深蒸し茶

2018年8月 茶況_No.341

平成30年8月9日

猛暑が続く茶園では、朝夕の涼しい時間帯に水分を補給しながら施肥や防除などの茶園管理が続けられています。日中は熱中症にも注意して、とても作業できる状態ではありません。一茶、二茶と2回の摘採と連日の猛暑で茶の木も衰弱していますので回復に向けて茶の木に樹勢がつく管理が大切になります。先日終了した台ならし番茶は430円前後と昨年より20円~30円安い相場で終了しました。買い手はドリンク関連業者に限られ数量補充の動きが目立ちます。生産者からは重油も電気も値上がりしているので、これでは継続して生産できる価格ではないといった声も出ています。肥料を減らしたり、管理が手薄になってしまうと品質と生産量に影響が出るのではとこれからが心配されます。一茶取引が低調なのに対して二茶・秋冬番茶を飲料関連業者が下支えする傾向が続きますと茶農家もお茶だけで生計を立てるのは厳しくなってきます。山芋・レタス・栗・竹の子・ニンニク・ミニトマトなどの作物を生産する兼業農家も増えてきました。高齢農家が手放す茶園も乗用型摘採機が入る茶園でないと借り手も買い手もないありさまです。人的余力がなくて数量が伸ばしにくい状況が続きますとドリンク原料となる下級茶供給が追い付かない状態も考えられます。9/20頃から始まる秋冬番茶もドリンク関連業者からの数量確保の引き合いが強く、すでに予約注文を受けている工場もあります。

産地問屋は夏休み前の仕上・発送作業を進めていますが猛暑の影響から出荷状況は前年比15~20%減の非常に悪い状況が続きます。この状況が9月まで続きますと資金繰り悪化や過剰在庫になる可能性があります。「水出し緑茶」が年間を通して売れるようになりましたので販売にさらに力を入れます。「フィルターインボトル」や「茶々丸」などのオシャレなガラス製茶器と一緒に奨めています。また外出時には「マイボトル」が便利ですと紹介します。最初から水で出す「水出し緑茶」と最初は湯で出したお茶を氷の入ったグラスに入れて急冷する「冷茶」。暑い夏にはお客様のお好みでお楽しみ下さいと説明します。掛川市と商工会議所青年部は市内飲食店で乾杯ドリンクに緑茶や緑茶割りを用いるよう「掛川茶乾杯条例」の制定を目指しています。市内の一部飲食店は既に緑茶を使った「緑茶割り」を提供しています。

消費地では「水出し緑茶」や「冷茶」の接茶を続けながら帰省土産などの手土産対応に努めています。連日の猛暑で商店街の人通りもまばらで涼しくなる夕方から活気を取り戻します。毎日の売上げ減は資金繰りにも影響が出ています。現在の状況が続きますと廃業するお店も出ます。「接客、清掃、品揃え」の基本3原則を徹底しているお店もあります。そして「不満・不便・不安」の3つの「不」の解消にも取り組みます。何が不満なのか、何が不便なのか、何が不安なのか、各お店でその解消に努めます。不安のトップ3は ①健康不安 ②経済不安 ③孤独不安と言われますが、急須で淹れるお茶を有料あるいは無料でゆっくりと楽しめる場を設けて地域の社交場になっているお店もあります。「店は客のためにあり、店員とともに栄え、店主とともに滅びる」と言われますが、お店はその店主の方針次第で結果に違いが出ます。お客様のために何をして、どうお迎えしたら良いのかを考え、店員とともに実践しているお店には頭が下がります。何をするかを考えることに大きな意味があります。

 

 

鶏 肋(けいろく)

 経営不振が続く大塚家具が自力での再建が困難な状況に陥り、身売り交渉を進めています。3年前の株主総会で父・勝久氏と委任状争奪戦を繰り広げた「お家騒動」の末、長女の久美子氏が経営権を握りました。彼女が真っ先に取り組んだのは父の経営路線の否定でした。とにかく「父とは違う」の一点に固執します。父が築き上げた経営手法を全面的に否定して「接客はするな、お客様が自由に見て買えるようにしなさい」と指示したので店の雰囲気は様変わりしました。「値段は高いままなのにニトリのようなお店になったわね」の言葉が来店客から、いつしか聞かれるようになりました。3年前に109億円あった預貯金は10億円に減少し資金繰りは急速に悪化しています。黒字転換に向けた具体策を8月の中間決算で示す必要があります。寝る間も惜しんで働き続けて大塚家具を築き上げた創業者、勝久氏は「他社に売るのではなく、なぜ私のところに相談に来なかったのか」とショックを隠せません。お家騒動でブランドイメージが傷付いたのに加え、ニトリやイケアなどとの競争に負けた結果です。

米国ウォルマート傘下のスーパー大手西友も売却に向けて動き出しました。売上規模は7000億円ありますが、業績低迷が続き人口減などで成長が見込みにくい日本市場からの撤退に傾いたと見られています。日本への本格参入から16年、西友を子会社化してから10年。米国流の「毎日が安売り」商法でデフレ日本をせっけんするとのとの思惑でしたが、日本の消費者の心は捉えられませんでした。2002年、西友を買収して開国を迫った米国ウォルマートは、まさに黒船襲来のイメージでした。規模は当時でイオンの10倍以上、ウォルマートが日本に進出したら飲み込まれるのは必至と大手小売業は恐怖感に支配されていました。あれから16年が過ぎ、黒船は赤く炎上しました。大型店が中心だった20世紀型消費が終焉を迎えたことを示す象徴のようです。日本流の食品スーパーに価格で追いつかれ、鮮度や接客で後塵を拝した形です。単純な安さだけでなく、買物に「楽しさ」や「付加価値」を求める日本の消費者ニーズをくみ取れなかったことが敗北の大きな要因です。

企業が衰退する大きな理由は時代の変化に対応できなかったからとよく指摘されます。現代の経営環境の変化はすさまじく、変化を見据えて打つ手を考えないと事業環境は厳しさを増し、破綻状態にすぐに陥ります。長寿企業と衰退企業の分岐点は①創業理念の希薄化 ②会社の寄って立つ場所が分からなくなり経営が迷走する ③社内の体質が「ぬるま湯化」して危機に対する感度が鈍くなる。と大塚家具の創業者、勝久氏は助言しました。「本人から連絡があれば相談に乗りたい」とも述べています。しかし現在の状況では沈み行く船を助けるのは無理でしょう。

 生き馬の目を抜く業界で「消費者ニーズ」対応と「顧客満足」競争に負けた2社は「中途半端」で埋没しました。2社の売却に向けた交渉は難航しそうです。表題の鶏肋(けいろく)とはニワトリのあばら骨のことで食べるほどの肉もないが捨てるには惜しいという意味です。中国の三国志の時代、曹操(そうそう)が劉備(りょうび)と漢中という地域の争奪戦をしているときつぶやいた言葉です。「大して役に立たないが捨てるには惜しい」の意のようです。