深蒸し茶

2010年2月 茶況_No.256

平成22年2月3日

昨日の降雨で茶園は潤い良好な状態を保っています。新茶に向けて生産農家は施肥などの管理作業の計画を作成しています。また地区ごとに開催される研修会に参加して「T-GAP」や衛生管理、新しい品種茶やチューブを活用した灌水と施肥のことなどを勉強します。お茶だけでは経営が難しくなっていますのでレタスや白ネギなどとの複合経営についても勉強します。2009年の県内茶栽面積は前年比500ha減の19,200haと長引く供給過剰による販売不振に生産現場は疲弊しているように感じられます。昨年は記録的な茶価低迷が生産現場を直撃して、リーフ需要の消費不振が鮮明となった年でした。経営悪化に伴い、今後も消費者の節約志向は強まるとみられ、業界を挙げての需要喚起が急務の状況です。関係者からは「今年も厳しい年になりそう」との声も聞かれます。

産地問屋は消費地からの注文に対応しながら、仕上・発送作業に努めています。各問屋の在庫状況は一番茶は適正在庫のようですが、二番茶の在庫が多く苦慮しています。会社での需要がインスタント使用の給茶機、ペットボトルの自動販売機に変わっていますので二番茶需要が極端に減っているからです。なかにはお茶の持つ機能性を飲料以外の用途につなげようとする動きもあります。「まさに氷の上を歩いているかのような状況。しばらくは春を待つしかない」と県の組合長は組合員に話します。そして、「春を待つあいだ営業力、新製品開発力、茶の製造技術の三点を磨いてほしい」と説きます。今後も消費者の節約志向は強まるとみられ、新たな商品と新たな需要を創出していくことが組合としての今後の大きな課題となってきました。

消費地ではパーソナルギフトと家庭用茶の販売に努め、販路拡大に向けた販売計画を練っています。消費環境の好転の兆しが見えない状況ですが店頭における販売減は下げ止まったとの話も多くの店から聞かれるようになりました。外出を控えて家に居る機会が多くなったり、家族揃って鍋物をつつくなど、お茶を飲む機会が増えますので不景気がお茶にとってはチャンスととらえるお店もあるようです。またメタボやインフルエンザに効果があることから機能性の面でも、あらためてお茶が見直されていますのでフォローの風も吹き始めています。総務省がまとめた家計調査によりますと昨年1~11月の一世帯当たりの緑茶購入量は前年同期比5.5%減の829g、購入金額4,209円と2年連続で年間1kgを割り込むことが確実となりました。急須で淹れて飲む緑茶消費は近年、市場規模の縮小傾向が続いています。デフレ傾向、節約志向、生活防衛意識がますます強まっていることから、各お店は生き残るために魅力ある商品や売場つくりに真剣に取り組んでいます。そして、わくわく感が感じられるようなお店づくりに努めています。

 

一から見直し

日本航空(JAL)の経営破綻とトヨタの大規模リコールによる北米での製造・販売中止や西武有楽町店の閉鎖などから景気の二番底懸念の声や危機感をあらわにする声が目立ち始めています。そして、百貨店の不採算店の閉鎖が加速しています。09年5月に三越池袋店や鹿児島店、8月にはそごう心斎橋本店が閉店。今年に入って伊勢丹吉祥寺店と西武有楽町店、阪急四条河原町店が閉店を決めました。消費不況が深刻さを増す中、高額商品を扱う百貨店の業績が悪化しており、不採算店舗を閉鎖して経営の改善につなげるのが狙いです。商圏の分散と消費者の節約志向から売上の減少が止まらないことも原因ですが、百貨店自体がブランド価値に安住して小売りの王者であるとあぐらをかいている時に、消費者が何を求めているかを見失ったことも大きな要因です。そして今回、消費環境の好転の兆しが見えない中、将来の可能性を見い出すことができずに営業終了の決断に至りました。

内閣府は日本経済の需要と供給の差を示す「需給ギャップ」は依然として大幅な需要不足と発表しました。推定される需要不足額は35兆円程度で、かつてないギャップの大きさで解消には3~4年かかると指摘しています。ギャップを埋めるには景気が好転して需要が増えるか、企業がリストラなどで供給を減らす必要があります。従業員の削減が続けば雇用情勢はさらに悪化して消費低迷による「デフレスパイラル」が長期化する可能性もあります。消耗戦のごとき安売り合戦が続き、デフレスパイラルと少子高齢化が進む国内では内需の伸びも期待できないことから中国進出に活路を求めるスーパーや外食産業などの小売企業の動きが目立ってきました。中国やインドなど新興国は経済が好調で生産や輸出が増加していますが、国内に頼る内需型産業は厳しい価格競争にさらされて厳しい状況に追い込まれているからです。そこで多くの企業では内需の期待できない国内から海外、特にアジアの新興国を成長市場と位置づけて活路を求める動きが目立ちます。

イトーヨーカ堂は年内に中国で14店舗出店します。ユニーは約10店の目標を掲げました。ユニクロも中国・韓国やシンガポールで出店を加速しています。ローソンは上海だけで300店舗を展開していてインドなどへの出店も視野に入れます。ファミリーマートは海外店舗数が国内店舗数を上回り、積極出店を続けていますが、まだ黒字化は達成できていないようです。楽天は「海外進出のさらなるスピードアップを推し進め、海外に軸足をシフトしていく」と外需の取り組みを宣言しました。独フォルクスワーゲンと資本提携したスズキの鈴木修社長は「世界の自動車産業の中で生き残るため、提携先との協力により直面している課題にグループ一丸となって取り組む」と決意を語りました。

過去の成功体験が通用しなくなった今、政治も経済も一から見直して会社全体の意識と行動を変えようとする動きが急務です。そして、新しい商品・新しい売り方による新市場開拓が不可欠のようです。