深蒸し茶

2020年4月 茶況_No.358

令和2年3月27日

茶園では新芽の生育状況を調べる萌芽調査が始まりました。当初は早いと予想されていた初取引も例年並み(22~24日)になりそうです。昨年の秋から冬にかけての多雨と日照不足と暖冬による冬眠不足が新芽にどのような影響を及ぼすのか対応が難しい新茶になりそうです。今のところ降水量は多めに推移して順調な生育状況です。これからは防霜対策を万全に行って機械整備・工場清掃など新茶期を迎える準備をします。

産地問屋は新茶期前の冷蔵庫内の整理や仕入予定数量の把握など新茶期を迎える準備を進めています。今年は新茶取引の様子も様変わりしそうです。茶市場の初取引のセレモニーは規模縮小、見本茶の素手での接触禁止、味見用のスプーン撤去とマイスプーン持参、マスクとビニール手袋の着用、取引交渉は1メートル以上離れてなどが決まりましたが、静岡の場合は昔ながらのソロバンを片手に丁々発止の値段交渉が根付いているだけにどこまで徹底できるのか分かりません。取引先の廃業や売上不振に加えコロナ不景気も重なって新茶前のムードはよくありません。

消費地では「予約新茶」の注文を受け付けていますが、前年並み確保は難しそうです。店頭販売もコロナウイルス感染拡大による客足減少や暖冬の影響で厳しい状況が続きます。「これまでになく売れ行きは低迷している。このままでは新茶シーズンの情勢も厳しそう」といった声も聞かれます。

世界中で新型コロナウイルスの感染拡大が止まりません。感染者は50万人、死者は2万5千人(3/27)と急速な拡大に各国は外出制限や都市封鎖が始まりました。東京五輪も来年以降に延期されましたが、エコノミストからは経済損失が3兆円を超えるとの見方も出ています。トヨタ・ホンダ・日産・マツダ・スズキなどは一部の稼働を休止して生産台数の調整に入りました。当初は従業員への感染防止のためでしたが、世界的な需要減による生産停止に変わりつつあります。またあらゆる中小企業にも深刻な影響が出ています。特に宿泊・運輸・飲食・レジャー・百貨店などは深刻です。従業員の解雇や採用内定取り消しという苛酷な道を選ばざるを得ない企業も激増しています。宿泊は現在35%減ですが五輪延期により大量のキャンセルが発生しています。国際線の便数は66%減、観光バスは90%減、飲食店は大人数の宴会パーティーがすべてキャンセルとなり売上ゼロの日もあります。ディズニーランドもUSJも再開の目途は立っていません。百貨店は外国人客の売上減と日本人客の消費手控えにより40%減と過去最大の落ち込みになりそうです。「これ以上続けば店を休むことも視野に入れる」との声も出て来ました。政府は大規模な財政出動で対処しますが、内部留保を持つ大企業は持ちこたえられるでしょうが中小企業のコロナ廃業・倒産は避けられない見通しです。専門家はワクチンが開発される前の終息は難しいとみています。ワクチン開発には1~5年かかるとされ1年で終息の見通しは薄いと注意喚起します。掛川で昭和29年創業の「郷土新聞」が休刊になりました。地域の身近な話題を提供して60余年、郷土の情報の火が消えて残念です。静岡県内では最大の書店「戸田書店」が静岡市の本店撤退を決断しました。出版不況やネット通販による売上減少が原因のようです。地方の百貨店の閉店ラッシュも止まりません。徳島県や山形県など百貨店ゼロの県も出始めました。昔、「時代は変わったのよ」なる言葉が流行りましたが最近の急激な変化には戸惑うばかりです。

 

 

変革せよ、変革を迫られる前に

 この一言はアメリカの実業家ジャックウェルチの言葉です。「変わらなきゃ」と思った時には、もう変わるタイミングを逃していることがほとんどのようです。そうならないように、変わるべきポイントを先んじて見つけるために頭がチギレル程考えることで、新たな成長エンジンを見い出すことが重要だと説きます。

