深蒸し茶

2020年12月 茶況_No.364

令和2年12月3日

茶園では越冬に向けた敷草などの茶園管理が進められています。茶園周辺の山で刈り取ったススキや笹などの山草を乾燥させてから10㎝くらいの長さに裁断して茶の木の間に投入する「茶草場農法」は「世界農業遺産」に認定されています。土の乾燥や凍結を防ぎ年月が経ちますと肥料にもなり、美味しいお茶造りには欠かせない作業です。例年のこの時期は各茶工場で一年の反省会を開き将来に向けた課題などの情報交換をしますが、今年はコロナ禍で中止です。減産にもかかわらず相場安の現状は茶農家の将来に暗い影を落としています。「生葉代から肥料代と燃料費を引くと残るものは、ほとんどない」といった深刻な声も聞かれ生産を断念する茶農家が増えました。県茶業会議所は13項目の政策要望を静岡県に提出しました。荒茶相場の低迷が続いていることから全国の生産量と在庫量の調査をして需給調整機能を強化するためと、戦略的な品種開発、改植推進支援、茶の魅力発進なども要望します。

産地問屋は歳末商戦の仕上加工・袋詰作業・出荷作業を進めていますが例年の活気は感じられません。特に1500円売以上の上級茶の動きは鈍く隔世の感があります。今年は53年続いた「静岡茶品評会(鶴亀品評会)」が初めて中止となりました。例年ですと、その入札結果で現在の茶況と今後の茶況判断ができるのですが今年は来年の新茶までにどのような茶況が待っているのでしょうか。現在の荷動きは一番茶・二番茶・秋番茶・出物類と万遍なく動いています。売れて在庫薄というよりも各茶期ともに生産量が少なかったことが要因のようです。

消費地ではお歳暮商戦の本番を迎え忙しくなってきました。今年は発送が多くなりますので送料に特典を持たせるなど地域密着の販売を継続していますが状況は厳しいようです。国の家計調査によりますと9月の緑茶購入金額はリーフ茶9.3%減、ペットボトル茶飲料11.5%減と発表されリーフ茶もペットボトル茶も低迷して経営環境はますます厳しくなっています。新型コロナウイルスの影響は業態によって明暗が大きく分かれました。移動の自粛が広がり広域から顧客を呼び込む大型店が苦戦した一方、家庭の自炊が増えて近場の食品スーパーは売上を大きく伸ばしました。家庭で過ごすための商品だけが好調な構図は今も続いています。

新型コロナウイルスの感染拡大で東京都・大阪府・北海道では居酒屋やカラオケ店などの飲食店に午後10時迄の時短営業を要請しました。感染状況は悪化の一途をたどり医療崩壊の危機感があるからです。春の第1波、夏の第2波に続く3度目の要請です。例年ならこの時期の飲食店は忘年会や新年会が集中するかき入れ時だけに店主からは、うめきともとれる嘆きの声が聞かれます。かってない早さで消費環境が変わるなか、経営者にとって難しい局面が続きますが、廃業を選択するお店も出始めています。

 

【速報】お茶で新型コロナ無害化

奈良県立医科大学の矢野寿一教授は27日、新型コロナウイルスが市販のお茶によって無害化する効果を確認したと発表しました。試験管内でウイルスとお茶を混ぜ、経過時間ごとのウイルスの量を検査した結果、最大99%が感染力を失っており感染対策の一つとして期待されると発表がありました。

 

 

 

S D Gs(エス・ディー・ジーズ)

 SDGs(持続可能な開発目標)は国連加盟193カ国が2016年~2030年の15年間で達成するために掲げた国際社会共通の目標です。2030年を達成年限として17のゴールと169のターゲットから構成されています。17のゴールの主なものは次の通りです。

 

1. 貧困をなくそう

あらゆる場所であらゆる形態の貧困に終止符を打つ

2. 飢餓をゼロに

食料の安定確保と栄養状態の改善を達成するとともに持続可能な農業を推進する

4. 質の高い教育をみんなに

すべての人に公平で質の高い教育を提供し促進する

6. 安全な水とトイレを世界中に

すべての人に衛生へのアクセスと持続可能な管理を確保する

7. エネルギーをみんなに、そしてクリーンに

すべての人々に持続可能かつ近代的なエネルギーへのアクセスを確保する

10. 人や国の不平等をなくそう

国内および国家間の格差を是正する

12. つくる責任つかう責任

持続可能な消費と生活のパターンを確保する

13. 気候変動に具体的な対策を

気候変動とその影響に立ち向かうため緊急対策を取る

14. 海の豊かさを守ろう

海洋と海洋資源を保全し持続可能な形で利用する

15. 陸の豊かさも守ろう

陸上生態系の保護、森林の持続可能な管理、砂漠化への対処ならびに生物の多様性損失の阻止を図る

17. パートナーシップで目標を達成しよう

持続可能な開発に向けて実施手段を強化し、グローバル・パートナーシップを活用化する

 

