深蒸し茶

2012年9月 茶況_No.280

平成24年9月11日

茶園では天候を見ながら防除や秋肥などの秋の茶園管理を進めています。特に秋肥は来年の一番茶の幼芽形成に重要な作業となりますので、9月中に天気予報を確認しながら適切に施肥するように心掛けています。今年は「全国お茶まつり静岡大会IN掛川」が11月に掛川市で開催されます。それにともなう茶の品質日本一を競う第66回全国茶品評の審査結果が発表されました。掛川市は「深蒸し煎茶の部」で最高位の一等一席をはじめ上位11位までを独占して「深蒸し掛川茶」の品質の高さを証明しました。上位入賞者が多い市町村に贈られる産地賞も掛川市が8年連続、16回目の栄冠に輝き、地元開催にかけた熱意が実り関係者は安堵しています。掛川茶振興協会の会長も務める松井三郎市長は「日本一の茶産地掛川の座を揺るぎないものとして内外に示すことができた。茶業関係者の努力のたまものと感謝している。」とのメッセージを寄せられました。「おごる平家は久しからず」のことわざもありますが、今回の賞におごることなく、これからも地道な努力が求められます。おいしいお茶を作るには、茶畑の土づくりが一番重要です。こまめに畑を観察して、畑が必要としている土づくりに汗を流すことが基本です。この基本を忘れないように関係者は肝にめいじています。

おごる平家・・・といえばシャープが「世界の亀山モデル」ともてはやされてから、わずか数年で急坂を転げ落ちるように経営危機に陥ってしまいました。2006年には売上高が3兆円を超すなど、業績は飛ぶ鳥を落とす勢いでしたが「一本足打法」と揶揄されるほど液晶に投資を集中しすぎたことが、数年で屋台骨を揺るがす結果になってしまいました。テレビCMで「目の付け所がシャープでしょ」のキャッチコピーをよく目にしました。シャープはどこで、どう間違えたのでしょうか。「魚の目」のように潮流を読む目がなかったのでしょうか。目線が売る側の目線であって、「消費者目線」でなかったことが一番の要因だったと私は思います。

産地問屋は秋需要に向けた販売計画を立てるとともに、9月末から始まる秋冬番茶の生産について生産者と打ち合わせをしています。秋冬番茶はドリンク関連業界が主になりますので、需要があれば製造、需要が見込めなければ製造を中止する工場も出て来ます。需給の計画を立てて対応するようになります。

厚労省より「健康寿命」(介護を受けずに日常生活を送ることができる期間)が発表されました。男女ともにその長さが際立っているのが静岡県と愛知県です。静岡県は緑茶において国内最大の生産量と同時に消費量を誇ります。県では健康な長生きに緑茶が関係しているのか、食材や県民性などを含めてさらに分析を進め、長寿プロジェクトに生かしたいと意気込んでいます。消費地では秋冬商戦に向けて販売戦略を練りながら「秋の売り出し」の準備を進めています。今年は残暑が厳しかったのですが、ここへ来て朝夕はめっきりと涼しくなり秋需要に期待しますが、急須で淹れるお茶の需要低迷が続き苦戦を強いられています。商品説明の丁寧さや親近感などを前面に、茶葉を売るだけでなく「やすらぎ」を提供するためのメッセージの発信を怠りません。そしてお店の信頼性をよりアピールしています。

 

 お 知 ら せ

  1. 東京都優良茶品評会においての当社の出品した「都の華」が一等三席に入賞しました。
  2. 9月27日頃より秋冬番茶の生産が始まります。価格・数量など、当社営業部までお気軽にお問合せください。

 

COOL JAPAN クールジャパン

 

「COOL JAPAN 発掘かっこいいニッポン」はクールな日本の文化を発掘して、その魅力と秘密を探ろうというNHK BS1で放送される人気番組です。今、「COOL JAPAN」というキーワードが世界中で飛び交っています。ファションやアニメ・ゲーム・料理など、私たち日本人が当たり前と思ってきた日本の様々な文化が外国の人たちには格好いいものとして受け入れられ流行しているのです。経済産業省も世界が共感する「クールジャパン」の海外促進を積極的に推し進めています。主にクリエイティブ産業の育成や国内外への発信など「クールジャパン官民有識者会議」の提言に基づいた各種の施策をすすめているのです。海外で人気の高い日本のアニメやマンガ、コスプレやゲーム、ファッション、音楽、映画や書道、武道、茶道といった日本の伝統文化も広く紹介しています。最近では米国で由紀さおりさんの歌う「夜明けのスキャット」が大ヒットしましたし、ヨーロッパではコスプレファッションの「きゃりーぱみゅぱみゅ」が大ブレイクしています。

今年8月に東京ビッグサイトで開催された世界最大規模のイベント「コミックマーケット」には世界中から60万人以上の人たちが集まりました。ユニークなコミック誌の販売とコスプレ(アニメやゲームなどの登場人物のキャラクターに扮する)に高い注目が集まり世界中からマスコミが取材に訪れました。毎年、名古屋で開催される「世界コスプレサミット」にも世界各地から著名なコスプレイヤーが集結します。日本人のコスプレに対するイメージは「オタクがやるもの」に対して、海外のコスプレに対するイメージは「何かになりきってみんなで騒ぐのは最高」というコスプレに対するイメージに大きな違いがあるようです。

同じようなイベントは海外でもさかんに開催されています。イギリスでは「HYPER JAPAN」(ハイパージャパン)が今年で3回目の開催となりました。日本のアニメや音楽のみならず、さまざまな伝統文化や工芸品の展示が行われています。会場では日本料理店が腕を競う「すしアワード」や、日本酒のうまさを競う「酒アワード」の選出も行われます。「JAPAN EXPO」はフランスで開催されるヨーロッパ最大級の日本ポップ・カルチャーフェスティバルです。近隣のヨーロッパ諸国からも多数来場者が訪れ、まさにヨーロッパ最大規模の日本フェスティバルです。

今、世界で日本のアニメ・ゲームや伝統文化・最新カルチャーがCOOL(カッコイイ)とたいへんな人気を集めているのです。海外で人気を得たものを日本へ逆輸入することによって日本文化の良さを再確認することは大切なことですし、海外で人気という大きなインパクトを武器に国内で普及拡大することも可能ではないでしょうか。シリコンバレーをはじめアメリカ西海岸のIT企業では「緑茶ブーム」の気配です。社員食堂の冷蔵庫には伊藤園のペットボトルがぎっしりと並んでいます。以前は「グリーンティー」といっても、どれも砂糖入りで甘い味がしました。特大の容器で炭酸飲料をがぶ飲みする米国人には「砂糖が入っていないと飲んだ気がしない」という理由からです。ところが最近は「自然な味がいい」「健康によい」と口をそろえて言うようになりました。アップルを筆頭にIT企業がひしめく、時代の最先端を走るアメリカ西海岸から「COOL JAPAN」が新たな広がりを見せているのです。私たちの業界も嘆いてばかりはいられません。日本文化の象徴「日本茶」を海外へ、そして海外から日本へのチャンス到来です。