深蒸し茶

2008年7月 茶況_No.241

平成20年7月10日

二茶の摘採を終えた茶園では、一服する間もなく病害虫の防除などの茶園管理作業が進められています。今年は降雨が多く、病害虫の多発が予想されることから防除を徹底する必要があり、指導機関ではウンカやスリップスなどの適期防除を呼びかけています。二番茶後に更新した茶園でも、再生芽に被害を生じると来年度の生産に影響を及ぼすために細心の注意が必要です。一茶に続いて二茶の相場も前年に比べて弱かったとの声もあり、このままでは生産をやめる農家が続出しそうと、生産意欲の減退に危機感を募らせています。極端な話、農産物の中で茶価だけが低迷している状況は、お茶そのものの価値観を問われていることになります。生産者、産地問屋、消費地小売店ともに力を合わせてお茶の価値観を高めることに努め、現在の状況を何とか打破しなければなりません。

産地問屋は仕入れした二番茶の整理と仕上・発送作業を進めています。自動給茶機・飲料自動販売機の普及で、リーフ茶の会社需要は極端に減っていますので、二番茶需要はドリンク関連業者と量販店納入業者に限られてきています。したがって、以前のように全業者が争って仕入れするというような活況は感じられません。

不二家が山崎製パンの支援を受けて再建に乗り出してから1年余が過ぎましたが、再生への道のりはたいへん厳しいようです。ギフトや誕生日などハレの日需要が戻らないことが不振の大きな理由のようです。社会から断罪された船場吉兆も一連の不祥事が原因で顧客の再指示を得られずに廃業しました。しかし、同じ不祥事を起こしながら「白い恋人」と「赤福」はギフト需要で人気を取り戻しています。不二家、船場吉兆、石屋製菓、赤福と再建の成否を分けたものは何だったのでしょうか。突き詰めれば「商品力」の差ではないでしょうか。不祥事の内容とその後の対応の良し悪しも関係しますが、一番には「商品力」だと考えます。お客様、世間から支持され、満足されている商品なのかどうかが明暗を分けているのではないでしょうか。各問屋も小売店も、支持され満足され続ける商品開発に日々懸命に努力しています。

消費地では「中元商戦」のピークを迎え、店頭でも接客・接茶と地方発送作業に忙しく対応しています。原油や穀物の価格が急上昇して、その影響が日用品や食料品の価格上昇に波及しているために、「消費心理が冷え込み、財布の紐はかたい」と節約志向の高まりを指摘する声も聞かれます。消費者は車を控え、近回りへの用事は自転車に切り換え、余分な出費や贅沢を改めて自己防衛をしながら安価と感じたもの、価値観のあるものを選択する傾向にあります。そこで、お店側も「家庭で作る冷茶やマイボトルの方がエコでお得ですよ」と、店頭での接茶やPOPで繰り返し訴求するなどの対応をしています。

  • グリーンティークーラー、ガラス急須(HARIO製)、マイボトル(サーモス製)が人気です。一度当社にお問い合わせください。

( TEL:0537-23-3252、メール:nakane@kakegawa-cha.co.jp )

 

価 格 帯

 

今季の二茶生産は天候に振り回される場面が多く、ハッキリした盛期がないまま終盤を迎え、なんとなく終わったような感じがします。6/20~6/23まで連続4日間にわたって雨が降り続いたために、4日間の仕入がなかったことは過去に記憶がないほど変則的な仕入れとなりました。その後も断続的に続いた降雨の影響や取引価格が一定水準に達しない工場は製造を中止するところも散見されました。雨のために生産と仕入が6/5~7/3まで約1ヶ月に及ぶ非常に長い二番茶期でしたので、後半は気が抜けたというのが正直な感想です。まとまった雨が降った6/20以降に生産量が膨らんだことから、生産量は前年並かやや少ない程度になりそうです。当社の仕入価格帯は下記のとおりです。

 

二番茶価格帯(前年対比 仕入k数93% 仕入金額92%)

仕 入 比 率 前年対比(平成19年を100とした場合)
400円売      1%

300円売     44%

250円売     24%

200円売     29%

150円売      2%

49%

87%

117%

93%

40%

100%

 

二番茶取引は一番茶下値を引きずり例年より安い価格で始まったものの、1,000円/kまで相場が下がった後は下げ幅が小刻みになり、800円台に入るとさらに日々の下げ幅は小さくなり、800円を切ると持ち合い相場が続きました。700円台になるとドリンク関連業者が買い支える展開が続き、雨後に格高傾向となるもドリンク関連業者の動きは積極的で、予約注文で売約済みになっているケースも多く見られました。燃料費・肥料等の生産コストの高騰が茶農家の経営を圧迫し、農業に見切りをつける若い人なども出始め危機的な状況にあります。

1970年代の石油ショックにより原油価格が暴騰したときには大企業は利益を吐き出して雇用を守り、政府は石油価格の上昇によって被害を受けた中小企業や農業に対して保護政策を実施しました。ところが、現在は経済がグローバル化して外国の投資機関が大企業の大株主になり、目先の収益向上、高配当を要求するような時代です。終身雇用の慣行が崩れたので不況になると従業員は将来が不安になり、消費を抑える。個人消費が弱いので景気は浮揚力を失う。まったくの悪循環です。景気の減速で銀行の貸し出し姿勢も一段と厳しくなってきました。また、貸し倒れを懸念する銀行が融資先の選別を強めているために、中小企業の資金繰りは悪化し、倒産や廃業が増加傾向にあります。