深蒸し茶

2015年4月 茶況_No.309

平成27年4月16日

茶園では雨続きで一休みしていた管理作業を再開しました。このところ毎日雨の日ばかりで仕事が段取りした通りに進みませんので気持ちばかりが焦りますが、遅れている仕事を順次進めながら新茶の準備をします。雨の日は工場の清掃、機械の整備を進めながら、新茶手順の確認もします。雨が上がった今日(16日)は、茶園を巡回して芽の伸び具合を確認していますが、ぐずついた天候が多いために日照不足の影響が若干心配されます。鹿児島県では今月10日より新茶取引がスタートしました。3月末から4月初旬にかけての多雨と急激な気温上昇により、芽伸びが一気に進み、初取引の数量は過去最多の135トン、前年比6.5倍の上場があったようです。

相場は総じて弱もちあいで推移しているようです。静岡はこれから始まりますが、例年静岡も九州と同じような状況で進みますので、コワ葉化しないように、充分な注意が必要です。掛川茶市場の新茶初取引は4月21日(大安)に決まりました。静岡茶市場・島田・菊川・森も21日(火)が初取引日と決まりました。今年は県内一斉のスタートとなりますので荷口も膨らみ、品質にも上下格差が出ますので、選択買いの傾向が一層強まると予想されます。

産地問屋は新茶取引を間近に控え、消費地との情報交換に努めています。その情報を元に、消費動向にあった仕入計画を立てます。、また、各地区の生育調査を実施して、各地区の開始時期と盛期の確認をします。工場の清掃や機械点検を済ませ、受入倉庫の整理を進めながら新茶受入れの準備を進めます。今年はどんな展開になるのか、期待に胸を膨らませながら、品質重視、安定生産を願っています。農水省は農水産物や食品の産地名を国がブランドとして保護する「地理的表示保護制度」をスタートさせます。登録されれば、他の地域の類似品が同じ名前を名乗ることができなくなります。登録には品質や認知度・伝統といった基準を満たす必要があり、掛川茶商組合では、その勉強会を始めました。

消費地では新茶の販売計画・販売戦略を練りながら「新茶セール」の再検討を進めています。消費者の節約志向は、ますます強まり、生活防衛意識の厳しさが、ひしひしと伝わってきます。食品スーパーや通信販売との競争激化に苦しむ中、地域のニーズに合った店作りができるかが勝負の分かれ目になるとの思いから、地域に支持されるお店を目指して懸命に努力を続けます。新茶の予約状況は昨年より若干鈍いようですが、これからラストスパートをかけます。

 

生産者の皆様へ

  • 当社の仕入は掛川茶市場初取引日 4月21日(大安)より当社拝見場にて朝5時より行います
  • 機械整備時の油臭・異臭、工場清掃時の異物混入には細心の注意をお願いします。
  • ミル芽でも光合成が少なく色乗りの悪い物は仕入いたしません。急激なコワ葉化が懸念されますので、雨日も予定に入れて、摘採計画を立ててください。

 

 

ソーシャルビジネス

 ビジネスの手法を活用しながら、社会や地域の課題を解決する「ソーシャルビジネス」が注目を集めています。ソーシャルビジネスというと、NPOなどの非営利セクターなどの事業が注目されがちですが、近年は企業によるソーシャルビジネスへの挑戦にも関心が高まっています。東日本大震災から4年が経過した被災地でも、多くのソーシャルビジネスが立ち上がり復興に向けて活動を展開しています。日本興亜は震災被害地のNPOに出張扱いで社員を10人派遣して、宮城県で2ヵ月間看護師のボランティア組織を手伝いました。三菱UFJは鳥獣被害対策に取り組む岐阜県のNPO3団体に社員50人を派遣しました。NTTデータやパナソニックなどは海外の新興国に社員を派遣しています。社会問題の解決を目指すNPOなどの団体に社員を派遣したり、助言をすることによって関わる企業が増えているのはなぜでしょうか。社会問題解決を図ることを目的としていますが、社員育成の場にもなるとの期待もあります。しかし、一番の狙いは、解決の糸口が次の事業のヒントになる、もう少し言えば、次の会社の利益になると考えているからです。介護・雇用・環境保護・まちづくり・貧困・エネルギー問題などの社会問題をビジネスの手法を活用して解決していく。無償の奉仕によるボランティアとは異なり、事業として利益を上げながら問題に取り組む。コストや売上を意識することで事業の効率性や持続性を追求する。ソーシャルビジネスの例として、震災被害者の支援や路上生活者への支援、海外途上国の生産品を買い生産者の生活改善を促す活動などです。ヤマト運輸は、宅急便のインフラを活用して地域で高齢者を見守る「まごころ宅急便」と呼ばれる新事業を立ち上げました。セールスドライバーが配達時に高齢者の孤独死に遭遇したことをきっかけに、商品を届ける際に、そこで聞き取った見守り情報シートを社協に送り、変調があれば社協が対応するサービスです。ヤマト運輸がこの事業を、社会的責任や社会貢献に止めず、収益事業として全社戦略の中で展開していることは見逃せません。

ソーシャルビジネスは、社会問題とされている領域に新しい事業を興し、課題解決に挑むビジネスです。収益が見込めず、政府の施策でも効果的な解決ができていないからこそ取り残されている領域です。多くの企業が新規事業を探し、懸命に努力しているのに、取り残されているのは、採算が合わないと判断されたか、挑戦しても事業の維持が困難になったからです。理由としては、公共的なテーマを民間ビジネスが自主的にやることに理解が得られづらいことや、収益を上げることを前面に出しづらいこともあります。これからは、ソーシャルビジネスの理念に共感する消費者の増加が見込まれることなどから、今後の市場規模は34兆円超になると予測されています。社会をより良くしたいという企業の「ソーシャルビジネス」への挑戦は、次の経営のフロンティアだといっても過言ではありません。