深蒸し茶

2011年12月 茶況_No.273

平成23年12月26日

茶園では敷き草や防寒ネットの設置など、越冬準備のための茶園管理作業が冷い寒風の中進められています。また、茶園に害虫がいないかどうかを確かめたり、越冬ダニの駆除なども欠かせない作業です。時間的に余裕のあるこの時期は、各地区で開催される研修会にも参加して、良質な茶づくりの技術を幅広く勉強します。この頃の適度な雨量により茶園は良好な状態を保ちつつ正月を迎えます。

産地問屋は仕上・発送などの対応に追われています。消費地の需要の傾向や要望を確認しながら正月休みを控えた在庫の確保に努めています。12月は歳暮商戦・仏事需要の苦戦から前年比10%前後の落ち込みになりそうです。

厚生労働省は22日、食品に含まれる放射性セシウムの新たな規制値案を公表しました。現行の暫定規制値を大幅に厳しくするもので、来年4月1日から適用する予定です。新規制値は「一般食品」を1kgあたり100ベクレル。「乳児用食品」は50ベクレルとしました。「飲料水」は同10ベクレルです。お茶は茶葉を湯に入れた飲用の状態で検査しますが、「飲用水」の1kg当たり10ベクレルを適用します。お茶は実際に飲まれる状態での検査になりますので消費の実情にそった新基準となります。県茶商組合の斉藤理事長は「決められた基準を真摯に受け止め、業界がまとまってしっかり守り、消費者の信頼を築きたい」と静岡茶の信頼回復に向けて全力投球しています。

消費地では年末商戦も終盤を迎え、年始需要に移行しています。景気の低迷、買い方の変化、儀礼ギフトの縮小などで歳暮商戦は厳しい状況です。しかし、家庭で日ごろ飲むお茶の販売は善戦の傾向が見られます。このところの冷え込みと節約志向から、家で食事を取る回数が増え、家庭で鍋を囲みながらお茶を飲む機会も多くなって、家族の絆を確かめ合いながら、本当の暖かさを感じる家族の光景に戻っており、業界にとっても嬉しい限りです。

昨日まで「がんばろう東北」と言っていた大型店が50ベクレル以上の食品は売場から撤去しているところもあります。近隣の島田市では東日本大震災のがれき処理問題で受け入れをめぐり意見が対立しています。「助けたい」と「懸念」が交錯して話がまとまることはないでしょう。今回は今までに経験したことのない異例の事態です。他人事と思ったら、事はそこで終わりです。報道では反対意見が目立ちますが、広い了見で臨みたいとの意見も聞かれます。今年もたいへんお世話になりました。本年最後の産地情報となります。お身体、くれぐれもご自愛いただき、良いお年をお迎えください。

 

年末年始配送のお知らせ

最終便 12月29日(木)~初荷便 1月5日(木)

 

請求書販促と感謝状販促

 

これまで日本の経済を引っ張ってきた基幹産業である自動車産業と住宅産業が衰退してきています。自動車産業は円高・関税・生産コストの関係から海外へのシフトが急速に高まっています。住宅の需要は少子化と高齢化によって新しく家を建てる人が減っています。良いように見える産業も部分的に良くなっているだけで、総体的には良くなりません。これから、良いところはさらに良くなり、悪いところはますます悪くなり、真ん中がなくなっていく傾向が強くなりそうです。マーケットはなくなりませんが、中間層がなくなるので、低価格と商品数で勝負するか、顧客満足を追求してお客さまに支持されるお店を目指すのか、どちらかに行くしかありません。やはり小売店は地域のお客さまに熱烈に支持されるお店、地元にしっかりと根付き、地元のお客さまに愛されるお店を目指すしかありません。お客さまには、いろいろな選択肢がある方がいいに決まっています。まずはその選択肢の中に入るお店になり、大型店とは違った販促を取り続けなければ生き残れないでしょう。「500円以上お買い上げのお客さま一人につき卵1パック1円」、「3000円以上お買い上げにつきポイント5倍進呈」、「レシート合計1万円につきしょうゆ1ℓプレゼント」など「これだけ買ってくれたら1円で売ってもいいよ、あるいは差し上げる」と言っているのと同じです。こういう販促は「請求書販促」と言うそうで大型店にまかせておけば結構。「いつもありがとうございます。今日はお礼の気持ちを込めて、卵1パック38円で販売しています」というのは「感謝状販促」です。商売はお客さまの財布が相手ではなく、お客さまの心が相手なのですから、自分の都合や損得を抜きに、ただひたすらにお客さまに喜んでもらうこと、満足してもらうことに努めることが地域に根差した小売店の道のはずです。効率重視の大型店には出来ないこと、地域密着の小売店だからこそできることがあるはずです。お客さまに「高い付加価値を提供しよう」とは、よく言われる言葉ですが、付加価値とは何んでしょうか。漠然としたイメージで付加価値をとらえるのではなく、お客さまにとってうれしいことはどんなことか、常に考えることにより顧客満足は生まれるはずです。「感謝する心」、「感動や喜べる心」、「誠実な対応」、「世間話や情報交換を大切にする」・・・心構えや心得などの良心が大切になっています。

買い手は店の普段の姿を本当によく見ています。商品そのものの質が良くて値段が良心的であることは基本です。それプラスアルファの部分で心に響くポイントがあるかどうかが「好きな店」と「普通の店」の分かれ道になります。その心に響くポイントがどんなものかは人それぞれですが、共通しているのは、そこにお客さまに楽しんでもらおう、喜んでもらおうという売る側の意気込みが存在しているかどうかではないでしょうか。どこで買うのか、誰から買うのか、どのように買うのか、をたくさんの選択肢の中から決める時代。売り手から買い手へどのように商品を手渡すのがベストなのかを研究する余地は、まだまだあると思います。店の大小ではなく、派手なことではなく、地域に密着した毎日の小さな積み重ねが「この店ってすごい」、「この店は信頼できる」という高い付加価値を買い手の心の中につくることができるはずです。

国内の空洞化や少子化を考えると、これから景気が良くなることはあり得ません、しかし、マーッケットは大きくなりませんが、なくなることもありません。その小さなマーッケットで勝つためには、自分のお店の強みに集中して、地域のお客さまに支持されるお店になることが求められています。