深蒸し茶

2021年7月 茶況_No.371

令和3年8月2日

東京の最高気温は連日のように30度を超え、湿度も高く五輪選手からは悲鳴が上がっています。新型コロナウイルスのデルタ株が猛威を振るっており東京都では4千人、国内では1万2千人を超えた新規感染者が報告されています。政府は8月2日~31日まで東京都、沖縄県、埼玉県、千葉県、神奈川県、大阪府に「緊急事態宣言」を発令しました。そして北海道、石川県、京都府、兵庫県、福岡県には「まん延防止等重点措置」を適用します。政府対策分科会の尾身会長は、十分な治療を受けられずに命が失われる「医療崩壊」の可能性があると医療体制の危機感をあらわにしました。「緊急事態宣言」により飲食店は再び酒が出せなくなり「生き地獄だ」との声も上がっています。観光業界もかき入れ時の夏休みやお盆の時期が宣言期間に入ったことで大きな影響を受けます。ホテル・旅館・レジャー施設や旅行会社・航空・鉄道・バスなども帰省自粛で大打撃を受けます。飲食店が酒提供を制限されることにより酒類の卸業者の廃業が過去最多となっています。体力があるうちに廃業を決断する事業者が増えた結果です。

茶園では施肥や防除などの管理作業が続けられています。二茶摘採後の茶樹の管理作業は来期の生産に向けて重要な管理作業になります。日中の猛暑を避けて、朝夕の涼しい時間帯に水分を補給しながら作業を続けます。涼しい朝夕でも熱中症対策は欠かせません。2021年の県内産一番茶の生産量は9320トンと過去最低水準となった2020年を下回り2年連続で1万トンを割り込みました。一番茶の平均単価は18%高の2085円と4年ぶりに回復に転じました。減産・単価安に見舞われた2020年で生産をやめた茶農家もあり減産の一因となりました。県内産二番茶は、平均単価は前年を5割近く上回りましたので、生産意欲が高まり生産量は3年ぶりに2割強の増産になりました。生産者の採算に見合う価格で取引されることで担い手減少に歯止めがかかることに期待しますが、他の製造業・小売業と同様に高齢化や後継者がいないことから廃業せざるをえない生産者は多いようです。

産地問屋は夏休みの前の仕上と発送作業を進めていますが会社・業務・仏事需要がなくなり専門・量販店需要が主になっています。巣ごもり需要に支えられ7月は昨年比をクリアできました。スーパーや通販での売れ行きは堅調ですが、荒茶3000円以上の高価格帯のリーフ茶の販売は依然振るいません。県は静岡茶の需要拡を図る「ChaOIプロジェクト」の事業案を募集しました。生産者・製茶問屋や飲料・機械・包装メーカー・研究・金融機関などが業種の垣根を越えて共同事業体を立ち上げ、新商品や販売方法を開発したり、製品輸出に取り組む事業です。県が費用の一部を助成して「静岡茶」の需要拡大を図ります。

消費地では「水出し煎茶」と「帰省土産」の販売に努めていますが、緊急事態宣言により帰省を見送る人も多く厳しい夏となりそうです。人件費や家賃の支払いが負担となって従業員の解雇や廃業に追い込まれるケースも激増しています。依然として先行きが見通しづらい状況から、慎重な経営姿勢は続きます。コロナ禍をきっかけに生き方・時間の使い方・消費スタイルや買い物方法などのライフスタイル全般が大きく変化しましたので、その対応が急がれます。

 

夏季休暇のお知らせ  8月7日(土)~8月15日(土)

 

 

エシカル消費

 ここ数年SDGs(持続可能な開発目標)という言葉を耳にする機会が増えました。SDGsはさまざまな社会問題を解決するために2030年を達成年限としての17のゴールと169のターゲットから構成されています。1,貧困をなくそう 2,飢餓をゼロに 7,エネルギーをみんなに、そしてクリーンに 10,人や国の不平等をなくそう 12,つくる責任、つかう責任(持続可能な消費と生活のパターンを確保する) 13,気候変動に具体的な対策を、等地球温暖化による気象災害や海洋プラスチックなど環境問題の深刻化、大量生産・大量消費・大量廃棄の経済モデルは見直しを迫られています。

