深蒸し茶

2019年9月 茶況_No.351

令和元年8月28日

秋の気配が感じられるようになった茶園では、施肥や防除などの管理作業が続いています。涼しくなったとはいっても、気温の高い日中の時間帯は避けて、朝夕の涼しい時間帯に茶園巡回や茶園管理を進めています。そして、今年の最終製造となる9月末から始まる秋冬番茶に備えて生産計画を練り準備をします。今年の茶価低迷を受けて複合経営に切り替え、トウモロコシ・さつま芋・コンニャク芋などに取り組んでいる生産者もいます。茶以外の農産物の生産に取り組む農家数も増えて、転作に必要な知識や技術、品目や販路などの勉強会も各地域で開催されるようになりました。一番茶は13%減、二番茶は約20%減と減産にもかかわらず単価安で農家収益は下がる一方です。このまま来期も生産を続けるかどうか、多くの生産者は岐路に立たされています。

産地問屋は仕上げ発送業務を進めていますが8月の出荷は夏休みも入り「水出し緑茶」以外の出荷は少なくなります。静岡銀行が発表した製茶業の四半期見通しは「低調」と予測、製茶問屋の売上高は厳しい状況が続き経営は厳しさを増すとの見通しでした。6月の緑茶購入額はリーフ茶315円に対し茶飲料は686円とリーフ茶とドリンク飲料の差はますます拡大しています。今年は一番茶・二番茶ともに平成の最安値を更新して、急須で入れる茶の消費低迷ぶりが明確に表れた年でした。そして、相場が大手茶商や飲料メーカーの手に握られている実態が鮮明に表れた年でもありました。

消費地では、早目に来る秋口からの茶の需要増に期待して販売計画を練っています。店頭の呈茶も「冷茶」から「温かい茶」に切り替えるお店もありますが、「ご来店いただきましてありがとうございます」の感謝の気持ちは、いつも忘れません。お店に何回も足を運んでもらえるように「ピカピカ運動」を続けているお店もあります。お店を整理・整頓・清掃でピカピカにする、ピカピカの商品を並べる。英語や中国語のPOPで外国人にも目に止まるようにする。女性の目線に着目した商品開発やお店づくりによってお店に来ていただける回数を増やす努力を続けます。米高級百貨店バーニーズが経営破綻しました。小売業をめぐる厳しい環境と高い家賃が破綻原因のようです。日本でも消費者は百貨店で実物の商品を確認して買うのは安いネット通販といった「ショールーミング」なる消費行動の人が半数近くいますので百貨店は厳しい経営状況にあります。2019年から2020年に閉店予定の百貨店は18店舗に上ります。逆にネット通販最大手アマゾンはニューヨーク中心部で1月に閉店した老舗百貨店ロードティラーの跡地に新拠点を検討していると発表しました。時代の変化、トップの経営手腕の優劣によって明暗がハッキリと別れた形です。

米中貿易摩擦の激化と悪化の一途をたどる日韓関係が景気に暗い影を落としています。過去2回のタピオカブームの時も不景気と重なったそうですが、今回のタピオカブームも円高ドル安と世界同時株安が到来して市場混乱と景気後退に拍車をかけています。

静岡県には自動関連の工場が多数ありますが、自動車も世界で販売台数が落ち込んでいます。日産は欧米での販売低迷が響き世界14拠点で計1万2500人を削減する構造改革を発表しました。マツダ、スバル、スズキも大改造改革を進めます。景気後退が各企業を苦しめていますが、我々の業界も厳しさを増す専門店、生産農家、産地問屋も今までの成功体験にとらわれない斬新な発想と行動力で販路開拓に挑む構造改革が求められています。

 

 

 地球温暖化とは、二酸化炭素(CO2)が大気中に放出されて地球全体の気温が上昇する現象のことです。地球規模で気温が上昇しますと氷河などの融解により海面が上昇、また気候変動により異常気象が頻発する恐れがあります。18世紀後半の産業革命以降、化石燃料の使用が増え大気中のCO2濃度は増加していますのでCO2削減のための様々な取り組みを行う必要があります。地球上の森林がCO2を吸収して酸素を放出する大事な役目を任なっていますが、増え続ける二酸化炭素(CO2)の量にはとても対処できていません。森林が1年間に吸収してくれるCO2の量は114億トンと見積もられていますが、世界の国々が輩出しているCO2の量は267億トンと森林が吸収できる許容量をはるかに超えています。このため地球上の大気中に残る二酸化炭素(CO2)の量は、毎年当たり150億トン以上にのぼり地球温暖化を進めてしまっていると見られています。ですから世界でCO2の排出量を削減していかなければならないのです。

最近30年の各10年間は過去のどの10年間よりも高温を記録しています。最高気温が30℃以上となる真夏日の日数は更に増加することが予測され、東京の現在の真夏日は年間約46日ですが21世紀末には年間約103日と予想され1年間の3割近くが真夏日となります。今年も東京の練馬で36.9度、新潟の中条で40.7度、愛知の豊田で38.9度を記録しました。世界へ目を向けるともっと大変なことが起こっています。欧州など各地に地球温暖化に伴う熱波が到来しています。フランス45.9度、チェコ38.9度、ドイツ38.6度と熱波に襲われ熱中症で亡くなる人や食料の供給不安を招いています。熱波と乾燥により森林火災も世界で多発しています。カナダでは61万ヘクタールの森林が消失、シベリアでは330万ヘクタールが、アラスカ、グリーンランドでも膨大な森林が消失しています。アマゾンの熱帯雨林では未だに燃え続け世界的な緊急事態になっています。

アイスランドでは、氷河のほとんどの氷が溶け追悼式が行われましたが、地球上の氷河はかっての半分です。後200年ですべての氷河が溶けると海面水位は82㎝上昇すると予測されています。国によっては、国土全体が海に沈んでしまう危険も増大しています。過去100万年の間に地球上には複数回の氷河期が存在し、寒冷な期間と温暖な期間が繰り返されてきました。このままでは地球が危ないという話をよく耳にしますが、地球はそんなに柔ではありません。自分が危なければ、先に人類を滅亡させて自分の生き残る道を捜すでしょう。氷河期の再来から生物の滅亡もSFの世界の出来事ではありません。このままの経済活動を続けた場合には100年後には4度前後の気温上昇が予測され取り返しのつかない事態が予測され、地球の危機的状況は続きます。

国連の報告書は温暖化から洪水や干ばつで農地が荒れ穀物の価格が高騰する恐れがあると警告しています。日本の昨年の食料自給率は37%ですが、農業人口の減少と高齢化に伴う生産基盤の弱体化に天候不順が加わり過去最低の水準に落ち込みました。いつでも輸入で賄えるという意見もありますが、地球規模で食料不足が進めば、思い通りに輸入できなくなる日が来るかもしれません。日本の農政も日本農業の現状を直視して自給率向上に力を注ぐべきではないでしょうか。

地球温暖化の危機を訴える活動を続け、ノーベル平和賞候補にも取り沙汰されているスウエーデンの16歳の少女が国連の会合に出席するためニューヨークまで太陽光パネルを搭載したヨットで向かうと表明しました。地球温暖化対策と脱プラスチック社会はG7首脳会議でも主要議題となり世界の大きな流れとなっています。電気自動車、水素エネルギー、AI(人工知能)、ドローン、農業ビジネス、人手不足解消などビジネスチャンスの流れも環境問題を背景に大きく変わろうとしています。