深蒸し茶

2009年5月 茶況_No.249

平成21年5月18日

一番茶の摘採が終了した茶園では、二番茶に向けた管理作業に取り組んでいる茶農家の姿が見られます。指導機関ではハトジや赤ダニなどの防除を徹底するように呼びかけています。一番茶相場の低迷を受けて、生産者の間には茶園の中刈り更新を進める動きが広がっています。二茶のだぶつき感から二茶需要の低迷が予想されることが背景にあるようです。中刈り更新は一番茶終了後に枝を刈り落として樹勢の回復をはかるのが目的ですが、葉層を刈り落としてしまうために今季の二番茶の収穫はできなくなります。しかし、来年の一番茶の品質が高くなりますので、例年ですと四分の一の茶園で実施されますが、今年は三分の一の茶園で実施する方向です。今年は葉肉が薄くもろかったのか、近年になく製茶しにくかったとの声が多く聞かれました。

一番茶の仕入が終了した産地問屋は、仕入したお茶の整理と仕上・発送作業に追われています。仕入は前年対比数量で6%減、金額で11%減となりましたが、4・5月をトータルした売上も同じような数字に落ち着きそうです。今年は暖冬により2月が異常に暖かく、3月中旬以降の2回の寒さの影響が色濃く出た一番茶でした。萌芽前の新芽を準備している段階での寒さでしたので、当初は影響は軽微のように思われましたが、収穫時期になって低温障害による新芽の生育障害が多く見受けられました。暖かさの後の寒の戻りにより新芽が風邪を引いたような状態です。特に最近は乗用型の摘採が主流になっていますので、茶の木の上面が平らにならされています。冷気が上面に滞留しやすく茶の木にとっては一枚羽織りたいほどの寒さに感じたのではないでしょうか。昔のカマボコ型の茶園は下方へ冷気の逃げ場があるために低温障害が少ないように思います。

静岡県内は自動車・電機関係の下請工場が多く、4勤3休は当たり前で3勤4休のところまで出ています。当然に給与も下がり、景況感は最悪の状況です。円安の時代は終わり、円高の状態が続くことを見越して国際競争力をつけるために生産設備を海外にシフトする動きがありますので、県内の下請け中小企業はますます仕事が少なくなってきています。茶業関係も置かれた状況はたいへん厳しいのですが、「仕事があるだけいい」の声まで出始めています。これから仕入れした荒茶を整理して各クラスごとの見本をつくり年間契約の営業に努めます。

消費地では新茶の売り出しや予約新茶の配送も終わり、中元商戦までは一息の状態です。八十八夜新茶の予約販売を実施したお店は昨年並からやや減の状況ですが、年々新茶の季節感が薄れ新茶商戦は厳しくなっています。新米・新海苔・新茶といった季節感を感じる新物に対して騒がなくなっているのも事実です。飲んで飲んでといっても、飲みたくなる新茶を提供することが最重要課題です。新茶を早く出さないと価格が安くなるのも現実ですが、品質重視でいくならば、新茶の摘採は少し遅れますが秋冬番茶の摘採を今よりも少し遅くしたり、春の早い時期にならしたりすることも考える必要があります。買う側も少し遅くなっても品質が良ければ高く買う姿勢で臨み、早さを競うのではなく品質を競うように、生産家と仕入れする問屋が連携する必要があるのではないでしょうか。

 

価 格 帯

 

 当社の一番茶の仕入価格帯は下記のとおりです。

価 格 帯 》 前年対比 仕入k数94%、仕入金額89%

仕 入 比 率 前年対比(平成20年を100とした場合)
2,000円売以上  0.8% 55%
1,500円売    1.4% 47%
1,200円売    3.7% 74%
1,000円売   10.1% 74%
800円売   24.0% 112%
600円売   16.0% 96%
500円売   26.0% 85%
400円売   10.0% 107%
300円売    8.0% 114%
       100.0%  

 

当社の仕入は5月16日春野町の有機茶の入荷を最後に、今季一番茶の仕入をすべて終了しました。今年は問屋の選別買いが厳しかったことから、単価の上下差があって各茶工場の成績も工場間の格差が大きいようです。売り手からは「雰囲気、価格ともに戦後一番の悪さだった。買い手はとにかく冷静で荷を持ち帰る生産者もいた。販売にはとことん苦労した」と嘆きともとれる声も聞かれました。特に気象災害と思われる内容の伴わないお茶も多数出回っていましたので、品質を見極めた選別買いは当然のことといえます。各問屋も内容の伴わないお茶を買ったら命取りですので、お茶の内質を見極める目は真剣でした。2月の暖冬の後の寒の戻りによる3月の低温障害、4月の雨不足と南部地域の降ひょう被害、全域で強風による葉擦れ、4月末には山間地域の降霜被害等、気象災害に振り回された一番茶でした。早場所地域は雨による中断が一度もなく、5/2の八十八夜前に終了した工場もありました。遅場所地域は最終段階にきて5/5~5/7の3日間降り続いた雨で摘採が3日間中断されたためにコワ葉化したものが目立ちました。早場所は20%前後の減産ですが、全体では10%前後の減産になると思われます。1,000円売以上のミル芽物で内質の伴ったものが極端に不足しています。二番茶は6月10日頃から始まりますが、昨年度の在庫があること、一茶で千円絡みの下物まで手当てできたことから、二茶相場は極端な弱相場になることが予測されます。できる限りの中刈り更新と、摘採計画はしっかりと立ててください。 JA・経済連では生産調整も検討しています。

《生産者のみなさまへ》

1.二番茶の仕入れは当社拝見場にて朝6:00からとなります。一番茶は朝5:00でしたのでお間違いのないように。

2.二番茶の需要が見込めません。できる限り中刈り更新してください。コワ葉化したものは特に需要が見込めませんので、浅刈りをお願いします。

3.良質のものに限って仕入れします。①色択のよいもの ②水色のよいもの ③夏茶臭・コワ葉臭の少ないものを仕入基準とします。