今から50年前、大手スーパーは郊外出店を加速しました。核家族社会と車社会の到来が予想されていましたので、出店は消費者ニーズに応えるためでした。その後バブル期のブランド志向を経て、ネット販売の広がりや経済のグローバル化から低価格志向に移行しました。現在のショッピングの風景は昔と様変わりしました。店に足を運び好みの品物を選ぶ楽しみがデジタル化で「売り場」は必ずしも必要なくなりました。検索すれば簡単にどこが安いか分かるようになり、価格を見極める目は当然厳しくなります。「アマゾン・エフェクト」と言われますが、ネット販売の普及で百貨店や専門店が相次いで破綻しています。アマゾンは売り方だけでなく倉庫内の全自動化や実店舗スーパーではレジなし無人化スマホ決済など、次元の違う生産性の高いビジネスを展開しています。20年前には欧州のスーパーが相次いで日本に進出し黒船来襲と騒ぎましたがその黒船を打ち負かしました。今回のアマゾン・エフェクトは外国というより別の惑星から競争相手が現れたような感じです。日本のネット比率は6%、米国10%、中国15%となっていますが、今後はこのネット比率がさらに増えると予想されます。これまでは新規出店や、改装を優先してきた小売業も、これからはネット広告や物流センターなどネット通販の強化に備えた分野へ優先的に資金を回すようになります。変化に対応できるようにトレンドを把握できる社長の交代も視野に入れます。百貨店・書店・新聞・銀行なども早めに対応しなければ厳しい状況に置かれるでしょう。米高級百貨店「バーニーズ」は97年の歴史に幕を下ろしました。ネット通販の拡大や賃料高騰の影響で行き詰まったのです。パリの老老舗百貨店ボン・マルシェは厳しい経営が続いていましたが、一流の仕入担当者が世界中からこれぞという商品を集めて高所得者層から高い評価を受けて再建に成功しました。

自動車業界も自動運転になり、自家用車で無く必要時に利用する車の共有化が進むと販売台数の減少につながるのではと不安はつのります。若者の車離れが指摘されています。社会人になってからの最初の夢が、私生活を充実させるためのマイカー購入だったのは「今は昔」のようです。いち早くトヨタはソフトバンク・NTTと組んで近未来都市「スマートシティー」構想に着手しました。物事は予想通りに進めば何の問題もないのですが、大きなリスクも伴います。水素で走る燃料電池車の普及を見越して水素ステーションを114カ所建設しましたが、燃料電池車の販売が伸びずに後5年は赤字が続きそうです。「鶏と卵論争」ではないですが、車の販売が先かステーション整備が先か、危険なリスクは常についてまわります。100年に一度の技術革新に直面していると言われる自動車業界。その先行きは世界経済の行方をも左右することになりそうです。

消費者のニーズは大きく変わり、小売各社はネット化、デジタル社会への対応に追われ、かってとは「次元が違う」局面に置かれています。それは金融・自動車・旅行・メディアなど他の業界も同じです。業界内のライバルを警戒していればよかった時代は終わりました。人口減少、高齢化、所得格差の増大、大都市集中と地方過疎化、スマホ決済やSNSサービスなどにどう対応していくのか、そして新たな成長エンジンは見い出せるのか、変革を前に経営者の手腕が問われています。

 

 

 

 

<新商品発売のお知らせ>

ドリップフィルター「茶楽らく」

「淹れる手間よりも捨てる手間」とよく言われますが、お茶を淹れるのは面倒だとは思わないが、使用した後の茶殻の処理を面倒だと思っている消費者の方は意外と多いものです。

そこで今回、使い捨て型の急須・カップ用のティーフィルターを開発いたしました。

このドリップフィルター「茶楽らく」を使用することによって、捨てる手間と洗う手間が簡単になり、手軽にリーフ茶を楽しむことができます。リーフ茶の消費低迷により、茶業界は大変苦戦を強いられておりますが、本製品を使用することにより、リーフ茶復活につながればと思い、本商品を開発いたしました。ロッドや価格等、お気軽にお問合せください。

Mail:nakane@kakegawa-cha.co.jp

TEL:0537-23-3252