深蒸し茶

2016年9月 茶況_No.323

平成28年9月5日

生産者は気温の高い時間帯を避けて、朝夕の涼しい時間帯に茶園管理を続けています。猛暑が続き水不足で樹勢は弱り気味でしたが、台風の影響による雨で茶園は息を吹き返しました。JA静岡経済連は、今季の県内産一番茶の生産量は5%減、二番茶の生産は10%~15%減と発表しました。生産量を公表している1953年以降では過去最低を更新しました。山間地では二番茶をやめる農家が増え、今季はそれが平野部にも広まって生産量が減りました。生産農家は売り上げが半減し、高齢化もあって生産意欲が減退しています。経営を続けていく採算ギリギリになってきたことも一要因です。買手が定まっていない工場や低品質茶の商談は特に厳しく、経営上の工場間格差は広がっています。9月中旬以降に秋番茶の生産が始まります。一番茶・二番茶・秋番茶と今年最後の製造となります。一番値下の価格になりますので、ドリンク関連業者は本数を予約して数量確保に動きますが、県内の8割の業者は必要としない価格帯となります。

茶問屋は注文に応じた出荷を続けていますが、消費者の節約志向や、今夏の猛暑の影響もあって前年並確保に苦戦しています。「フィルターインボトル」等の冷蔵庫内で使用するガラスポットの普及により「水出し緑茶」の出荷は前年比増になりました。 静岡県の企業の倒産が止まらないと発表されました。自動車産業や精密機械産業が集積しており、そうした企業の大手が海外へ工場移転してしまい、取り残された中小企業の破綻が目立つようです。また官庁予算の減少から建設業界も他県より多く破綻、魚離れや価格低迷から水産県でもある県内の水産業界の破綻も目立つようです。そんな中、スズキの鈴木修会長が「静岡県の経済が低迷していることに気付いて対策を講じなければ、将来大変なことになる」と講演会で呼びかけました。世界では部品数の少ない次世代型の車の開発が進むことにも触れ、激しい変化が起きていると語りました。リーダーとして大切なことはと質問されると「人に頼らず先頭に立つこと。そして自ら決断し、失敗だったら朝令暮改で引き返すこと」と話しました。そして、決断で重要なのは「コンピューターならぬ勘ピューターだ」とユニークな表現で会場を沸かせました。機械で答えが出るなら簡単、人から聞いたり、見たり、試したりした経験で決断力を養うと説明しました。「とにかく働くこと。足を使って歩き、手を使って触ってみる。五体を100%使って挑戦すれば未知の世界は開かれる」と参加者にエールを贈りました。

消費地では店頭で「水出し緑茶」の呈茶を続けながら、暑い中ご来店いただきまして「ありがとうございます」の感謝の気持を伝えます。「フィルターインボトル」が普及して「水出し緑茶」の売上は順調です。夏だけでなく年間商品としての企画も進めていきます。また「秋の売り出しセール」を控え、商品の準備や店内装飾を秋の装いに変えるなど徐々に忙しくなってきました。ある商店街のアンケート調査結果です。「暑さで街中に人が少ない」「人通りが少なくなり、お客様が減る一方」「客数・客単価が減少している」「お客様の高齢化」「現状打破のアクションを起こさない限り衰退する」「売上の減少により資金繰りが厳しい」「先が見えないので不安でいっぱいだ」。今後3か月の見通しについても、さらに厳しくなるといった声が多く聞かれました。。本格的な秋の到来と、需要増に期待します。

 

 

 

冬の時代が続く日本の小売業

 アベノミクスによる景気と消費浮揚ムードも最近は明らかにその馬脚が現れ「デフレ再来」とも言える状況に陥りつつあります。消費増税の再延期も、それが消費の下げ止まりと活性化につながると期待する人は誰もいません。逆に国民の不安感をいたずらにあおり、消費意欲をさらに減退させると見る向きが大勢です。人口減と少子高齢化市場で、競

争はとどまるところを知らないように激化するばかりです。世帯当たりの実収入は、昨年秋ごろから急速に悪化傾向であり、実収入の低迷と連動するように消費支出は昨年9月以降10ヶ月の減少となっています。近年の日本経済を勘案すれば商業全体にとって明るい要素は何一つ見当たりません。今後とも、わが国小売業の「冬の時代」は続きそうです。

小売業商店数は大幅な現象で、ピークの1982年が172万店、2014年は77万店ですから、この約30年間で95万店もの商店が全国から消滅したことになります。大手アパレルの場合、三陽商会やワールドなど大手4社だけで1600店以上が閉店しています。消費者の好みの変化や節約志向や競合激化など、変化への対応が遅れ、業績が悪化した各社はリストラを重ねています。不振が目立つ百貨店やショッピングセンター(SC)では「服が売れない」と苦戦が目立ちます。ところがインターネットでの衣料品販売は好調です。衣料品通販サイトの代表格「ゾゾタウン」の売上高は前年比42%増と販売金額・販売数量を伸ばしています。以前は「試着できない」「届くのに時間がかかる」などの課題があり、ネットで服は売れないと言われていました。しかし、IT技術の進歩によりバーチャル試着が可能になり、加えてきめ細かい物流サービスの登場により弱点は強さに変わりました。「実店舗に欲しい服が無くてもネットで買える」「干渉されずに1人で服を選びたい」という消費者の支持を得ました。服が売れない時代にネット通販は「服が売れる」場となりました。

ユニーグループでは傘下のコンビニ「サークルK」と「サンクス」を2019年までに6250店のうち約1000店閉めると発表しました。そして、ファミリーマートと経営統合して店舗名は「ファミリーマート」に統一され新しく生まれ変わります。「アピタ」や「ピアゴ」の店名で展開するスーパーも2016店のうち36店を閉めます。対象は赤字が続いているか、黒字化のめどが立たない店です。食品を扱うドラッグストアーやインターネット販売の台頭で事業環境は厳しく、立て直しがうまく進まなければ、さらに閉鎖店舗が増える可能性もあります。 アメリカ百貨店の最大手「メーシーズ」も全店舗の14%にあたる100店舗を閉鎖すると発表しました。昨年の40店舗に続く縮小計画となり、人員削減や資産の切り売りなどで対応していますが、経営環境はさらに厳しさを増しています。無店舗ネット通販の勢力拡大により、有店舗小売業は存在証明が問われています。そして今「有店舗大閉鎖時代」ともいうべき大波が小売業界に押し寄せています。掛川にあるヤマハリゾート「つま恋」も将来像を描くことが困難と判断し42年間続いた営業を終了します。過去には、逆風の時こそ想像を超えた新たな知恵が生まれてきました。そのためには、再び消費者の支持率を高めるための方策と姿勢が今まで以上に必須条件となります。どう生き残るのか勝負の時を迎えています。