深蒸し茶

2018年3月 茶況_No.337

平成30年3月3日

茶園では新茶に向けた管理作業を進めています。茶草場農法を実践する茶農家は、茶草を刈り取って乾燥させ小さく切断してから茶園に敷く作業を行っています。同時に春肥の投入も始まりました。春先の低温や干ばつなどの天候の影響を受けにくい茶樹の若返りが必要と改植の準備をしている茶園も見られます。2017年全国の荒茶生産量は8万2千トン(2.2%増)と発表されました。一番茶は春先の低温や降雨の少ない天候不順により減産でしたが、ドリンク原料となる秋冬番茶は引き合いが強く、高値で推移したために生産量は前年を上回り一番茶の減産を穴埋めした形です。上級茶人気は低く、低価格帯の茶が売れる状態が今後も続くものと思われます。生産量の全国シェアは静岡38%、鹿児島32%、三重7%、京都4%となりました。鹿児島県との差の縮小が鮮明になった静岡県は茶業振興計画の見直しを進めています。品質面では多様化する消費者ニーズに対応するために有機茶や碾茶など実効性のある計画に見直します。生産面では、生産者の高齢化や担い手不足に対応して意欲ある担い手が効率的に作業できて生き残れるように農地の集積を進めていきます。

産地問屋は2月期決算のところが多く、棚卸を進めながら在庫調整に努めています。売上高は前年並からやや減、在庫はやや増といったところでしょうか。需要が低迷する上級茶の引き合いは今後も厳しいと見られますので仕入数量を減らす傾向にあります。2017年日本茶に対する消費者の意識調査が発表されました。

 

贈り物の日本茶はどこで買いますか

専門店 60% デパート16% スーパー 10%  通信販売 10%

 

普通どんなタイプの日本茶を飲みますか

ペットボトル 63% リーフ茶 58% ティーバッグ 35%

 

調査でわかったこと

1・自宅用はスーパー、贈答品は専門店で購入する人が多い

2・50代の男性と60代の女性が一番よく飲む

3・茶ガラの後始末が面倒だと感じている人が多い

4・洗うのが簡単な急須が欲しい

 

消費地では新茶シーズン向けた予約新茶のチラシやDM発送の準備を進めています。この先の消費の動向を知る上で押さえておきたいトレンドの一つに「おひとりさま世帯」の増加があります。2015年時点で全国の35%が単独世帯、東京都では全体の47%の世帯が一人暮らしです。渋谷区・豊島区・新宿区・中野区に至っては60%以上が「おひとりさま」です。一人暮らし世帯が増えると当然ながら消費は小口化します。キャベツなどは半分あるいはにカットしたものでないと売れません。お茶も従来の100g単位から、内容量を少なくした商品を品揃えに加える必要があります。この先の消費トレンドを考える上で「おひとりさま」消費がどこに向かい、何を求めているのかを知ることは、とても重要なポイントです。

 

 

維 新 の 時

 現在放送されているNHK大河ドラマ「西郷どん」は、極貧の下級武士にすぎなかった西郷隆盛が勝海舟や坂本龍馬らと出会い明治維新の大業を成し遂げていく物語です。

黒船来航とペリーの開国要求に国中が騒然とし、江戸幕府は、その戦力に動揺します。このままでは国が亡びると感じた一部の志士たちが立ち上がります。日本が自立した国家として新しい国づくりを始めなければ日本は滅びると。そして、中央集権国家である明治政府を樹立して近代国家を建設するのです。

明治維新の立役者となる西郷隆盛に新国家の青写真と世界観を説いたのは勝海舟と言われています。「幕府はいま、一時の無事を選んで、百年の大計を忘れている。まるで時勢というものが見えていない」と幕府の職にある勝海舟から幕府の方針を否定する言葉を聞いた西郷は驚きます。海舟の世界観は、現在の日本の対応を憂い、日本の将来あるべき姿を指し示すものでした。そして、海舟の弟子、坂本龍馬にも強く影響を受けます。後に西郷は坂本龍馬のことを「命も要らず、名も要らず、官位も金も要らぬ人は始末に困るものなり。この始末にこまる人ならでは、かん難を共にして国家の大業を無し得られぬものなり」と語っています。日本の進むべき道を見定め、小事を捨て大事を決めた明治維新。その立役者は西郷隆盛・勝海舟・坂本龍馬・高杉晋作などの英傑たちでした。明治維新を成し遂げた人たちは、世の批判や自分の損得で物事を判断しないで、大事を成すために是は是、非は非とする見識と、それを実行する胆力を持つ人たちでした。

 

私は前回の産地情報で「日本は乗り遅れた」と書きました。脱炭素社会を目指す世界のトレンドから大きく外れていますし、自動車・精密機器などハード面は優れているのに、ソフト面で大きく出遅れているからです。脱炭素、電気自動車、スマートフォン、AI(人工知能)など多くの分野で世界のトレンドから日本は乗り遅れました。先に起こり得る変化を読み間違えて成長戦略に乗り遅れたのです。世界は今、新産業革命ともいわれる第4次産業革命の真っただ中にいます。日本はどこに向かい、何をどのように行っていくのかという将来を見据えた戦略が大きく問われているのです。国家・企業は常に世界の時流や技術革新の流れを読まなければ生き残れません。時流を読むことの難しさ、決断のタイミングなど幾多の難関が待ち受けていますので、常にいつどうなるか分からないという危機感は当然のようについて回ります。

来年は明治維新の時に実施した「大政奉還」に似て新年号に変わる節目の時です。第二の維新の時とも言えます。この大事な時、世界の変化を見据えて、広い視野で日本の行くべき道を決断しなければ、日本は世界から取り残されてしまいます。いつの世も保身の風潮は強くありますが、私利私欲を捨て百年の大計を忘れない、西郷隆盛のような指導者を現代に期待しながら多くの人は大河ドラマ「西郷どん」を見ているのではないでしょうか。

世界が大きく変化するとき、時勢を見据え、問題意識を常に持ち続けて大事を決する西郷隆盛のような見識と胆力を私たちも日常的に心がけたいものです。

今回迎えている日本の維新が大河ドラマのような結末になって、明るい日本になれるように新年号の維新が成功してくれることを祈るばかりです。