以上の17項目(一部略)は国連が提唱するSDGs(持続可能な開発目標)の数ですが、

未来を考える組織でなければ存続する価値はない、企業にとってもSDGsの達成は重要な要素になりつつあります。日本の商道徳「売り手よし、買い手よし、世間よし」の「三方よし」に「未来よし」を加えた考え方といえば分かりやすいでしょうか。日本政府も

SDGs達成に向けて国際協力に積極的に取り組んでいます。海洋プラスチックゴミによる海洋汚染を2050年までにゼロにする。新型コロナ感染症に関して国内対策はもちろんのこと、全ての人が必要な時に負担可能な費用で享受できることを国際社会と協力して進めます。日本の2020年SDGs達成順位は世界で17位です。1位スウェーデン 2位デンマーク3位フィンランド 7位オーストラリア 13位イギリス 17位日本 31位アメリカ 48位中国57位ロシア の順になっています。

世界的な人口増加と経済成長に伴い、限りある資源・食料需要の増大・廃棄物の増加・海洋プラスチックなど環境問題の深刻化・地球温暖化による気象災害など、大量生産・大量消費・大量廃棄の経済モデルは、早晩立ち行かなくなるおそれがあり見直しを迫られています。「アップサイクル」とは古くなったものに手を加えて新しいモノに生まれ変わらせる循環型の考え方です。本来であれば捨てられるはずの廃棄物を別の新しい製品にアップグレードして生まれ変わらせます。スウェーデンでは限りある資源を循環させ価値を生み出し続ける「循環型ビジネス」を成長の柱に据えようとしています。資源の効果的な利用、新しい環境技術の開発で経済を大きく成長させて雇用と成長を生み出す将来有望な分野と位置付けて国家戦略を策定しました。スウェーデンにはアップサイクル専門の店が並ぶ、「循環型モール」の数も増えています。ただの中古品が並ぶお店ではなく、アップサイクルされた新しく生まれ変わった製品が並び多くの消費者に利用されています。企業側にも利用する人にも環境に対する意識があることが循環型ビジネスが広がるかのキーポイントになります。スウェーデンが発祥の家具と生活雑貨を扱うIKEAは市民が運び込む不用品を大胆にアップサイクルして、より価値の高い製品に生まれ変わらせ手頃な価格で販売する循環型ビジネスを立ち上げました。企業価値を高め新しい価値を生み出し続ける循環型ビジネスを2度目のチャンスと捉え持続可能な社会SDGsの実現を目指しています。

まだ食べられるのに廃棄処分されてしまう「食品ロス」を削減しようと食品の賞味期限表示を日単位から月単位に変更する企業が増えています。月単位での表示により賞味期限は月末まで延びることになり食品ロスが削減できるからです。日本の食品ロスは年間612万トン、国民一人当たり年間48キロを廃棄している計算です。一般のスーパーでは販売できない賞味期限2ヶ月以内の商品を安価で販売する「スーパーアウトレット」は「売り手よし、買い手よし、世間よし」の「三方よし」で人気を集め国内店舗数を増やしています。

世界の産油国では原油安による国内経済低迷に国民の不満が高まり暴動が絶えません。2035年には世界のほとんどの国でガソリン車の販売が禁止になります。中国の「上気GM五菱」の電気自動車が9月に2万台以上を売ってEV世界最大手の米テラスを抜き話題を集めました。サイズは日本の軽ワゴン車に似ていますがガソリン車より電気自動車は部品数が少なくて済むために価格は驚きの49万円です。サウジアラビアでは天然ガスから造ったアンモニアを「次世代エネルギー」ととらえSDGsの、「エネルギーをみんなにそしてクリーンに」の目標に向けて従来の石油のみに頼った経済から脱石油を図り、経済改革を進めています。

世界では大くの企業が環境対策にのり出し、循環型ビジネスを経営の柱に捉えようとしています。新型コロナウイルスがもたらした劇的な変化にいかに適応できるか、そして長期的にどう社会に貢献していくのかを模索しています。

未来を考える組織でなければ存在する価値はないとの考えが主流になりつつあります。企業にとって「SDGsの達成」は生き残るための重要な要素であり企業価値を高めることにつながっていますので、未来を考えた時に見逃すことのできない世界の潮流となっています。

 

 

 

<新商品発売のお知らせ>

ドリップフィルター「茶楽らく」

「淹れる手間よりも捨てる手間」とよく言われますが、お茶を淹れるのは面倒だとは思わないが、使用した後の茶殻の処理を面倒だと思っている消費者の方は意外と多いものです。

そこで今回、使い捨て型の急須・カップ用のティーフィルターを開発いたしました。

このドリップフィルター「茶楽らく」を使用することによって、捨てる手間と洗う手間が簡単になり、手軽にリーフ茶を楽しむことができます。リーフ茶の消費低迷により、茶業界は大変苦戦を強いられておりますが、本製品を使用することにより、リーフ茶復活につながればと思い、本商品を開発いたしました。ロッドや価格等、お気軽にお問合せください。

Mail:nakane@kakegawa-cha.co.jp

TEL:0537-23-3252