深蒸し茶

2020年9月 茶況_No.362

令和2年9月25日

茶園では天候を見ながら秋肥などの茶園管理を進めています。9月末から秋冬番茶の製造が始まりますので機械の整備などの準備も進めています。夏場の猛暑の影響から茶園の芽伸びが悪く減産になると予想されます。秋冬番茶は主にドリンク原料として使用されますがコロナの影響で外出制限や自粛の継続、東京オリンピックや各種イベントの中止などでドリンク需要の減少につながっています。伊藤園の5~7月期の決算は売上高13.5%減、リーフ・ドリンク関連売上高は11.5%減、コンビニ・自動販売機での購入機会の減少が影響したと発表されました。秋冬番茶の需要動向に関心が集まっていますが、ドリンク需要と量販店需要に限られますので仕入する問屋も県内5社に1社位の一部問屋に限られます。しかも、昨年産の在庫もありますので引き合いは弱いと予想されます。

産地問屋は秋需要に向けた販売計画を練っていますが厳しい状況は続いています。リーフ茶の消費低迷に苦しむ業界は販路開拓が緊急の課題です。県立大学・岩崎邦彦教授の東京消費者1000人調査によりますと「急須をお持ちですか」の問いに「急須あり・使用中51%」「急須あり・未使用17%」「急須はない32%」と回答しています。「どのような方法で緑茶を飲みたいと思いますか」の問いには「急須64%」「ペットボトル23%」「ティーバッグ7%」「パウダー5%」の順でした。「茶葉からいれる緑茶を飲まない理由は」の問いには「面倒くさい40%」「急須がない5%」「ペットボトルを飲む4%」「手間がかかる4%」の回答でした。この結果には、たくさんのヒントが隠されています。消費の変化に対応するには?消費者目線に立ち返って不満を解消する。「緑茶を飲んでリラックスしたい」と思っている人たちがたくさんいることも分かりました。なくては困る緑茶にするには?深堀りしてニーズに合った強い商品を生み出す、そして次なる展開を考える茶業界の描く将来構想の戦略が問われています。

例年この時期は「全国お茶まつり」が開催され全品に出品された入賞茶の落札結果が話題になりますが、今年は安全を最優先して「全国お茶まつり鹿児島大会」が中止となりました。74年続いた歴史の中で中止は初めてです。全国から茶業関係者が集まり消費拡大イベントを発信する予定でしたが、まことに残念です。

消費地では、朝夕の暑さが急にやわらぎ「口切り新茶」など秋に向けた需要に期待しています。家庭消費の「茶葉離れ」や「販売チャネルの変化」「コロナ禍の客数減少」など厳しい経営環境は続きます。コロナの感染拡大から半年余り、景気の先行き不安から節約意識が高まり値下げ合戦など消耗戦になってきました。淘汰や再編は避けられず、閉店が過去に例のない勢いで進んでいます。百貨店も売上の落込み幅が拡大して閉店が相次いでいます。西武岡崎店・大津店、そごう西神店・徳島店・川口店(来年)、高島屋港南店が閉店しました。ネット通販や郊外ショッピングセンター・アウトレットなどの普及により百貨店の利用減が進みコロナ禍が追い打ちをかけた形です。終了時には大勢の人が集まり「思い出をありがとう」のメッセージで埋め尽くされましたが、時代の変化・消費者の変化は容赦なく進み、コロナ禍で変化の方向を変えそのスピードを一気に早めています。

本業を生かした次なる展開とコロナ後の将来構想など、成長するか衰退するかの分岐点は経営者のくじけない強い気持ちに懸かっているようです。

 

 

 

