深蒸し茶

2010年11月 茶況_No.263

平成22年11月5日

秋冬番茶の摘採を終えた茶園では病虫害の発生に注意しながら秋の茶園管理を進めています。今季の県内産秋冬番茶の生産量は、産地や工場間での格差はありますが、前年に比べてやや増産と見られています。秋冬番茶の需要は、その大半がペットボトル等緑茶飲料の原料となります。緑茶飲料は2009年10月より原料原産地表示が義務化されましたので、それまで中国産の原料に頼っていた各メーカーも国内産の原料にシフトしました。中国産原料に変わる国内産となると、やはり価格の一番安い秋冬番茶を大量に使用します。緑茶飲料の生産量は2005年265万kl、2006年244万kl、2007年247万kl、2008年236万kl、2009年224万kl、(販売金額3824億円)と発表されました。今年2010年は夏の猛暑の影響がどの程度の上昇になるのかは不明ですが、総じて失速傾向にあるのが現状です。清涼飲料のシェア別では茶系飲料が29%、炭酸飲料が18%、コーヒー飲料16%、ミネラルウォーター12%、スポーツ・機能性飲料9%と茶系飲料が他の飲料を大きく引き離しています。

このところの急な冷え込みで産地問屋は仕上・発送と販促に忙しくなってきました。先月28日から31日までの4日間、静岡グランシップで開催された「第4回世界お茶まつり」はブースによっては30分位の待ち時間ができるほどの大盛況の内に終了しました。消費者のお茶に寄せる関心の高さには業界の想像以上の力強さを感じました。この力を、これからの需要増にいかにつなげていくのか、業界の対応が問われています。生産・流通が一体となって、消費者のお茶に対する思いに答えるような方策が必要ではないでしょうか。

先日、静岡茶市場で静岡茶品評会(鶴・亀品評会)の入札会が開催されました。これからの相場の動きを予想するうえでも、県内ではたいへん注目されています。今年の結果は下記のとおりです。

第46回 静岡茶品評会 入札販売会

部 門 落札率 落札単価
鶴印 4500円 46%(45%) 4882円(4985円)
亀印 2000円 54%(50%) 2362円(2341円)

( )内は昨年の数字

入札参加業者は県内98社に上り、鶴・亀印ともに前年より落札率は上向き、販売金額も2948万円(2296万円)と28%上回りました。現在置かれた厳しい情勢からすると、安堵したとの声も聞かれます。

消費地では「秋の売り出し」も終わり「歳暮商戦」の準備に入っています。ギフト商品の選択・販促計画を練りながら、きめ細かい対応を検討しています。9月の景気ウォッチャー調査は2ヶ月連続で悪化していると発表されました。エコカー補助金終了による新車販売が減少していることや、百貨店などで秋物衣料が不振となっていることが響いたようです。これまで緩やかに持ち直してきた景気に減速・停滞感が見られるとしています。日本経済を取り巻く環境は大きく変化していますが、現状を受け入れて「自分でやれることに集中するしかない」と顧客に支持されるお店を目指して、自店の魅力を再点検して磨き上げるように努めているお店もあります。他の業界も価格競争一辺倒は通用しにくくなっており、新たな差別化策を打ち出す動きが出でいます。

 

同じ土俵で、違うことに挑戦

 

日本の企業は、かつてない経営環境の激変に見舞われています。そして、日本経済は今、重要な局面を迎えています。デフレ脱出の兆しも見えず内需が活気づく日は来るのか遠過ぎて先が見えません。海外に物を売ろうにも猛烈な円高が利益を吹き飛ばすため、生産拠点の海外転出は止められません。そのために、国内では職を失う人が続出しています。反面、海外進出の際の外国語が話せる人材は不足しています。国内に目を向ければ、人口の減少と高齢化が今後、急速に進展して、消費が低迷したり若者への負担がますます増していく現実を抱えています。どんな企業であっても、10年後も変わらず今まで通りに事業を続けていられるとは断言できない時代になってきました。生存確率を高めるためには、経営戦略を見直すことが欠かせません。長年続けてきた商売の中身や方針を見直さねばならないのは、これまで常識だったビジネスの前提条件が、ことごとく変わり始めているからです。かつては西のダイエー、東の西友と並び称された二大流通企業も経営本体が変わり、不採算店舗を閉店・売却したり低価格店舗の拡大に力を注ぐ経営改善に取り組んでいます。中小企業のために立ち上げた日本振興銀行、消費者ローンの大手武富士も破綻しました。

競争はますます激化して、外食産業やスーパーに広がる低価路線はとどまるところを知りません。「お客さまのニーズは価格。支持してもらえる価格レベルを維持する」と公言するお店もあります。ユニクロ、ニトリ、マクドナルド、ギョーザの王将など、安さを武器に業績好調なところもありますが、お客の心をつかめずに苦戦を強いられる低価格店もあります。勝ち組に共通するのは、いずれもお客にわりやすい特徴を打ち出しているところです。「生活者ニーズに応えた商品」、「お値段以上」、「食べきれる適量を小分けして販売」など、いかにお客の満足感に結びつけられるかが勝負の分かれ目になっているようです。

栄枯盛衰が常の商売で、成功するには「新しいこと」をして新市場を開拓することだとよく言われます。しかし、それは中小企業の経営には必ずしも当てはまらないような気がします。経営者は「新しいこと」と思っても、長期的に世の中に必要とされることがない一過性のアイデア商売である場合がほとんどだからです。たとえ「新しいこと」を探し当て、成功したとしても、たちまち競争相手が出現して成長は純化します。中小企業の資金力では継続することが難しいのが現実です。むしろ、中小企業に向いているのは、たとえ他社と同じ土俵でも「違うこと」をすることがポイントではないでしょうか。競争相手が多い既存の市場で、消費者のニーズを探り、抱えている不満を解消する。例えばユニクロやニトリ。カジュアルウェアや家具のSPA(製造販売)は「新しいこと」ではありません。昔からあったビジネスであり、大企業も含め競争相手はたくさんありました。しかし、製品の作り方、デザイン、価格、品揃えの提供方法を変えることで、そこに集うライバルとはまるで「違うこと」をして成功に導いたのです。簡単に真似できない「違うこと」をしていれば、後から大企業が進出してきても怖くありません。チャンスはライバルがひしめく目の前にだけあり、時の変化に添って自分を変化させていく以外に生き残りは不可能です。長引く不況、高速道路・航空運賃などの低価格化や中国からの旅行客数増…など、取り巻く環境は大きく変化しています。常に変化する先を見据えて対応する。これから、経営の舵取りは、ますます難しくなりそうです。