深蒸し茶

2014年9月 茶況_No.302

平成26年9月6日

茶園では生産農家の方たちが、朝夕の涼しい時間帯を選び防除や灌水作業などの管理作業を進めています。静岡県内は雨が少なく、茶園の乾燥状態が解消されていませんので、適度な灌水などの干ばつ対策も重要な作業のひとつです。指導機関では暑い時期に発生しやすいハダニなど、病虫害の発生に警戒するよう呼び掛けています。静岡県内の茶生産は一番茶・二番茶・秋冬番茶とおおむね3回ありますが、今年の最終となる9月末から始まる秋冬番茶の生産計画を練っている工場もあります。重油の高騰から相場によっては採算割れになる可能性もあり、生産量は少なくなる見通しです。農林水産省より2014年一番荒茶生産量が発表されました。静岡46%、鹿児島31%、三重11%と一番茶生産量は静岡がトップを維持していますが、年間生産量は鹿児島が静岡に肉迫しています。現在、静岡茶市場(静岡市葵区)で県内産荒茶の約1割が取引されていますが、今年の取引状況が発表されました。一番茶取引量11%増・単価12%安、二番茶取引量11%減・単価18%安と単価は平成に入り最安値となっています。10年前と比較しますと一番茶取引数量34%減・単価29%安、二番茶取引数量45%減・単価52%安、と数量・単価ともに二番茶の下落率が大きくなっています。二番茶の使い道として、10年前は会社や工場の社員向けに茶専門店が会社へ納品する業務用の比率が高かったのですが、それが茶ガラの出ない給茶器やペットボトルの自動販売機に変わることにより需要が極端に減りました。またペットボトル緑茶は価格競争にさらされ、原料を二番茶から、より安価な秋冬番茶への移行が響いています。この状態が続きますと茶生産農家の減少は避けられない状況です。

産地問屋は仕上発送業務を進めていますが、残暑が続きますので出荷は思うに任せない状況が続いています。茶商組合では花火大会や納涼祭に出向き「夏の冷茶」を積極的に売り込んでいます。掛川では青年団が冷茶一杯150円で販売していますが、若い人や子供達に人気で行列ができるほどです。県内の製茶問屋有志でつくる「緑新会」では例会を開き業界展望について意見交換をしました。参加者からは「取引数量は減っていないが取扱単価が安くなり売上減になっている」、「専門店が減り量販店の存在感が高まっている」、「数年たてばなんとかなると危機感がない茶商が多いことに危機感を感じる」など、茶商の意識改革を促す指摘や身の引き締まる意見が多くありました。

消費地では冷茶の呈茶をしながら販促活動を根気よく続けています。天候不順による突然の大雨や残暑の影響により、前年比10%前後減の状況ですが、「水出し煎茶」は地道な努力もあり年々増加しています。盆明けからは秋季・冬季向け商品の販促に動き始めています。都内で日本茶販売店に「お茶カフェ」を併設する新規店が出てきています。健康志向やプチ贅沢を楽しむ女性、日本文化に関心を寄せる外国人観光客の増加などが背景にあるとみられます。「和食の世界遺産登録で日本茶への関心が高まっている。東京五輪も見据え、新しい切り口で、より一層のアピールが重要になってくる。」と一部の商品に英語や中国語のPOP広告を付けて対応しているお店もあります。

 

E S

 

CS(Customer Satisfaction)とは顧客満足度のことですが、最近よく耳にするES(Employee S atisfaction)とは・・・。商売の要諦は「消費者ニーズ」をつかみ、「顧客満足」を得ることとよく言われます。「消費者ニーズに応える」という言葉は耳にタコが出来るほど聞いています。消費者は何を求めているのか。何を欲しているのか。そのニーズに応え、ニーズを満たすことが基本となります。そのニーズは価格であり品質であり利便性であり、とかなり多様化しています。同じ物なら安い方がいいに決まっています。一方でブランド品など自分の欲求を満たす物は高価格でも納得して買います。品質は美味しいは当たりまえ、プラス清潔・鮮度・安全・安心といったニーズがあります。利便性については営業時間の延長、無料配送、返品システムなど過剰サービスではないかと思われるまでのサービス合戦が繰り広げられています。お店はこの消費者のニーズに応えられる商品開発や販売方法やサービスを実行していく必要があるのです。

昔、物が不足している時代は作れば売れる時代でした。しかし今は、個人の価値観や嗜好にこたえる商品やサービスでなければ売れません。やっかいなことは時代の流行や潮流は加速度的にめまぐるしく変化していますので、一時的に時代の潮流や嗜好にマッチして売れても、時間の経過とともにすぐにマッチしなくなり売れなくなることです。消費行動は、消費者がニーズに合った商品を購入し、購入した商品が、自らのニーズを満たし満足できるものであったかの評価を行うことです。その結果、その商品やお店に対するイメージができあがり、満足すれば再購入にも口コミにもつながります。お客様に満足していただく商品・接客は従業員の会社に対する満足度と大きく関係しています。従業員が自分の会社で働くことに満足していなければお客様に満足できる接客は提供できないからです。従業員満足度(ES)が高い会社ほど、顧客満足度(CS)が高いという結果が出ています。働く人達が自慢できて、誇りを持てる会社であり仕事でなければ従業員の満足は得られません。従業員の会社に対する満足度を高めることは会社の業績を向上させる事に繋がっているのです。ES(従業員満足)がなければCS(顧客満足)はないのです。ESがあって、はじめてCSが徹底できるのです。こう考えますと問題は社員ではなくて全て経営者と言わざるを得ません。

少子高齢化が進む中、将来の日本の労働人口は着実に減少していきます。建設・介護・外食など一部の業種では人手不足が顕在化し始めました。また働く人、一人ひとりの価値観が多様化し、従来の仕事中心の生き方から、仕事と私生活のバランスがとれた人生のあり方へと、その意識も変化してきています。こうした働く人達の意識の変化に対応できなければ、会社を構成する「人・モノ・カネ」のうち最大の資産である優秀な人の獲得および定着は現在よりも確実に困難になっていきます。

業績を向上させるためには、CS(顧客満足)が最も重要な要因であることは広く知られていますが、ES(従業員満足)を心掛けている企業はまだ少数です。

CSを高めるためには従業員の満足度が高くなければならないという認識のもと、ES(従業員満足)を重要な経営指標のひとつと位置付ける経営者が増えています。