新たな付加価値と新事業の創出が鍵

 菅義偉首相が就任会見で最優先課題に挙げたのは、新型コロナウイルスの感染予防と経済再生の両立という難題でした。倒産や失業が増えるなか経済活動の再開を優先させる姿勢が目立つ菅氏ですが、感染拡大の懸念は消えていません。新型コロナウイルスが世界経済を痛め続け、対策を講じながら経済活性化を目指すしか生き残る道はないとの考えからイベント制限緩和や「GOTOキャンペーン」など、政府はアクセルを踏み始めました。2度の補正予算で58兆円の国費を投じて対策を実施してきましたが、あと使える予備費の残りは8兆円です。今後、倒産や失業がさらに増えれば第3次補正予算を組んで独自色を打ち出すのではとの声も出始めています。コロナの影響が長引けば中小企業の12社に1社が廃業を検討する可能性があるとの調査結果が出ました。中小企業は全国で357万社ですから30万社が該当します。中小企業が雇用の7割を支えていますので、現実となれば「雇用の崩壊」が起きます。廃業に至らなくても人件費の削減や従業員の解雇に手を付けなければ生き残れない企業も出ていますので、解雇や雇止めは6万人を超え増加に歯止めがかからない状況です。雇用を担う中小企業への支援は急務ですが、現在は政府の持続化給付金や金融機関を通じた資金繰り支援で、なんとか息をつないでいる危篤状態です。全国金融機関の8月の貸出残高は前年比6.7%増の574兆円と過去最大となりました。好条件な無利子・無担保融資の利用が広がったことが要因です。中小企業の新規申し込みはピークを越えましたが、今後は疲弊した取引先の経営をどう立て直すかが金融機関の課題です。政府の給付金や融資といった支援が徐々に行き渡り、コロナ関連倒産は増勢が一服してきました。とはいっても解雇・雇い止めは6万人超、採用内定取り消しは76事業所と前年の5倍となっています。決算もJR東日本は売上35%減4180億の赤字、JR西日本2400億円の赤字との業績予想を発表しました。夢の国・東京ディズニーランドも厳しい冬を迎えます。今冬のボーナスを7割カット、転職などの選択肢を提示、人件費を抑制して業績悪化に対応する考えを示しました。コロナがいつ収束するか見通せない中、いかに経営改善を進めるのか経営者の手腕が問われています。販売が激減して閉店や倒産が相次ぐアパレル業界で「ユニクロ」と「ワークマン」は順調に売上を伸ばし元気です。明暗を分けているキーワードはどこにあるのでしょうか?外出機会の減少でよそ行きの服が売れなくなった一方で在宅向きの快適な服が選ばれているからのようです。ユニクロの8月の来店客数26%増、売上30%増と家で過ごしやすい服としてユニクロブランドが選ばれている結果です。ワークマンは建設現場の作業衣が主力でしたが、近年は一般客への販売にも注力して8月は売上11%増と4ヵ月連続で2桁増が続いています。弊社西隣に現在建設中のニトリが12月末にオープンしますがニトリは元気です。同じ家具を扱っていても大塚家具はヤマダ電機の傘下に入り元気がありません。どこが違うのでしょうか?

コロナ後の経済はどう変わるのか?各国政府は感染症対策と経済活動のバランスを探り、企業は事業の継続や再構築に悩みもがいています。テレワークが広がって仕事のやり方が変わる、サプライチェーンの分散化が進む、企業や行政のデジタル化は不可欠、デジタル庁新設デジタル革命への対応なしには生き残れない等、様々なイメージが語られるようになりました。新たな販路開拓や抜本的な社内改革、新常態を見据えた長期的な戦略づくりが始まっています。コロナ禍を生き抜き、コロナ後の復調期を見据えた全体戦略の検討が急務です。これまでとは違った新たな付加価値と新事業の創出が鍵になりそうです。社会の変革を背景に再編は加速し、いや応なしに淘汰は進みます。市場の変化に対応できるかどうか、これからの2年間が勝負の年となりそうです。

 

 

 

<新商品発売のお知らせ>

ドリップフィルター「茶楽らく」

「淹れる手間よりも捨てる手間」とよく言われますが、お茶を淹れるのは面倒だとは思わないが、使用した後の茶殻の処理を面倒だと思っている消費者の方は意外と多いものです。

そこで今回、使い捨て型の急須・カップ用のティーフィルターを開発いたしました。

このドリップフィルター「茶楽らく」を使用することによって、捨てる手間と洗う手間が簡単になり、手軽にリーフ茶を楽しむことができます。リーフ茶の消費低迷により、茶業界は大変苦戦を強いられておりますが、本製品を使用することにより、リーフ茶復活につながればと思い、本商品を開発いたしました。ロッドや価格等、お気軽にお問合せください。

Mail:nakane@kakegawa-cha.co.jp

TEL:0537-23-3252