こうした動きの中「エシカル消費」という言葉に注目が集まっています。「エシカル」とは「倫理的」「道徳上」という意味で倫理的なことは多くの人が正しいと思っていることをいいます。ですから「エシカル消費」とは環境や人権に対して十分に配慮された商品やサービスを選択して買い求めることをいいます。これまでの多くの消費者は、自分たちが使う商品やサービスの裏側にどんな背景があるのか、どんな人たちがどのような場所で、どのような環境の下でつくっているのかを、あまり関心を示してこなかったと思います。

ところが近年は、商品をつくるために劣悪な労働環境が常態化していたり、絶滅しそうな動植物が犠牲になっていたりしていることがわかると、その商品を買わないという選択をする消費者が増えてきました。日々の買い物を通して地球温暖化、生物の絶滅、資源の枯渇や長時間労働、低賃金、児童労働などを少しでも解決しようとする行動です。特に欧州では環境や人権に対する意識の高まりもありFSC認証やMSC認証のラベルをつけた商品が目立つようになっています。スウェーデンのIKEAは中古品をアップサイクルで新しく生まれ変わらせ手頃な価格で販売する循環型ビジネスで成功しています。ユニクロは消費者から回収した不要になったダウンジャケットの羽毛をリサイクルして新しいダウンジャケットを作って販売を始めました。コロナ禍で大量消費モデルは転換を余儀なくされサステナビリティ(持続可能性)対応のスピード感が各企業の明暗を分ける分岐点となりそうだからです。消費者は危機下だからこそ企業姿勢をよく見ているからです。米国は「ユニクロ」のシャツの輸入を禁止しました。人権侵害のある中国ウイグル自治区で生産された綿花を使っているとの理由からです。ユニクロはシャツの原料はオーストラリアなどで調達しており中国とは関係ないと反論しましたが、証拠不十分として受け入れられませんでした。ユニクロは「政治問題については言及しない」との立場ですが、米国内における売り上げは低く、中国の売上が全体収益に占める比率が高いだけに両国の狭間で苦悩は深まらざるをえません。

バイデン米国大統領はパリ協定へ復帰して地球温暖化防止に取り組む姿勢を鮮明にしました。米国の変化で世界的な脱酸素の流れは加速して大きな転換期に来ました。EUでは2023年に脱炭素への取り組みが不十分な国の輸入品に関税(国境炭素税)をかけます。そして2035年にはガソリン車の販売を禁止します。国際的な理念より環境破壊と人権侵害によって造られた製品は輸入拒否あるいは関税をかけるなど国際貿易のルールが大きく変わりつつあるのです。

消費者は「流行」や「価格」とは別の基準となる「この商品は誰が、何処で、どのような環境下で造られたのか」といったことをより敏感に意識するようになってきました。

企業は「なぜ自分たちが、こうした商品提供するのか」という姿勢を明確に消費者に伝えることが求められ、社会問題を全力で考え、取り組む姿勢こそが生き残りの条件となってきました。

 

 

 

 

<新商品発売のお知らせ>

ドリップフィルター「茶楽らく」

「淹れる手間よりも捨てる手間」とよく言われますが、お茶を淹れるのは面倒だとは思わないが、使用した後の茶殻の処理を面倒だと思っている消費者の方は意外と多いものです。

そこで今回、使い捨て型の急須・カップ用のティーフィルターを開発いたしました。

このドリップフィルター「茶楽らく」を使用することによって、捨てる手間と洗う手間が簡単になり、手軽にリーフ茶を楽しむことができます。リーフ茶の消費低迷により、茶業界は大変苦戦を強いられておりますが、本製品を使用することにより、リーフ茶復活につながればと思い、本商品を開発いたしました。ロッドや価格等、お気軽にお問合せください。

Mail:nakane@kakegawa-cha.co.jp

TEL:0537-23-3252