深蒸し茶

2014年12月 茶況_No.305

平成26年12月23日

茶草場農法を実施する生産者は茶園に敷く山草の乾燥作業を進めていますが、今年の冬は雨の日が多く刈り取った山草が乾燥しにくいので困るとの声も聞かれます。山草は土壌の乾燥防止、防寒対策、有機肥料になりますので茶園にとっては欠かせない管理作業となります。静岡県が県内350の共同茶工場を対象に将来の経営意考をアンケート調査したところ、266工場から回答がありました。現状維持60%、再編・統合を今後検討する18%、解散を考える15%、規模拡大7%との内容でした。この5年間で組合員数や茶園面積が2割以上減少した工場も2割あることも分かりました。県では「茶の生産量日本一を死守するために、共同茶工場の経営改善を図っていく」との観点から工場数は減っても茶園は荒らさずに一定の生産量を確保する方針を掲げ、再編や解散がスムーズに進むように専門家を派遣する考えです。専門家は今後の戦略の組み方、コスト計算の徹底、迅速な意思決定による高効率化や合理化のメリットなどを指導します。

産地問屋は年末商戦の出荷に忙しく対応していますが、荷動きは平年並より若干鈍いように感じます。例年この時期は過不足を補う産地間の荷動きが見られるのですが、今年は各問屋とも手持在庫の調整に入り、目立った荷動きは見られません。このことが来年の新茶仕入計画に大きく影響しそうです。これから年末の在庫状況を確認して生産者・消費地との情報交換を重ねながら来年の計画を立てます。青年団が横浜市で行ったアンケート調査によりますとリーフ茶の購入単価は500~999円が最多の33%、200~499円が27%、1000~1499円が15%となり、999円未満が

6割を占める結果でした。買う時に重視する情報は ①味 ②価格 ③香り④産地 ⑤安全性の順で、購入先は スーパー26%、専門店13%、いただき物7%の順でした。

消費地では年末商戦の販売・発送に忙しく対応しています。歳暮ギフトの需要は個人・法人ともに厳しい状況です。衆議院選では連立与党が三分の二の勢力を維持しましたが、経済運営には課題が山積し「先行きの見通しは悪化」との短観予測も出ています。現在の景気が悪いと判断する消費者が47%に上り、今後の景気見通しについても約4割が否定的な見方を示すなど景気回復を感じる消費者は少ないようです。増税や円安による物価上昇に賃上げが追いつかず、消費者の節約志向はますます強まりそうです。景況感の悪化を受けて商店街の活性化など構造問題の改善に全力を傾け、各商店は経営転換を迫られています。

今年もたいへんお世話になりました。本年最終の産地情報となります。寒さ厳しき折、お身体ご自愛いただき良いお年をお迎えください。

 

年末年始配送のお知らせ

最終便 12月29日(月) ~ 初荷便1月5日(月)

*大口の発送につきましては12月26日(金)~27日(土)にお願いします。

 

 

分身なくして、会社は成長せず Ⅲ

 「自分で経営を一生懸命にやっていこうと思えば、経営者というのは、これほどしんどいものはない。全責任がかかる。自分で懸命に経営していればいるほど責任を感じる。考えれば考えるほど責任の重圧に耐えきれなくなる。そのくらい重圧を感じて、責任を負っている真面目な経営者の方々は等しく、自分と同じくらいに責任を感じて手伝ってくれて、自分の経営を分担してくれる部下が欲しいと思わずにはいられないはずです。正直、孫悟空の話ではありませんが、自分の毛を何本か抜いてふっとやると自分の「分身」が現れる。冗談ではなく、そのくらい自分と同じ気持ちになって責任を分担してやってくれる人が欲しいと思います」。分身を渇望した稲盛氏は試行錯誤の末、アメーバ経営を考案します。これは組織を細分化し、小グループ(アメーバ)ごとに採算を管理する手法です。自分が属するグループの採算を日々管理するという作業を通じ、稲盛氏は各社員に経営マインドを持たせることに成功しました。経営者と同じくらい強い責任感と高い目線を持ち、経営者の分身のように動き回る社員。経営者なら誰もが欲するであろう、そんな分身のつくり方を編み出したのです。30年前のダイエーの創業者、中内功氏が「売り上げは全てを癒す」と唱えたように、売り上げ至上主義で経営できた時代もありました。しかし、今は技術で勝負してきた町工場にもマーケティングの知識が要る時代です。さらにグローバル化への対応、コンプライアンスの徹底など、30年前にはさほど必要なかった能力が経営者の双肩にのしかかります。これらを一人で担うのは無理、隔世の感があるのです。労働の質的な変化も起きています。知識や技術を売る「ワーク」から創造的な仕事である「プレイ」への変化です。仕事の多くが機械やコンピューターに置き換わりつつあり、創造性や芸術性で勝負するプレーヤー型の社員を活かす新たな組織づくりが求められているのです。

勢いが必要な創業期や業績不振から脱却を試みるときは強いリーダーシップが要ります。しかし、色水が白布に染まるように徐々に、しかし確実に変化している時代は、必要以上の権力行使を控えて、社員の経営マインドを高めたほうがいいのです。ダイエーの中内氏や西武王国を築いた堤氏、労働問題で批判を浴びているワタミの渡邉氏やすき家を展開する小川氏ら、剛腕型リーダーは実績を上げていても退場を迫られました。これからはトップ一人の力で組織を率いるのではなく、個々の社員の力を最大化し、リーダーシップを分散・共有する時代ではないでしょうか。

                 稲盛和夫 転換期を語る より抜粋