクヮヤソショウガアレバ ツマラナイカラヤメロトイヒ

ヒドリノトキハナミダヲナガシ サムサノナツハオロオロアルキ ミンナニデクノボートヨバレ

ホメラレモセズ クニモサレズ サウイウモノニ ワタシハナリタイ

 

岩手の小学校の卒業式では宮沢賢治の「雨ニモマケズ」が朗読され「困難な今こそ、賢治の詩を胸に強い気持ちを持って欲しい」と賢治の言葉を借りた式辞が学校長から贈られました。卒業生は「賢治もつらい状況を乗り越えた人。私も賢治のように苦しくても、わがままを言わずに頑張りたい」との答辞を返しました。今回の災害では日本国民の強さにあらためて気がつきました。海外のメディアは「不屈の日本」と題して、災害を受けながらも秩序が保たれている様子を驚きをもって伝え、日本の素晴らしさを紹介しました。避難所に集まった人たちは肉親を失った悲しさを押し殺し、寒さや飢えを忍び、水不足や停電の生活に耐え、助け合って共同生活を続けています。これだけの災害にあっても、変わらない謙虚さ、遠慮深さを見せています。救助ボランティアの人たちにも「ありがとう」という言葉を失いませんでした。市役所・町役場の職員や地元消防団員は家族が行方不明であっても避難した人たちを守る仕事に打ち込んでいます。自衛隊、消防庁、東電関係職員は何日も帰宅せずに被爆の危険を犯して、決死の覚悟で原子炉に海水を注入し、冷却装置に電源を繋ごうとしました。そして、現在もガレキを片付けながら捜索活動を続けています。全国からは瞬く間に支援物資・義援金やボランティアの人たちが集まり災害地で活躍しています。

今回のことで日本人の心はひとつになることができました。いまこそ、互いに助け合い、生きていくことの大切さを確認したいと思います。そして、これからの日本の出発点にしたいと願っています。被災地は復興を口にするには遠い状況です。なお、多くの人たちが避難所で暮らす状況下で、私たちは何をすればいいのか、私たちに何ができるのか。被災された人たちは、どう「がんばれ」ばいいのか分からなくても、日本中が同じ目線に立って、心がひとつになれたことがせめてもの救いです。日本をリセットし、再生するという覚悟が問われています。