深蒸し茶

2013年11月 茶況_No.293

平成25年11月2日

生産農家は茶園をこまめに巡回して、先日の台風の影響や夏の水不足からの樹勢の回復を確認しながら茶園管理を進めています。整枝や土づくりなど来年の一番茶に向けた管理作業が主になります。9月下旬から10月中旬まで続けられた、今年最後の製造となる秋冬番茶は若干の増産でしたが、ドリンク需要に支えられて価格は前年比1割高の相場展開で終了しました。今月7日~10日まで静岡市で開催される「世界お茶まつり」の展示ブースや各フォーラム、製茶機械メーカーが開催する展示会の新製品に関心が集まっています。

産地問屋は仕上・発送作業を進めながら歳末商戦に備えた情報交換を進めています。10月の出荷は前年並みを確保できましたが、問屋間の荷動きはまだ見られません。各地区で品評会出品茶の入札販売会が開催されていますが、600円売クラスの中級茶は想定内の落札率・単価となっていますが、1000円売以上の上級茶につきましては落札率・単価ともに前年を下回る傾向ですので、これからの上級茶の展開が心配されます。急須で淹れる上級茶が売れていない、贈答需要が減少していることが要因のようです。第49回静岡茶品評会の入札販売会が静岡茶市場で開催されました。入札参加社は昨年より10社少ない85社、落札率は5ポイント減の56%、売上金額は15%減の2513万円という結果でした。

 

第49回静岡茶品評会 入札結果

部  門 出品点数 落 札 率 落札単価
鶴印 4000円 86点(83点) 47%(55%) 4583円(4523円)
亀印 2000円 59点(60点) 70%(68%) 2415円(2390円)

( )内は昨年の数字

 

消費地では歳末商戦に備えた準備を進めています。集客力のあるお店の特徴は「安心できる・品揃えが良い・店の顔がある」など、わかりやすい特徴と強いコンセプトが魅力になっているようです。お客様が歳末ギフトに求めるものはなにかのアンケート調査では ①他にない希少性の高いもの ②自分たちの風土を代弁してくれるもの ③みるからに季節のご挨拶にふさわしく季節を感じることができるもの ④パッケージの品格、などの回答が寄せられました。儀礼的な法人ギフトは年々減少していますが、個人ギフトは比較的堅調ですので、年末需要の高まりに期待しています。 食材の偽装(ウナギ・お米・ホテルのメニュー等)で記者会見のニュースが毎日流れています。頭は下げる。社長も辞める。でも故意ではない、偽装ではないと認めない。ニュースを見ていて、その言い訳はいかにも苦しい感じがします。なぜ、このようなことが起こるのでしょうか。安く仕入れて高く売り、より利潤を上げたい経営者。上質のサービスをより安く求める消費者。両者の視線のずれが、後を絶たない食品偽装の悪しき土壌にあるようです。みのもんた氏の一連の報道もそうですが、企業あるいは個人の不祥事に対して社会の目が厳しくなっています。コンプライアンスの徹底が問われています。

 

4P戦略「何を、いくらで、どこで、どのようにして売るのか」

 

4Pとはマーケティングの各戦略の頭文字を取って名付けられたもので、別名マーケティングミックスとも呼ばれています。商品を販売するためには、この4つのPすなわちProduct(商品) ・Price(価格) ・Place(場所)・Promotion(売り方)の4つ戦略を組み合わせて最大の効果を目指します。「商品」はお客様が買いたい商品を販売するという視点が重要です。現代のようにモノが溢れ、ほとんどの市場で成熟期を迎えている状況では、消費者は本当に必要な物や欲しいと感じるものにしか財布のヒモを開いてくれません。そこで商品戦略ではターゲット顧客のニーズを詳細に分析して、本当に欲しいと思わせる商品を開発し続けることが重要なポイントになります。「価格」は4P戦略の中でも非常に重要な要素となります。なぜなら消費者にとっては、購入に対してのハードルになるからです。低い価格設定は消費者にとって購入に対するハードルを低くする効果を発揮しますが、お店にとっては売上だけは上がっても低い収益に苦しむことに繋がりかねません。逆に高い価格は、お店にとっては収益を上げるためには好都合かもしれませんが、顧客にとっては購入に対するハードルが高くなるという事態を招きます。ライバル企業の価格設定など市場環境を十分に考慮に入れながら最適の価格を表示することが重要な鍵を握ることになります。「場所」に関しては「どこで売るのか?」の流通戦略を決定します。いくら素晴らしい商品を手頃な価格で提供しても、最適の市場にその商品がなければ購入されることはありません。若者がターゲットであればコンビニ・ショッピングセンターに、富裕層がターゲットであれば百貨店に、近隣の消費者がターゲットであれば地元商店街に出店するなど、最も接触が図れる流通網を構築する必要があります。そして最後は「売り方」販促企画です。どのようにしてお店と商品を知ってもらうかというプロモーション戦略は重要です。テレビ・新聞・雑誌・インターネットなどの様々なマスメディアをプロモーション戦略で活用することができます。不特定多数の消費者にアピールする場合はマスメディアを有効に活用しますが、費用は膨大にかかります。リピート販売向上に繋げたい場合にはDMなどが有効なプロモ―ション戦略となります。目的に応じて様々なツールを使い分けるとより効果が高まります。以上「何を、いくらで、どこで、どのようにして」という4P戦略を見てきましたが、これらの戦略は単体で機能するものではなく、組み合わせによって効果を発揮します。時代によって4Pは変化していますので常日頃からアンテナを高く張って勉強する必要があります。

お茶も飲まなくなったわけではなく飲み方が変わっています。急須で淹れる変わりにティーバッグを使用したり、ペットボトルのお茶を飲む傾向が強くなっています。最近ではペットボトルもお金が掛るとして、家でつくったお茶を入れたマイボトル派も増えています。茶業界は他の業界に比べて、考え方が保守的で遅れているとやゆされますが、原因は消費現場とのギャップを感じ取れないところにあるのかもしれません。商売の仕方は変化し、新しい業態も登場しています。お客様の来店動機も変化して、多様化しています。他のお店と比較しょうのないオンリーワンのお店になること、相手の期待を上回るものを提供すること。そのことを続けていれば、まわりの人が必ず引き上げてくれます。そのためにも経営の原理原則をしっかりと自店に落とし込んで継続することが大切です。