深蒸し茶

2009年12月 茶況_No.255

平成21年12月28日

朝晩の冷え込みが厳しくなって、本格的な冬が到来した茶園は敷き草などの防寒・寒害対策を徹底するような管理作業を進めています。また、季節風が吹きつける場所や幼木園では防風対策も重要な作業となります。よいお茶はよい茶園からが良質茶づくりの鉄則ですが、茶農家が茶園管理技術を競う茶園共進会の審査が実施され、その審査結果が発表されました。栽培している品種の特性に応じた栽培方法をとっているか、作業しやすい茶園になっているか、根の張り具合や土づくりの取り組み方も審査対象になります。従来は茶園管理に絞って判定しましたが、今年からは茶品評会の成績や茶の木の植え替え実績も加味して総合的に評価する方式に改めました。書類審査と現地審査を経て優秀茶農家が表彰されます。JA経済連の発表によりますと、2009年の県内産荒茶1k当たり平均単価は、一番茶が前年比4%安の2,410円。二番茶は20%安の712円と生産概況をまとめました。平成に入って最安値となった原因として、早場所の一部低温障害、急須で淹れるお茶の消費低迷、ペットボトル緑茶も減少傾向を見せ始めていることにより供給が多い形となり、需給バランスがくずれたのではと分析しています。茶問屋の仕入姿勢は慎重なうえにさらに厳しくなっていますので、買い求める茶工場を絞る傾向はさらに強まり、問屋の要望に沿った茶をつくる工場と沿いきれない工場とでは価格差も広がっています。

産地問屋は年末年始需要に忙しく対応しています。何とか前年並み確保と思うのですが、昔のようなあわただしい暮れらしい活気にはほど遠く、厳しい年の瀬となっています。1~10月までの緑茶輸出量は、前年比16%増の1,606トンと前年の年間輸出量1,700トンを上回るのは確実な情勢です。輸出先は米国・シンガポール・カナダ・ドイツ・台湾の順になっています。しかし、輸出平均単価は243円安の1,754円となっています。

消費地では贈答用の歳暮商戦も終了して、年賀用の贈答需要に期待しています。総務省がまとめた家計調査によりますと、1~10月の1世帯当たりの緑茶購入量は5%(40グラム)減の746グラムと、過去最低を更新した昨年をさらに下回る公算が強まったと発表されました。景気悪化や流通構造の多様化に伴うリーフ茶の消費低迷が主因です。全般に荷動きは低調で、業界関係者からは緑茶の健康効果に期待する声が聞かれます。冬のボーナスの大幅減少や雇用不安から、街角の景況感を尋ねる「景気ウォッチャー調査」も11、12月は心理面の冷え込みもあって急速に悪化しています。そして日本経済は円高とデフレのダブルパンチで二番底に陥る懸念が高まっています。

消費地の各お店では、店に足を向けてもらう努力を常に心がけています。そして「専門店らしさ」をどう貫くのか、正念場になっています。

よいお年をお迎えください。

 

        年始初荷のお知らせ  1月6日(水)発送

 

訳 あ り

 百貨店協会が発表した10月の全国百貨店売上高は前年比10.5%減となり、20ヶ月連続で前年実績を下回りました。また11月の全国のスーパー売上高は前年比8%減と発表され、2009年の売上高は既在店ベースで13年連続で前年を下回ることが確実となりました。冬物衣料の不振に加え、低価格のプライベートブランド普及もあって、一人当たりの購入金額が減ったことが原因のようです。

景況感を調査する「景気ウォッチャー調査」によりますと、持ち直しつつあった景況に一服感が出ており、先行きを懸念する声が再び高まっていると分析しています。景気ウォッチャー調査は商店主や中小企業経営者、百貨店の売り場担当者や飲食店店長、人材派遣業の社員など、景気動向を現場で観察できる人を対象に「街角の景況感」をアンケートによって尋ねる調査です。3ヶ月前と比較した景気の現状判断を示す指数は前月比7ポイント低い34ポイント。3ヶ月先の景気判断を示す指数は前月比8.3ポイント低い34.5ポイントで、以前より現在の方が悪くなっている、これから先もっと悪くなる可能性があると結論づけています。「低価格のメニューに注文が集まる」(外食店長)、「クリスマスケーキやおせち料理など年末商品の売り上げが悪い」(百貨店)、「公共工事の見直しによる受注先細りで先行きに不安」(建設業者)など回答者のコメントからは消費者の買い控えや低価格志向、冬のボーナス減による消費不振、鳩山政権の経済政策への不安感が根強いことがうかがえます。また、調査期間中に中東ドバイの金融危機で株安や円高が進んだ影響も景況感の悪化につながった可能性があると指摘しています。

そんな中、ネット通販や百貨店の歳暮売り場で好成績をあげている商品があります。折れたカニの脚、カステラの切れ端、割れたせんべい、耳入りのチーズケーキスティックバー、工場で折れてしまった数の子、切れた明太子などの訳あり商品です。「生活応援・ご自宅使用限定」とうたったある百貨店の売り場では売り切れが続出しました。通常より2割安い等の「お買い得感」が自宅用に、親しい人への贈答用に買い求められたようです。各百貨店とも扱う商品はほぼ共通。昔は百貨店の「格」で勝負していましたが、今はどこで買っても同じなら安いほうに流れてしまう傾向が顕著です。

埼玉県にある従業員15人の小さな菓子メーカーが生んだ商品がマスコミに取り上げられて脚光を浴びました。「訳あり! せんべいバリバリ」です。「訳」とは、新米の季節だが材料は古米を使っているというおことわり。60%オフの1,800円で販売したところ、製造が追いつかない状況が続いたそうです。その後、割れや規格外のせんべいを「訳あり」の名前で販売しています。「訳をきちっと話して安く売ればお客さんは理解して共感してくれる」とのことです。正規品と「訳あり」はどう違うのか。不ぞろいや割れの具合をわかりやすく説明することによって、誠実で正直な品質保証のシグナルを出す信頼につながっているようです。訳あり商品も正直に「訳」を開示することで信頼を勝ち得ていますが、「訳」が乱発されますと正直商法のブランドは次第に落ちていきます。また正規品を高く感じるようになりかねません。その意味ではまさに「両刃の剣」でもあり、一番大事なものを失ってしまう可能性も含んでいます。将来的な評価は今はわからないと困惑する声も聞かれます。