深蒸し茶

2015年3月 茶況_No.308

平成27年3月31日

茶園では生産者が茶園を巡回して防霜ファンの点検や施肥など新茶に向けた管理作業を進めています。また改植園では茶の苗木を植える姿も見られます。JA掛川では萌芽調査を実施して生育状況を発表していますが、新芽の生育状況は順調とのことです。昨年よりも2~3日遅れていましたが、ここ2~3日の暖かい日により、昨年並みの開始にになるのではと予想されます。これからは寒暖の差に注意して茶園管理を進めながら、工場の機械整備と清掃なども進めていきます。また、JGAP(農業生産工程管理)を認証取得する動きが活発です。肥料や農薬を法律に沿って使用しているかを厳しくチェックして、安全な農産物を生産することを目的としています。

産地問屋は生産者、消費地と情報交換を進めながら、新茶に向けた販促を企画しています。4月から食品が体にどのように良いかを事業者の責任で表示できる「機能性表示制度」が施行されますので、そのための勉強と準備もします。この制度は事業者が健康効果について、科学的根拠を消費者庁に届け出るだけですので、食品・健康業界はビジネスチャンスと歓迎しています。たとえば「紅ふうき」の考えられる表示としては「目や鼻の調子を整える」などとなります。トクホ(特定保健用食品)では許可を得るのに膨大な人と費用が掛かりましたが、これからは、機能性をうたった「目の健康に役立つ」「血管の機能をサポート」「肝臓の機能を助けます」など、特定の部位を上げた効果や健康維持の表示が可能となります。ただし「糖尿病の人に」「高血圧の人に」など、特定の病気の予防効果を暗示する表現や、「増毛」「美白」といった、健康維持の範囲を超えた表現は認められません。申請してから、不備がなければ約60日後に許可が下りる見通しです。「記憶力をサポートします」など体の部位ごとに商品の効能をうたうことができますので、部位や効能ごとに売り場を作るなど、売り方も一変しそうです。新制度は論文などで効能を示せばいいので、中小メーカーには相当な追い風となりそうです。 消費地ではDMやチラシなどを作製して新茶期に向けた準備を進めながら「予約新茶」の受付をしています。消費増税後から、厳しい対応が続いていますが、前年並確保が目標です。来店頻度の高い顧客から要望や不満を聞き取り、きめ細かなニーズを吸い上げて地域で支持される店作りを進めているお店もあります。地域のシェアを上げることが最大の課題ととらえ、地域密着強化へ取組みます。大手百貨店の2月の売上は4%増、総スーパー60社の2月の売上は0.8%減と明暗が分かれました。大手百貨店は中国人観光客の「爆買」が販売増に貢献しています。日本土産の「三種の神器」はデジタルカメラ・炊飯器・腕時計からステンレスボトル・化粧品・洗浄便座に変わっています。今までは「2・8」と言って、2月は閉散シーズンとされていましたが、「春節謝々」と言って4~6倍の売上があったお店もあるようです。これから争奪戦が激しさを増します。総合スーパーは消費増税後、11か月連続のマイナスとなっています。賃金ベースアップはありましたが、軽自動車増税、必需品や保険料の値上げなど家計の負担は増しています。はたして、国内消費は回復するのでしょうか。先行きに期待と不安が入り交じった状況で新茶を迎えます。

 

 

 

ニーズを見つけられる者には、常に商売のチャンスがある

 1.損得より先に善悪を考えよう

 2.創意を尊びつつ良い事は真似ろ

 3.お客様に有利な商いを毎日続けろ

 4.愛と真実で適正利潤を確保せよ

 5.欠損は社会のためにも不善と悟れ

 6.お互いに知恵と力を合わせて働け

 7.店の発展を社会の幸福と信ぜよ

 8.公正で公平な社会活動を行え

 9.文化のために経営を合理化せよ

10.正しく生きる商人に誇りを持て

 

商売は損得で物事を考えるのが当たり前とされていた時代、まだ人々が生きていくのに精一杯だった昭和20年代に商売の在り方は損得勘定のモノサシを超えて求められなければならないとした「商業界」倉本長治氏が提唱した商売十訓は、まさに革命的でした。目先の儲けのためには手段を選ばないものとされていた時代背景の中で、損得を超えて優先せねばならないものがあると断じた、この商売十訓の説くところは、世の商人たちに大きなインパクトを与えました。あるべき商人道に触れて多くの商人たちは心を揺さぶられ、自分たちが考えていた商売の世界とは、別のところに求める世界があることを知ったのです。「先に善悪を考えよう」とする教えは、虚偽・ごまかし・不正が日常的に行われている当時としては、分かりやすくて明確な行動の規範となりました。商業界ゼミナールでは、こうした先人の事例に教えられて、涙し、感動し覚醒した商人たちの中から、たくさんの繁盛店が出現したのです。

商売十訓の一条で「損得より先に善悪を考えよう」と損得より優先するものがあると言いながら、他の条項では欠損は社会の不善であると言い、また適正な利潤の追求を奨励しています。この一見矛盾に見えるものを整合させていく中に商人としての英知があることを訴えているのです。「善悪を考えよう」と言っているのは、利益の追求を否定しているものではなく、優先順位を言っています。しかし、時代が変わり、この善悪の価値判断がひじょうに難しくなっています。さまざまな偽装、虚偽の表示に見られるようなことは、今日でも依然として後を絶ちません。法令順守は最低限度の必要条件であって、商売十訓の説くところは、効率のいい目先の得になる商売があっても、自分が目指す商売の在り方ではないと思う時は断固として退けるその姿勢、損得に優先させるべき善悪の価値判断基準の大切さを教えています。

1950~1975年は、まさに戦後の荒廃から復興へ、やがて高度経済成長時代へと世の中が希望に満ちていた時代でした。「良い事は真似る」という風潮は全国に広がり、繁盛店から役立つことを学び真似しました。特にアメリカの商業が手本となりました。アメリカにあって日本にないものこそが、商売の目指していく道であると明言する人もいました。しかし、時代はその後、大きく変わることになります。真似をしない独自化と差別化こそが、経営の重要なテーマになったのです。社会や市場や消費者が求める価値が、他にはない独自な存在価値の追求へと主眼が移ったのです。それは言うまでもなくオンリーワンの存在価値でした。セブンイレブンはアメリカに学びはしたが、決して真似はしていないと言います。他との差別化・独自化こそが企業盛衰の重要なテーマとなる現代においては第二条の「創意を尊びつつ良い事は真似ろ」の「創意を尊びつつ」に深い意味が隠されているのです。世の中は時代とともに変化し、新しい世の中のニーズ、生活のニーズが生まれています、それを見つけられる者には、常に商売のチャンスがあります。そのためには、徹底して自分で考える力を磨き上げていくことが重要なのはないでしょうか。

あらためて読む「商業界」商売十訓より