深蒸し茶

2011年12月 茶況_No.272

平成23年12月6日

茶園では敷き草や防寒ネットなど、本格的な冷え込みを前に茶園の防寒対策を進めています。各茶工場では今季の反省会を開き、来季に向けた課題などを話し合っていますが、厳しい状況が続く話題ばかりです。お茶専業から、野菜や果物を取り入れた複合農業を目指す農家の方も出始めました。原発事故による損害賠償説明会が各地域で開催されています。風評被害による賠償の範囲や請求書の書き方など、事故によって発生した費用について項目ごとに説明します。賠償項目には検査、返品、廃棄、取引量減少に伴う減収などを挙げています。東京電力の補償内容が明らかになってきたことで安堵はしましたが、参加者からは「来年の新茶前に賠償金を受け取りたい」、「安全性を説明するためのチラシや人件費はどうなるのか」、「賠償額の算定方法に納得いかない」などの要望や質問が出ています。

産地問屋は年末年始用商品の仕上と発送作業を進めています。師走に入り荷動きは活発化していますが、売れ行きは例年より20%前後悪く、資金繰りなどで厳しい年末となりそうです。先日、静岡茶市場で開催された静岡茶品評会の入札会は買い手の慎重姿勢から落札率33%(18%減)、売上金額1,542万円(48%減)と前年実績を大幅に下回る結果となりました。

静岡茶品評会 入札販売会

部門 落札率 落札単価
鶴印 4,500円 18%(46%) 4,812円(4,882円)
亀印 2,000円 52%(60%) 2,305円(2,362円)

( )内は昨年の数字

県茶業青年団が今年の夏に20代から30代を対象に実施したアンケート調査によりますと「家庭で急須で入れた日本茶を飲んでいますか」との質問には女性の54%、男性の34%が「飲んでます、お茶が好き、食事に合う」との回答でした。「暑い時、何を飲んでいますか」の問いにはお茶が最も多く、水・スポーツドリンクが続いています。「茶を購入する場所は」の問いにはスーパー(41%)、専門店(40%)、デパート・産直・その他(19%)という結果でした。「リーフ茶に求めることは」の問いには味がトップで価格・香り・産地と続き「静岡茶に対するイメージ」は有名であり香りが良い、深蒸しが好き、ブランド力がある、といった意見がありました。

消費地では歳末商戦が本格化しています。東日本大震災後、初の年末年始となることもあり、家庭で食卓を囲む機会が増えると予測されます。鍋をファミリーで囲んで温かいお茶を飲み「やすらぎ」を感じてもらえれば商売冥利に尽きますとの声も聞かれます。ただ厳しい逆風は続いており、売り上げはなかなかもどりません。埼玉県では100年以上も続いた老舗の二社が販売不振により閉店しました。売上が半分以下に落ち込み、存続は無理と判断したようです。気の毒としか言いようがありません。

掛川市立総合病院医監の鮫島庸一先生は「放射線障害からあなたを守る緑茶パワー」と題した講演の中で「一日6杯お茶運動」を提唱しました。日本の10年後、20年後を考えたとき、お茶しかないと思っていると話されました。また県立大薬学部の山田浩教授らの研究グループによる「緑茶うがいによるインフルエンザ予防」をテーマにした臨床試験がスタートしました。高校生756人を対象としています。インフルエンザ予防は世界的な課題となっており、茶カテキンがインフルエンザ感染予防に有効であることが証明されれば、簡単に利用できる緑茶でうがいを広げる活動につなげようと関係者は期待しています。