深蒸し茶

2010年12月 茶況_No.264

平成22年12月5日

茶園では冷え込みが強まる冬期に向けて、敷き草などの越冬に向けた防寒・防風対策に取り組んでいます。指導機関では10月に県内の茶園で初めて発生が確認された害虫「ミカントゲコナジラミ」の拡大に注意を呼び掛け、防除対策研修会を開いています。幼虫が茶葉の裏に寄生して、すす病を誘発するために収量減や品質低下を引き起こすことから、茶園の視察を怠らないようにすることと管理作業の徹底を指導しています。先日の雨で茶園は潤い、良好な状態で正月を迎えます。

世界の人口増や新興国の経済発展により、肥料の需要が急激に増え、原料となるリンやカリウムをめぐる国際的な争奪戦が起きています。食料の生産に肥料は不可欠ですが、世界人口増につれて肥料需要は爆発的に増えると予測されます。肥料の3要素になる窒素・リン酸・カリですが工業的に製造できる窒素肥料以外のリンとカリは鉱山が頼りです。鉱物資源なので採れる国が偏っているうえ、供給国が価格決定力を持っています。しかも鉱石の産出量は中国がトップでレアアース(希土類)と似て輸出制限を強めています。日本はいずれ高いものしか買えなくなり、農業経営が難しくなってくる事態も予想されると危惧しています。

産地問屋は歳末商戦が本格化した12月から仕上と発送作業に全力をあげ、注文の対応に追われています。11月の出荷は前年比10%前後減少していますので、歳暮需要に期待して12月は前年並確保を目指して総力戦で臨んでいます。また、若い世代が飲みたくなる商品開発への工夫や活動を模索していますが、これといった決め手はまだ見つかっていません。厳しさが増す茶業界の変化を見極め、時代に柔軟に対応できるように努めていますが、どの業界にも元気な企業もあれば不振な企業もあるのが現実です。「あなたがいないと困る」とお客さまから言われるような、必要とされるお店を目標に努力は怠りません。寒さが厳しくなって鍋物が人気のようですが、鍋物となれば家族揃っての食事とコミュニケーションの機会が増えますので、お茶需要が高まるのではと関係者は期待しています。

歳暮商戦が本格化している消費地では、景気低迷や節約志向などの逆風が吹く中、各店とも全力で対応しています。法人・個人需要の減退や送り先を絞り込む動きが年々広がり、生活防衛意識は依然として根強く感じられます。お店は客足と購買数の減少に歯止めを掛けるために知恵を絞ります。「こだわり」「手ごろ感」「やすらぎ」「もてなしの心」などをテーマに品ぞろえの強化や低価格商品の拡充など厳選ギフトを用意して需要の掘り起こしを図り、商品や送料の割引で購売につなげようとしています。新しい試みもあります。お店で一杯分の茶葉を買って急須で入れ、紙コップで持ち帰る。そんな新しい販売方法のモデル事業「お茶Bar」の参加店として取り組んでいるお店もあります。QSC「品質・サービス・清潔」を一層徹底していくお店。「笑顔であいさつ」「清潔なお店」を徹底して、お客様の求める売り場つくりに努力するお店。いずれも小売業の基本を追求して好成績を上げるように努めているお店です。そして、継続的な実行こそが大切だと確信し、日々励んでいます。諸手当もボーナスも減り「必要なものだけを買う節約傾向は続いています。明るい見通しは持てない」といった厳しい声も聞かれる年の瀬になりました。

年末・年始配送のお知らせ

最終便 12月29日(水)~ 初荷便 1月5日(水)

 

決断と実行

 

日本経済は今、重要な局面を迎えています。就職環境を厳しくしている要因の一つとされる円高・デフレ経済から抜け出せるのか、いまだ不透明感は払拭されません。回復しつつあった欧米経済も、再び減速懸念が強まり、先進国でもデフレと財政赤字の拡大が同時進行していますので、ギリシャやアイルランドのように経済危機に陥る国も出ています。日本国内を見ればモノやサービスの価格が下がり続けるデフレーションが止まりません。そして企業の生き残りをかけた「安売り競争」は激しくなるばかりです。イオンは韓国から直輸入した第3のビール350ml缶を1缶88円で発売しました。負けてはいられないと西友も7月に1缶87円のビールを出しました。円高で割安になった輸入品に押され、国内メーカー5社の1~10月のビール出荷量は前年同期より2.8%減っています。逆にサッポロは韓国でのビール販売事業に本格参入しました。韓国では輸入ビール市場が急拡大していますので主力ブランドの「黒ラベル」を輸出して韓国市場への浸透を目指します。

外食業界でも長引く不況と社用の縮小、若何層の酒離れ傾向から、居酒屋など夜主体の外食産業は厳しい状況が続いています。1品なんでも260円といった均一価格のお店も増えていますし、料理を1人2品頼めば焼酎を何杯飲んでも無料にするお店まで現れました。また、バイキング形式のレストランや居酒屋、丼物の多様なサイズ展開で差別化しているお店もあります。一つの方向性で語れないのが外食産業の特徴でもありますが、価格競争に巻き込まれない斬新なアイデアで勝負する個性的なお店もあります。インパクトのある店名、素材にこだわる農家レストラン、高齢者スタッフだけの飲食店、50才以上に限っての会員制居酒屋、おふくろの味を売りにする定食屋、特に最近人気を集めているのが手頃な価格のフードテーマパークです。すき間を狙った新業種、新サービスが次々と登場しています。そして、個人客の取り込みはもとより、私的な会合や地域コミュニティーにとって魅力あるプランの提供など従来に増してきめ細かな対応が求められています。

安売り競争をせざるを得ないのは、モノが売れない理由からです。値下げして売ると企業の売上高は減少します。その結果、経営悪化で賃金カットや人員削減が実施されます。特に低価格を支える現場ではアルバイト、パート、派遣社員などの雇用が多くなっています。正社員に比べ低賃金の非正社員は出費を減らすために安い商品を求める傾向にあります。そのため価格競争と価格下落はさらに進みますので、そんな悪循環に陥りますとデフレをさらに加速させ、経済活動の縮小は止まらなくなります。まさに「デフレスパイラル」です。政府はこの悪循環を雇用を増やすことで断ち切ろうと緊急経済対策を打ち出しましたが働き手の生活を安定させる効果までは期待できません。

家電量販店は家電エコポイントと地デジ化への対応による駆け込み需要から、今までに経験したことのない特需に沸いていますが、12月からは、この反動による落ち込みが予想されますので、新たな販売テーマが必要になっています。大型化と価格競争には限界がありますので、経営安定の基盤をもって、新たな差別化策を築けるところには必ず成長があります。勝機のチャンスがはっきり見える経営者行動は、実に難しいものですが、リスクを恐れて動かないと勝機はますます遠のいて行きます。「何もしない人は何も起きない。何かした人はリスクを負う」これは経営者の宿命ではないでしょうか。成長するばかりが良い時代ではありませんが、成長する意志を忘れてはいけないのも事実です。「決断と実行」。経営者の要諦として、しばしば指摘される言葉ですが、実行し続けることは容易ではありません。しかし、それをやり抜くことこそが、厳しい時代を生き抜く、経営者の重要な条件ではないでしょうか。