深蒸し茶

2009年4月 茶況_No.248

平成21年4月9日

新年度がスタートして各企業の入社式では景気の冷え込みに直面する厳しさを伝え、既成概念にとらわれない新たな挑戦を求め奮起を促す声が目立ちました。また、消費者の選別の目が厳しさを増す中、消費者向けビジネスの基本である顧客重視を重ねて強調しました。「世の中は経済環境の悪化、少子高齢化など大きく変化している。先の見えないこんな時代こそ大きなチャンスだと思っている」ローソン社長。「人々に新しいライフスタイルを提供することが使命。同じ同士としてがんばろう」ソフトバンク社長。「しなやかで強い竹のように、高く伸びても決して折れない強い基盤を作ろう。一瞬も一生も美しく」資生堂社長。

新茶シーズンを控え、生産農家は新茶に向けた茶園管理を続けながら、茶工場の清掃や機械の点検に励んでいます。「今年は天候が大きく変化し、神経をすり減らした。このまま気温が順調に上がってくれれば」との生産者の声も聞かれますが、今年の県内は2月から3月半ば頃にかけて気温が高めに推移しましたので、当初は生育が早まるとの見方が広がっていましたが、その後の寒の戻りで平年並の生育状況になっています。これまでに降霜や病害虫の発生による被害はなく、茶園の状況は良好です。

掛川茶市場の「新茶初取引」は4月20日(月)に決定しました。静岡茶市場も同じ20日に決定していますので、この日を境に県内の新茶取引が本格化します。摘採のピークは4/25~5/7頃になると予想しています。

茶問屋は、新茶シーズンに向けた準備と情報収集をしながら、新茶の受け入れ準備を進めています。昨年の1年間の全国の一世帯当たりの緑茶の購入数量は992g、支出金額は5,073円と過去5年間で最低と発表されました。20年前と比較しますと、消費量は半分にまで落ち込んでいます。特に新茶時期の5月の落ち込みが大きく、消費量104g(31%減)、消費金額708円(20%減)と、新茶の季節感の薄れを指摘する声が多く出ています。

消費地では新茶期に向けて消費動向を確認しながら仕入計画と販売計画を練っています。景気低迷・収入減による消費者の低価格志向は強まっており、厳しい対応を迫られそうです。仏事関連とパーソナルギフトの動きは好調のようですので、消費者ニーズに見合ったギフト商品の展開に力を入れているお店もあります。店頭では「八十八夜新茶」の予約受付を進めていますが、前年並の受注を確保するために背水の陣でがんばっています。

景気後退で家計は楽ではありません。消費者は支払う金額に見合う価値がその商品にあるのかを真剣に見定めています。選別に失敗したくないという心理から、信用できるお店、納得できるお店、地域でトップシェアのお店、驚きの商品があるお店等を選択する傾向にあります。消費者に選ばれるお店になるために必死の努力が続きます。「経営者が努力するのは当たり前。一生懸命勉強するのも当たり前。誠実に仕事に取り組むのも当たり前。そういうお店でなければ生き残れません」と力を込めて話された、あるお店の社長の言葉が私の頭の中から離れません。

生産農家の皆さまへ

 掛川茶市場の初取引は4月20日(月)に決定しました。当社仕入は4月23日(木)の朝5時より当社拝見場にて行ないます。

 

森羅万象すべてを仕事に

 

日本のメディアは絶望的な空気をあおることしか関心がないのか、日本人が悲観論好きなのか、景気を語る際の枕詞のように「百年に一度の経済危機」という表現が使われています。経営は日々刻々と変化している経済環境に適応することが大前提とはよくいわれますが、「環境に適応せよ」といわれてもどうしたらいいのかわからないというのが中小企業経営者の本音ではないでしょうか。徐々に減っていく売り上げをどう確保したらいいのか、月末の支払いをどう乗り切ったらいいのかの諸問題に悩む多くの経営者にとって、大企業の競争力がどうのこうのという大局的な話はピンときません。そんなことより今月の売上げ確保と資金繰りが関心の対象なのです。家屋敷を担保に入れてリスクを背負っている経営者が一人で考え、決断を下すしかないのが現実なのです。長い時間の中で間違ったものは必ず淘汰されていきます。漫然と過ごしていれば、どんな大企業でもいずれ淘汰されてしまう危機感を経営者は常に感じています。

創業百年の節目を迎えるスズキの鈴木修社長が書いた本「俺は中小企業のおやじ」が売れに売れています。経営に迷い行き詰まった経営者が、スズキの成長の秘訣を知り迷ったときの道案内にしようとする気持と、ハッキリと物言う社長のその姿勢に共感しているからのようです。以下はその鈴木語録です。

会社成長の秘訣は?「大事なのはやる気だ。とにかく、今よりもよくならないかというのを徹底的に追い続ける。夜寝ているときでもメモを置き、目がさめたら書き込む。ゴルフのプレー中でも思い出したことがあるとメモする。森羅万象すべて仕事に結び付けてどうしたらよいか考える」。

競争心はどこから来るのか?「常に悔しいという気持を持つ。それから運とツキと人との出会いが大切。それをやる気というオブラートで包んでやっていくということ。これは絶対必要だ」。

若者に贈る言葉は?「自分の置かれた立場をよく理解し、現状打破をするのにどうしたらいいか考えるべき。鉄は熱いうちに打てというが、10代、20代は決定的に知識を詰め込む時期だ。それを応用し活用するのは25歳過ぎでいい。若いときからあまり大人の教育を受けると、こましゃくれた生半可な奴ばっかりできてしまう危険がある」。

未曾有の危機を脱する方策は?「そんなものはありっこない。地道な努力と総反省だ。今までこれでよかったと思っていたことをここでもう一度見るということ」。

企業は一時的に順調でも、いつまでも順風満帆で成長していけるものではない。周期的に危機がやってきて、それを克服できればよりたくましくなるが、その波に飲まれると成長が止まってしまう。最悪の場合は倒産して組織が存続できなくなってしまうこともある。その周期の長さはだいたい25年くらいではないか。四半世紀に一度はその会社を土台から揺さぶるような危機が訪れ、そのときこそ真価が問われる。人の能力の差は体力・気力・努力次第で簡単に逆転する。要は「やる気」次第だ。私は苦境に立たされれば立たされるほどファイトが湧いてくる。

私は79歳になりました。働くことが楽しいのです。休んで遊びたいとか、趣味をしたいという気は全くありません。有給休暇は死んでからいやというほど取れるのですから。俺は中小企業のおやじ。生涯現役としてまだまだ走り続けます。

―「俺は中小企業のおやじ」より抜粋 ―