深蒸し茶

2015年2月 茶況_No.307

平成27年2月20日

茶園では山草を茶園に敷く作業や春肥の施肥作業が続けられています。世界農業遺産に認定された「茶草場農法」を実践することは、大変な労力を要しますが、やりがいもあります。茶園への敷草は保温・保湿や夏場の雑草対策などの効果もありますので、欠かせない管理作業となっています。山間地の茶園でイノシシが茶園を荒らすために、地区ぐるみで対策をしています。これから防霜ファンの点検や機械整備を進め、新茶を迎える準備をします。今年は農協法が改正され、60年ぶりの大改革が実施されます。政府は農業3法案を一本化する方針です。3法案とは農協法と農業委員会法と農地法の3つです。改正案は農協法については公認会計士による監査義務付です。農業委員会法は現在の公選制から市町村長による選任制への変更です。農地法は企業が出資できる比率を25%から50%未満に緩和する方針です。これからは販売力や生産力を自己努力で向上させ、農業を成長産業へ育てるように転換することがねらいです。

産地問屋は消費地と情報交換を交え、販売計画を練っています。2月決算の問屋が多く、決算準備もしています。売上高は3~8%減、荒茶価格2000~3000円の在庫が多いようです。消費の低迷が続き、先行きに不安を感じていて、厳しい決算を迫られそうです。今年も消費が振るわなければ廃業する生産者や産地問屋が、これから増えていくのではといった声も聞かれます。そんな声を受けて、県は新年度予算に静岡茶の振興対策費として過去最大の予算を計上し、静岡茶ブランドを堅持する考えです。全国主要7都市で商談会を開催して販路拡大を計ります。海外での商談窓口として、「海外サポートデスク」を米国と欧州に設置します。また「茶の都」構想の拠点施設となる島田市の「お茶の郷」を買い取った後にリニューアルします。

消費地では、新茶資材等の準備と新茶の販売計画を進めています。これから「予約新茶」の受け付けも開始します。最近の販売状況は、増税による消費の落ち込みが長引き、苦境が続いています。最悪期は脱したものの、経済の回復力は弱く、今後も緩やかにしか持ち直さないだろうとの見方が大半です。しかし京都や大阪・箱根などのホテルはアジアからの客で埋まり、外国人の買物消費が、景気のエンジン役になっている業種もあります。外国人用に100万円の福袋も登場しました。また業種によっては人手不足が深刻です。時給を上げても応募が少なく人件費の増加が利益を圧迫しています。流通の変化も顕著で三越伊勢丹HDの売上が1兆3千億円ですが、ネット販売の楽天は売上2兆円を突破しました。「楽天市場」には1億7千万点の商品が並び、従来は店舗で買うことが多かった洋服や日用品が売れているようです。家電やパソコンは店頭で商品を確かめ、ネットで買う「ショールーミング」が常態化し、日本の家電量販店はいずれ苦境を迎える可能性があると指摘されています。米国ではラジオジャックなど大手販売店が相次ぎ破綻しています。日本ではイオンやヨーカドーなど、ネットで注文を受けて自宅配送する「ネットスーパー」に力を入れ始めました。「対岸の火事」とは言い切れない状況です。

 

 

「不」の解消こそが繁盛の答え

 月刊誌「商業界」の根幹となる理念は「店は客のためにある」という一文です。この理念によって戦後の商業は一変したといっても過言ではありません。それまでは、自分の主観の商売に明け暮れていた商人たちに視点の転換が必要なことを教えてくれました。商業界ゼミナールは、その考えを学ぼうとする塾生で溢れ、商いの心を教わる商人の道場でもありました。そこには、ダイエーの中内功氏、イオンの岡田卓也氏など多くの経営者が集まり正しい商売の考え方、あり方を勉強したのです。商業界ゼミナールで提唱されている理念に「商売十訓」があります。これが商業界精神のベースとなり商人の行動規範となりました。「商売十訓」は1961年・商業界主幹・倉本長治氏が提唱して、その後の多くの商人に影響を与え続けた不朽の名言です。日本が戦後の荒廃から立ち直っていく時代背景の下で、商業とは人間社会にとって不可欠な存在であり、その活動の在り方が世の人々の豊かさに大きく貢献することを教え、そのような社会的使命や志を持った商人が繁盛していくことが社会の幸せにも通じることを教えてくれました。「はじめはみんな小さな店だった。まず一人のお客さまの満足から、多くのお客さまに、小さな満足は広められていった。『店は客のためにある』損得よりも善悪を先に考える。そのために滅びてもよし。断じて滅びず。すべての商業者たちよ、今一度高き志をもて。人々の暮らしは、いまだ満たされていない」

商売十訓

1.損得より先に善悪を考えよう      6.お互いに知恵と力を合わせて働け
2.創意を尊びつつ良い事は真似ろ     7.店の発展を社会の幸福と信ぜよ
3.お客様に有利な商いを毎日続けよ   8.公正で公平な社会的活動を行え
4.愛と真実で適正利潤を確保せよ    9.文化のために経営を合理化せよ
5.欠損は社会のためにも不善と悟れ   10.正しく生きる商人に誇りを持て

「商売十訓」が誕生して50余年。人々の求める豊かさの内容は、昔では想像できないほどに変わりました。そして商業者たちの心にも変化が生じています。志や使命感を追い求める前に、業績を追いかける方に関心が移っているのです。しかし、いつの時代も、とことんお客様の立場に立って考える原則は変わりません。不便・不信・不満・不快・不美味・不親切など不に満ちた商いに世の中の支持が集まるはずもありません。「不満」の不が解消されれば「満足」、「不便」の不が解消されれば「便利」という価値に変わっていくように、「不」の解消こそが、お客さまの支持を実現し、自らの繁盛をつくり出していく根幹の原理であり進むべき方向ではないでしょうか。「不」を見つけ出すことは、お客さまの立場にとことん立つことでしか見えません。需要は世の中にいくらでもあるのに、私たちの目には見えていないだけかもしれないのです。とことんお客さまの立場で「不」を見ようではありませんか。繁盛の根源は、そこにあるような気がします。

         あらためて読む「商業界」商売十訓 より