深蒸し茶

2019年10月 茶況_No.352

令和元年9月25日

生産者は、まもなく始まる秋冬番茶の準備をしていますが夏場の猛暑と減肥の影響から芽伸びが悪く減産傾向です。秋冬番茶は、今年の茶価の一番下値になりますので主にドリンク原料として使われますが食品スーパーのお茶売場の玄米茶やほうじ茶としての需要もあります。ドリンク原料を扱う大手は数量確保に動きますが、昨年在庫もあるようですので若干弱気配の展開が予想されます。静岡県では茶園の耕作放棄地対策としては付加価値をつけた商品開発をして静岡茶の市場を広げる必要があるとの方針を説明しました。牧之原台地を茶の都として整備していく「茶の都」構想も発表し、茶業研究センターも再整備されます。茶業の先端研究拠点として技術開発の強化とともに静岡茶の販路拡大に向けたマーケット戦略の担当部門も設置する予定です。民間レベルも農商工連携の動きが加速しています。高齢化が進む農業の課題解決につなげたいと農業ロボット開発の動きも相次いでいます。スズキは搬送を支援する車両型ロボットを試験開発をしました。将来は無人での農薬散布や雑草処理などの追加技術の開発も進める方針です。JAグループも農協改革を進めています。米や野菜を外食チェーンに直接販売したり、農地バンクを設置して農地の貸手と借手、売手と買手のマッチングや農地集積を担当します。耕作放棄地を再生することにより規模拡大や地域振興と地域雇用にもつながるとJA組合には喜ばれています。

産地問屋は、これから始まる秋冬番茶の受入準備をしています。秋冬番茶はドリンク需要と量販店需要に限られますので扱う問屋も一部問屋に限定されます。9月は産地問屋間取引も静かで本茶・出物ともに動きは見られませんでした。これから品評会入札が各地区で開催されますが、入札結果が今後の茶況の判断材料になりますので注目しています。既存の販売ルートは苦戦していますので新市場の開拓に努めていますが、販売数量は限定的で費用対効果にプラス材料は見られませんので厳しい経営状況は変わりません。今後の戦略の良否は産地問屋の廃業も含め各社の先行きを左右します。リスクへの対応に配慮しながら事業拡大や構造改革といった成長への攻めや戦略を維持できるのかトップの手腕が問われています。一時は株式時価総額が1兆円を超えた「ZOZO」の前澤社長が経営の表舞台から去りました。ZOZOのさらなる成長とアマゾンに対抗するためにヤフーへの株式壌渡を決断しました。カリスマ創業者の退場後、社長を慕って集まった幹部が離れ、成長軌道を保持できるかは不透明で不安が広まります。

消費地では「秋の売出し」の準備を進めながら消費増税に向けた準備を進めています。消費者からは支払総額が分かりやすい税込表示を求める声が多く聞かれますが、税抜表示で少しでも安さを打ち出したいお店や、同じ商品で持ち帰りと店内飲食で税率が異なるために税別表示を選択するお店もあります。キャッシュレス決済を導入する動きも次第に広がっています。ポイント還元制度や訪日外国人客への対応を急ぎ売上増につなげるのが狙いです。しかしキャッシュレス導入のための費用負担は重く、複雑化する事務手続きと設備投資で消費増税を機に廃業するお店も出ています。消費者の節約志向は根強く、消費増税を機に消費不況と価格競争がますます激しくなるのではと心配する声も出ています。ある専門店は「大切なのは消費者目線。買いやすさと茶の魅力をアピールして商機を広げたい」と前向きな姿勢を語ってくれました。

 

 

C A S E(ケース) 

 スズキとトヨタが資本提携することで合意したニュースは各紙一面に掲載されビッグニュースとなりました。2017年に業務提携をしていますので互いの株式を持ち合うことで、さらに関係を深め協業をさらに進めることになります。長年スズキの経営を率いてきた鈴木修会長でも後ろ盾なしでは厳しい時代に入ると判断し、生き残るために新たなパートナーとしてトヨタを選択したのです。トヨタの豊田章男社長も、これからは「勝つか負けるか」ではなく「生きるか死ぬか」だと危機感をあらわにしています。自動車業界のビジネスモデルが将来は通用しなくなるという危機感からです。そして「トヨタは大丈夫というのが一番危険」と自らを鼓舞します。これからは車販売だけでは生き残れない、消費者との接点を増やし移動に関するあらゆるサービスを提供する会社に生まれ変わるため、将来は自動運転EVで移動・配車・物販も手がけるという未来図です。そのために自らソフトバンクの本社を訪ね「そろそろ我々が組むときだ」とカラーの違う企業どうしの提携をトヨタから持ちかけました。自動車業界は100年に1度ともいわれる大変革期を迎え技術開発競争に単独では難しいと開発を急ぐための資本・業務提携する動きが世界的に加速しています。技術革新の大きな波に団結して対応する必要があると判断したためです。 車社会を一変させる「CASE」って何?CASEは4つのキーワードの頭文字を取った造語です。「C」コネクティビティ(接続)、「A」オートノマス(自動運転)、「S」シェアード(共有)、「E」エレクトリック(電動化)。自動車産業もこの流れに乗らないと生き残れないという危機感を持っています。電気自動車を自家用として持たないでシェア(共有)する、自動運転で目的地まで行く、これが車社会の未来の姿ととらえているのです。「C」

(接続)はセンターディスプレイに「近くの駐車場を探して」=「ルートを表示します」、「迂回路を教えて」=「ルートを計算して音声案内します」などインターネットと常時接続して要望に応えます。「C」接続はアップルやアマゾンの得意分野です。未来の車社会は巨大IT企業も参入して大変革期が来ると予想しているのです。地球温暖化対策を背景に世界の自動車業界はCO2を排出しない電気自動車(EV)にシフトしています。エンジンならトヨタ・ホンダには絶対に勝てませんが、電気自動車が主流になって動力がモーターになればIT企業にも勝機は充分にあります。自動運転のグーグル、配車アプリのウーバーも参戦するでしょう。都市部に住む人は乗る場所と時間をアプリで予約すれば面倒な手続きが不要で指定場所から乗車することができてとても便利です。地方に住む人は、車は所有しても毎月定額の1万円位でリースする人が増えるでしょう。自動車業界は「CASE」時代に入って賄いきれないほど増大する投資負担に体力は消耗し、どのように対応すべきかを根本から見直しているのです。

茶業界も100年に1度の大変革期を迎えています。手揉みから高林式機械へ、在来種からやぶきた種へ、そして深蒸し茶、ペットボトル飲料、粉末茶へと時代とともに変化して来ました。しかしペットボトル飲料が主流になり急須で入れるリーフ茶が苦戦して茶価がこんなにも下がるとは誰が予想したでしょうか…。急須で入れるリーフ茶の消費低迷により茶業界も変わらなければいけません。今までは「味」を主流に開発してきましたが、これからは心を癒してくれる「香」へのシフトも重要な要素だと思います。「入れる手間より捨てる手間」と昔からよく言われますが、お茶を入れるのは面倒だとは思わないが、使用した後の茶ガラの処理を面倒だと思ってる消費者の方は以外に多いものです。そこで今回、急須に使用できるドリップティーフィルター「茶楽らく」を提案してみました。本製品の利用が広がり、リーフ茶復活の大変革に繋がれば望外の喜びです。