深蒸し茶

2013年12月 茶況_No.295

平成25年12月21日

茶園は久しぶりの雨で潤いました。本格的な冬に入り茶農家は敷き草など茶園の防寒・防湿対策などの茶園管理を進めています。指導機関では越冬幼虫が茶樹の根元や葉の裏側に寄生する茶園での防除作業を呼び掛けています。国内農業は生産者の高齢化が進む一方で、TPPなど貿易自由化による価格競争の激化も予想され、経営環境はいっそう厳しくなっています。その中で地域活性化の起爆剤にもなると期待されているのが、生産者が加工や流通まで手掛ける「6次産業化」です。農産物加工品の開発や直売、直営レストランやアグリツーリズム(農業体験)なども含む広い概念です。消費者が何を欲しがっているのかマーケティングが分かる人は成功しています。一つの成功が点から面になるように地域全体に広がり、雇用が生まれ、行政も巻き込んで地域全体がウィンウィンの関係になるように国も地域自治体も応援しています。

産地問屋は年末年始の注文に忙しく対応していますが、荷口が小口化していますので動く数量は以前に比べて少なくなっています12月も1~2割減の厳しい状況が続いています。静岡県内全産業の業況判断指数(DI)は -11で全国最下位と発表されました。全国平均は +2で、その差は13ポイントあります。企業の回復実感に全国と大きな差があります。「実感なき好況感」と言われますが、中小企業の厳しい状況は変わりません。アベノミクスの第三の矢である「成長戦略」がうまくいけば雇用の増加、賃金の上昇、デフレからの脱却といくはずでしたが、恩恵は一部にしか見られません。それどころか市場拡大が見込めるのは新興国であり工場建設も海外が中心となっていますので国内では閉鎖する工場が後を絶ちません。成長エンジンをつくり加速するための議論が早急に必要です。

消費地では年末商戦の追い込みと年賀商品の売り込みに懸命ですが、客数の減少が止まらないといった声も聞かれます。内閣府は11月の景気ウォッチャー調査を景気実感が緩やかに回復しつつあると発表しました。百貨店の年間売上高も消費増税前の高額品の駆け込み需要が増えているために16年振りにプラスに転じたと発表されました。大型スーパーも4ヵ月連続で売上増に転じていますが、一般の小売店にとっては景気回復の実感は乏しいというのが実状です。マクドナルドはコンビニで売り出した100円コーヒーなどの影響で客数・売上高・営業利益ともに前年を大幅に下回りました。セブンイレブンは通信販売のニッセンを買収して、ネット販売と全国一万店以上の実店舗を融合させ売上拡大を図る手に出ました。今までにはなかった売り方です。欲しいもの・買う場所・買い方も大きく変化しています。次の一手を的確に打てるか打てないかで業績に大きな差が出た二例です。

ネット通販やコンビニ購入が当たり前の今、販売員のいる店舗で商品を購入する意味合いや、その価値について改めて考える必要があります。人と人が織りなすコミュニケーションの良さ、お客様の千差万別のニーズに合わせた体温の感じられる接客、流行語にもなった「お・も・て・な・し」の心の大切さです。

 

年末年始便のお知らせ

年内最終発送 12月28日(土)   初荷便 1月4日(土)

 

 

最近の茶業界は経営者も顧客も世代交代して、今までの固定観念にとらわれない、喫茶などを併設した新しい業態の明るいお店が次々と開店しています。そして社会情勢、顧客心理の変化にあわせてお客様の支持を獲得しようと懸命に努力しています。しかし「頑張っているのに数字が上がらない」「経営課題の何から手を付ければよいのか分からなくなった」と言った声をよく耳にします。日本経済が踊り場に入り、企業間競争が激しくなって、勝ち残るために経営者は今、何をすればいいのか、何をすべきなのかを問われているのです。茶業界は今「不安な未来」と「明るい未来」の岐路に立っているような気がします。岐路で明るい未来の方を選択しなければ明日はありません。そのためには4P(商品・価格・売る場所・売れる売り方)を徹底して、接客サービスに努め、とにかく「地域一番店」を築く必要があります。日本で一番高い山は?「富士山」誰でも知っています。二番目は?なかなか出て来ません。日本で一番大きい湖は?「琵琶湖」はすぐに答えられてもやはり二番目は出て来ません。オリンピックで金メダルを取った選手の名前は憶えていても銀メダル、銅メダルの選手の名前は、なかなか思い出せません。さように一番店と二番店以降の差はあります。お茶の贈答品を購入するなら○○園と一番に名前が上がってくるお店にならなければいけません。そのために何をなすべきか‥‥。消費者の行動パターンを分析しますと、販促で知って、売り場にやって来て、商品を探して、接客を受けて帰る流れになります。ならば販売力・売り場力・商品力・接客サービス力を、より高める必要があります。「販売力」地域一番のプロモーション「売り場力」地域一番の買いやすさ、地域一番の売り場面積「商品力」地域一番の品質、地域一番の品揃え「接客・サービス力」地域一番の挨拶、地域一番の個別対応、以上すべてで一番を獲得できれば不動の一番店となれるはずです。百貨店・食品スーパーも競合店となりますので、現実には大手に対してすべてにおいて圧倒的な一番を目指すことは難しいかもしれません。しかし、販促力と接客・サービス力なら大手に負けないでできるはずです。東日本大震災後は世界中で日本人の精神が称賛されました。震災の混乱の中でも互いに配慮し合い、譲り合い、自分よりも他人を助けようとする日本人の心が称賛されたのです。また「絆」を感じる地域の大切さを痛感しました。そして家族を大切にするように変わっています。昔は茶の間で、家族団らんでお茶を飲む風景がありました。家庭には黒電話が1台しかなく、誰からかかってきた電話かは家族みんなが知っている状態でした。今や電話は個人用の携帯電話となり自分の部屋で話をします。もはや家族の風景などなくなってしまったような気がしていましたが、3・11震災後は家族・地域という原点に一気に回帰しました。地域に貢献するという地域密着の姿勢は非常に大切ですし、公益性に重点を置いているお店を多く見受けるようになりました。従来は「それは理想にすぎない」と切り捨てられていましたが、それこそが評価され、支持される時代になって来ているのです。私が気が付く一番店の特徴は①地域に密着している ②お客様目線 ③遠くからでも目立つ ④入口付近で足を止める工夫がされている⑤お勧めの商品が手に取りやすく工夫されている ⑥お客様と会話をしながらの接客が自然とできる。逆のパターンのお店の共通項は ①暗くて清掃が行き届いていない ②人の気配がなく賑わいが感じられない ③商品による賑わい性がなく、陳列が整然とし過ぎている。自分のお店は地域一番の買いやすく、選びやすい売り場力を磨き続けていますか。お店の訴求したいことがしっかりとお客様に伝わっていますか。