深蒸し茶

2014年8月 茶況_No.301

平成26年8月6日

茶園では朝夕の涼しい時間帯を使って管理作業が進められています。クワシロカイガラムシなどの害虫防除や茶畑への灌水などが主な作業です。地域によっては大雨の降る地域もありますが、この辺りは雨不足、水不足です。、今週末に台風の影響による大雨注意報が出ています。相場低迷の影響から三番茶を生産する工場はなく、9月下旬から始まる秋冬番茶も売れ行きを心配して、注文生産に近い方向で生産されると予想されます。今年の販売状況から、生産者や問屋からは、来季の生産や相場への影響を懸念する声も聞かれます。JAの取引担当者は「これほど販売に苦労したしたシーズンはなかった」と厳しかった状況を振り返ります。

産地問屋は仕上と出荷作業を続けていますが、目立った荷動きはありません。そして、秋口からの企画、販売計画を練ります。一番茶は減産にも関わらず、注文を受けた必要量のみを仕入れる買い手が多く、取引に盛り上がりを欠く展開でした。二番茶も一番茶の低迷を引きずる形で、平均単価は15%安と下落相場に歯止めが掛からず、採算割れから製造を打ち切る工場が相次ぎました。茶専門店を主な顧客にする問屋は注文が減少して仕入を控える傾向です。そのために大手問屋やドリンク関連業者の相場形成力が高まり、取引価格は低下しやすい状況になっています。大手やドリンク関連業者が相場をつくり、買いきれなかった商品は行き場を失い値を崩す傾向が顕著です。相場が低迷する根本的な要因は供給過多になり需給バランスが崩れたことに尽きますが、鹿児島も含めた全国的な生産調整が必要との声も聞かれ始めています。消費拡大を毎年繰り返し指摘されていること自体が問題解決の難しさを物語っています。

消費地では、店頭で冷たいお茶を呈茶して「水出し煎茶」や冷茶の作り方を説明して販売努力を続けています。「甘くなくサッパリしていておいしい」と、お客様の反応も上々です。外出時にはマイボトルを持って行くようにお奨めして、おいしさと、安さと、夏バテ対策をアドバイスします。家計調査による6月の一世帯緑茶支出金額は327円、茶系飲料の支出金額は551円とリーフ茶がたいへん厳しい状況にあることが分かります。政府の出した経済白書では、日本経済は緩やかな回復が続き、デフレ脱却へ着実に進んでいると発表されましたが、茶業界にその兆しは見られません。駆け込み需要の反動減なのか、暑さによる消費の下押しなのか、生活習慣の変化なのかリーフ茶販売は苦戦が続きます。少子高齢化で労働人口が減少し、建設・流通・介護・外食などで人手不足が顕在化して日本経済の構造が予想以上の速さで変化していると総括しています。我々業界も生活習慣の変化、人口減少と高齢化への対応が大きな課題となっています。考え考え考えて行動に移すことが要諦です。

お 知 ら せ

夏期休暇(8/12(火)~8/17(日))を利用しまして、より清潔に、より効率よく製造できるように包装工場の生産ラインを改善します。休暇前の発注につきまして、お早目の御手配をいただけますと助かります。ご迷惑をお掛けしますがご容赦ください。

 

オムニチャネル戦略

 

「オムニチャネル」という言葉が流通業界を賑わせています。イオンやセブン&アイなどの大手小売りが取り組みを強化していくと大々的に打ち出したことで、一躍今年の注目キーワードに浮上しました。実店舗でもインターネットでも分け隔てなく買い物ができる世界を目指すこの言葉はマーケティング界に何をもたらしていくのでしょうか。

オムニとはラテン語で「すべて」を意味する言葉ですから、オムニチャネルは「全ての販路」という意味です。2000年に入ってから店舗や通販など複数のチャネルで顧客と接する「マルチチャネル」が主流となりました。しかし、サービスの内容はチャネル毎に異なっており個別の対応を取っていました。これに対して「オムニチャネル」は顧客との接点になっている全てのチャネルを融合させることで顧客により良いサービスを提供できる点が異なります。この背景にはインターネットやスマートフォンの利用が進み、EC(電子商取引)の利用が進んだことがあげられます。特に最近はスマートフォンの普及と共に店頭で現物を確認した上で価格の安いECサイトで購入する「ショールーミング」の広がり、インターネットの影響が小売業にとって見逃せないものとなってきたからです。この対策として単にECサイトに力を入れるマルチチャネルのアプローチではなく、複数のチャネルを持つ強みを活かすオムニチャネルに取り組み始めた訳です。ショッピングを便利にするためにネットと実店舗の垣根を低くして顧客はいつでもどこでも自分の都合に合った最適なチャネルで購入できるようにしたのです。

セブン&アイはコンビニ事業が好調で過去最高益を達成し、買い物の主な舞台がスーパーからコンビニに移りつつある現状を示唆し話題となりました。そのセブンイレブンが今、グループを挙げて取り組む販売方法が「オムニチャネル戦略」です。売り場にない商品を店頭に置かれたタブレット端末を使って注文を受け、次回の来店時に店頭で渡したり、自宅まで届けたりする、実店舗とネットを融合させたオムニチャネル販売です。伊藤雅俊名誉会長は「これがだめだったら辞める」と漏らすほど第二の成長に向けて挑む決意です。「昭和初期に母親が商店を切り盛りしていたとき全然売れなくてご用聞きを始めた」店で待っているだけでは売り上げを確保できない状況で伊藤氏は子供ながらに商売の厳しさを目にしてご用聞きや配達を手伝ったそうです。「今の小売業はインターネット通販に売り上げを浸食されているという点で昭和初期の恐慌時代と同様に危機にある」とも言います。顧客のニーズを聞き取ると同時に顧客に近づいていく「ご用聞き」はオムニチャネルの原点ともいえます。ネット時代だからこそ接客が大切なのです。選ばれる店になるためにご用聞きに立ち返る。例えばセブンイレブンの店舗から食事を宅配する「セブンミール」。タブレット端末を持ってセブン&アイの多様なネット通販の商品をお薦めする。IT化は進めてもオムニ戦略の中核となる手法は非常に泥臭いのが現実です。顧客に自ら近づいていくかってのアナログ商売そのままのようです。

今までは「接客や売り場をきちんとしないとお客様にきてもらえない」と商品を整理整頓して実店舗での販売に力をそそいできました。ネット販売が進むにつれネットで頼んだ商品をセブンで受け取れるようにしました、次は「オムニチャネル戦略」としてさらなる挑戦が始まります。価格より価値が重要になる時代、どこまで対応できるかは未知数です。