深蒸し茶

2014年11月 茶況_No.304

平成26年11月10日

茶園では来年の一番茶に向けた茶園管理が進められていますが、このところの適度な雨に恵まれて園相は良好です。茶草場農法を実践している生産者は茶園に敷く草を山の急斜面で刈り取り、枯れるまで寝かしてから茶園に敷く準備をしています。また協同工場では来年の生産に向けて肥料設計を検討しています。

鶴亀品評会で親しまれる第50回静岡茶品評会の入札販売会が静岡茶市場で開催されました。入札参加商社は昨年より5社少ない80社、落札率32%(昨年56%)、落札金額は37%減の1575万円(昨年2513万円)、落札k数4670k(昨年7715k)の結果でした。現在おかれている業界のたいへん厳しい状況が反映された結果に、先行きを懸念する声も聞かれました。

第50回静岡茶品評会 入札結果

部  門 出品点数 落 札 率 落札単価
鶴印 4,000円 89(86)点 30%(47%) 4,541円(4,583円)
亀印 2,000円 65(59)点 35%(70%) 2,480円(2,415円)

( )内は昨年の数字

産地問屋は年末の繁忙期に向けて仕上加工と袋詰作業を進めています。気温低下に伴って注文数が増えてきているとの声は耳にしますが、問屋間の荷動きには至っていません。今後の注文拡大に期待が高まります。

デパートでは、すでに歳暮商戦がスタートしていますが、消費地小売店では「新茶商戦」に次ぐ「歳末商戦」に向けて準備に忙しい毎日が続きます。「あのお店のあの商品をあの人から買いたい」と選ばれるお店になれるように一年間努力してきました。その集大成の成績が歳末商戦の結果として出ますので、期待と不安が入り混じった重圧も感じます。

先日、名古屋の「アピタ港店」が「ポートウォーク港店」として新装オープンしました。インショップとして出店している山中園さんも3日間の開店セールを開催しましたので、そのお手伝いに行ってきました。初日はレジに行列ができる盛況で、3日間で

3百万円弱の売上があったようにうかがいました。ユニーの店長さんもインショップ断トツの売上に驚いていました。私が一番驚いたのは社長・店長さんと地域顧客さんとの深い繋がりです。私が本店に着いてから港店まで行くのに、お手伝いいただいている山中園のお客様に自家用車で送り迎えをしていただきました。お店に見えるお客様は一様に「社長・店長さんいる・・・」「オープンおめでとう」「待っていたわ」等声を掛けてお買物をされます。顧客が知人・友人の域からファンの域に達した「あなたから買いたい」と顧客に思わせる魅力を持った店主により、驚異的な実積が達成されるのだと感じました。モノが無かった時代の開店と、今の時代の開店は意味合いがハッキリと異なります。私自身大変良い勉強になりました。

 

強烈な思いこそが全ての物事の基 Ⅱ

 新興国の台頭で日本経済は急速に競争力を失い、社会に閉塞感が広がっています。戦後日本は驚異的な経済成長を遂げ、多くの世界企業が生まれました。「メードイン・ジャパン」は高品質の代名詞となりましたが、今や「経済の日本」の看板はくすみ、少子高齢化と相まって社会は活気を失ったままです。バブル崩壊後の約四半世紀、日本は停滞したままです。しかし食えないほどではありませんから国民に危機感はありません。やろうと思えば何でもできるのに安逸をむさぼる状態が続いてきましたので気力が出ません。日本の経営者にガッツが足りないのは信念がないからです。岩をも通す強い信念がなければ経営者は務まりません。経営者には使命があることをよく自覚し、会社を立派にするためには強烈な信念が欠かせないのだという考え方に日本の経営者が変わっていかなければいけません。強烈な思いこそが全ての物事の基なんです。世のため人のためというような大義に基づいて純粋に自分を奮い立たせていく思いを持っていれば、個々人の人生も、会社経営も、社会も、全部変わっていくんです。それを誰もきちんと言わないんですよね。強い信念を抱いた精神状態で仕事をすれば必ずフォローの風が吹くのです。私(稲盛)が経営者として影響を受けたのは本田宗一郎さんと松下幸之助さんです。学問も金もないハングリーな状況の中で大志を抱き、血の出るような努力で大成功されました。ものづくりに打ち込む本田さんの姿を見て私も自分の技術を世界に問うてみたいと思うようになりました。松下さんには経営哲学を勉強させていただきました。事業を発展させていくためにはハングリーであるか、大きな志を持っているかのどちらかが必要だということを学びました。社会が豊かになり、教育水準が上がり、エリート志向が進み、その結果、社会はバイタリティーを失いました。欧米から働き過ぎだ、余暇を楽しめと言われ、働くことイコール悪とみなす風潮が広がりました。人々は楽して利益を得ることばかりを考えるようになりました。しかし、そうしてお金を手にしても心は満たされません。働くことは単に報酬を得る手段ではないからです。人は働くことを通じて欲望に打ち勝ち心が高められていく、そして成長出来るんです。仏教で「精進」とは一生懸命働くことをいいます。立派な修行です。心の奥底から湧き上がる深い喜びは働くことでしか味わえないのです。私の本が中国でベストセラーになっているのも拝金主義の間違いに人々が気づき始めたからだと思います。人間とは面白いもので、どんな困難に遭遇しようとも、信念さえあれば、自分を励ましくじけずにやっていくことが出来ます。大事なことは「その信念があるか」ということなのです。

日本史をみると、おおむね40年ごとに盛衰の山谷を繰返して来ました。直前の山は1985年のプラザ合意。これまでのパターンでいけば2025年に谷が来ます。2025年の日本は財政破綻か国際紛争のいずれかに見舞われるのではないかと心配しています。日本の財政悪化は限界まで来ています。外交面では安倍さんの言動で中国や韓国と関係が悪化しています。そして法案が右傾向も懸念されています。2025年まであと10年。危機が現実にならないよう問題解決を急がなければいけません。今のままではだめなんだ、変えるんだ、良くするんだという強烈な思いが基になるのではないでしょうか。

                                 続く

 

稲盛和夫 転換期を語る より抜粋